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外傷性脳損傷(TBI)とは?

外傷性脳損傷(TBI) / 抑うつ

公開日:2026.07.13更新日:2026.08.26

外傷性脳損傷(TBI)とは?

外傷性脳損傷とは、頭に外から衝撃が加わったことにより脳の組織に損傷が生じることをいい、世界的に40代未満の慢性障害の主な原因となっています。

外傷性脳損傷は下記のような併存症を生じる可能性があり、社会生活に大きな影響を与えます。

  • 外傷後記憶喪失
  • 行動や認知の変化

脳卒中とは?

脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることにより脳が障害を受ける病気です。脳の血管が詰まる病気を脳梗塞、脳の血管が破れる病気を脳出血・くも膜下出血といいます。脳卒中は高齢になるほど患者さんの数が増えることが報告されています。

脳卒中は下記のような症状を生じることがあります。

  • 無気力
  • 感情反応の障害
  • 抑うつ、不安

急性期の外傷性脳損傷で見られる精神・行動の障害

外傷性脳損傷の急性期にみられる症状のひとつとして“興奮”があげられます。興奮は、意識障害の期間の間の混乱状態であり下記のような特徴があります。

  • 不安
  • 衝動性
  • 攻撃性
  • 無秩序な思考や脱抑制
  • 攻撃性

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急性期の外傷性脳損傷の精神・行動の障害への薬物療法

興奮や攻撃性はせん妄や混乱状態の特徴的な症状でもあり、急性期の入院患者さんの3人に1人でみられると報告されているものの、現時点で治療薬として高いエビデンスで推奨されているものはありません。

①β阻害薬

効果が期待できる薬物療法としてはβ遮断薬があり、心拍数や血圧を下げる効果がある薬剤です。プロプラノロールという薬剤は、研究において興奮の強さの低下と身体的拘束の使用において効果が実証されていますが、有益性は乏しいとされています。

②ドパミンアゴニスト

ドパミンアゴニストのひとつであるアマンタジンは、亜急性期後の時期に投与することで興奮や攻撃性を改善するとされています。

③抗てんかん薬

興奮と攻撃性に関与するグルタミン酸やガンマアミノ酪酸(GABA)に作用します。カルバマゼピンと言う薬剤は興奮の減少が報告されており、バルプロ酸は攻撃的な行動や破壊的な行動の減少が報告されています。てんかんを伴う外傷性脳損傷の場合は広く認められていますが、興奮に対する使用の推奨度は低いといえます。

④抗精神病薬

外傷性脳損傷から7日以内に用いられることが多く、使用頻度が高い薬剤ですが、有効性の評価は定まっておらずせん妄症状による興奮以外への使用は推奨されていません。ハロペリドール等の第一世代抗精神病薬と呼ばれる薬剤には副作用が多く、認知の回復にも影響を及ぼすため、非定型抗精神病薬の使用が望ましいとされています。

⑤メチルフェニデート

メチルフェニデートは日本ではナルコレプシー(過眠症)の適応のみとなっていますが、認知効果を介して興奮と攻撃性に作用する可能性がありますが、報告は少なく、興奮を誘発することもあることから推奨度は低いといえます。

⑥その他

漢方薬である抑肝散や、鎮静で用いられるプロポフォールやデクスメデトミジンの有効性も示されています。ベンゾジアゼピンは鎮静の迅速な効果を得るために使用されることはありますが、興奮に対するマイナスの効果を引き起こすリスクや依存性の問題もあるため推奨されていません。

急性期以降の外傷性脳損傷で見られる精神・行動の障害と薬物療法

①認知・行動機能障害

外傷性脳損傷の後にはさまざまな認知や行動機能の障害がみられる可能性があります。中等度から重度の外傷性脳損傷の患者さんの65%が認知機能に関する長期的な問題を抱えており、日常生活や社会機能まで影響を及ぼしています。

薬物療法としてはいくつか報告があり、アマンタジンは損傷後4~16週間の投与で4週間の治療期間で機能回復が大幅に改善されることが報告されています。メチルフェニデートは認知の改善や情報処理速度の改善に有効な効果が得られていますが、使用する場合は活動亢進や攻撃性、不整脈などの副作用に注意が必要です。

記憶障害についてはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が用いられることがあり、ドネペジルという薬剤については記憶と持続的注意への有効性が示されています。

②抑うつ

外傷性脳損傷の後は抑うつがよくみられ、1年以内に33%の患者さんにうつ病がみられたという報告があります。抗うつ薬が有効であり、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を第一選択としてSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の使用も推奨されていますが、三環系抗うつ薬は推奨されていません。

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脳卒中後に伴う精神・行動の障害と薬物療法

①脳卒中後うつ病(PSD)

脳卒中後うつ病の5年以内の有病率は約25%と、もっとも一般的な神経精神医学的な合併症であるといえますが、リハビリテーションや機能回復、生活の質、生存率に大きな影響を及ぼします。

脳卒中後うつ病に対しては抗うつ薬による薬物療法が有効であることが報告されており、SSRIと三環系抗うつ薬の両方が良く売るの改善に有効であるとされています。SSRIを使用する際に出血のリスクが高まることに注意が必要で、特に経口抗凝固薬(血液をサラサラにする効果のある内服薬)を内服している患者さんや抗血小板薬(血小板の働きを抑えて血液が固まりにくくする薬)を使用している患者さんでリスクが高くなります。

②アパシー

アパシーとは、行動・認知・情動の減退のことをいい、感情・情動・興味・関心が欠如した無気力・無関心な状態をいいます。脳卒中後のアパシーはより機能改善が遅延することが報告されており、アパシーの患者さんはうつ病を発症しやすいことも報告されています。

アパシーの薬物療法は未確立ですが、ネフィラセタムという薬剤を用いた研究では脳卒中後うつ病に伴うアパシーを改善したという結果が得らています。うつ病との類似点が多いことからSSRIが処方されることもありますが、抑うつ症状をともなわないアパシーには効果的でなく、逆にアパシーを誘発し悪化させる可能性があります。

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③情動調節障害(病的泣き笑い・情動不安定障害)

脳卒中後の情動調節障害は急性期で20%と高頻度でみられ、感情的な行動の混乱がみられることは稀ではありません。下記の2つの情動調節障害に分類されます。

  • 病的泣き笑い➡本来なら泣いたり笑ったりするほどではない刺激でも感情がコントロールできなくなり無意識に泣いたり笑ったりしてしまう。
  • 情動失禁➡感情の調節がうまくいかず、泣いたり笑ったり起こったりといった感情が過度に表現されてしまう。

症状による困惑から社会生活が困難になったり、社会的引きこもりの状態になることもあります。治療としては抗うつ薬が用いられることが多く、SSRIでは抗うつ効果よりも早く低用量で効果が得られるとされています。

おわりに

外傷性脳損傷も脳卒中も、有病率が高く慢性の障害を残すため、その後の生活に大きな影響を与えます。外傷性脳損傷や脳卒中後にみられる精神症状については、薬剤治療においては実際にはまだエビデンスが確立されていないことも多くあります。しかしながら、症状に伴う生活の支障は大きく、早期の診断や医療ケア介入が重要となるといえます。

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