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抗うつ薬における切り替え(switching)の意義と技法
抑うつ / お薬 / うつ病
公開日:2026.08.20更新日:2026.08.20
抗うつ薬の追加や変更時について
うつ病をはじめとした気分障害の治療には抗うつ薬が用いられることがあります。抗うつ薬にも種類があり、薬の効果が見られないときや副作用が強く出てしまったとき、または抗うつ薬以外の薬との飲み合わせの問題が生じたときなどに別の抗うつ薬が処方される場合があります。
薬については専門的な知識を持った医師や薬剤師がきちんと管理していますが、それでも「いきなり薬を変えてもいいのか」「薬をやめることでデメリットはないのか」と心配になります方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は抗うつ薬における薬の切り替えの意義と技法について紹介しています。

抗うつ薬を切り替えることのメリットとデメリット
抗うつ薬を切り替えることで私たちにどのようなメリットがあるのでしょうか。また、切り替える際にデメリットは生じないのでしょうか。
まずメリットとしては、症状改善の可能性が上がります。アメリカで行われた研究によると、最初に処方された抗うつ薬で症状がほとんどなくなるまで回復した患者は全体の36.8であるとしています(注1)。抗うつ薬の効果が感じられないからと言って治療をあきらめるのではなく、薬の切り替えをはじめとした他の治療を継続していくことで、最終的に2か月間で67%の患者が日常生活に復帰することができています。
このように医師の指示のもと、自分に合った抗うつ薬へ切り替えていくことで、うつ病と上手に付き合いながら日常生活を送ることができます。
反対にデメリットとしては薬の切り替えに時間がかかる場合や、次の抗うつ薬の反応を確認するまでに時間がかかるということが挙げられます。
治療に時間がかかれば、うつ病に悩まされる時期が長くなってしまうため苦しい思いをするかもしれません。また、私たち患者のためとはいえ、なかなか薬を処方してくれない医療機関に対して不信感をもってしまう可能性もあります。
そんなメリットとデメリットがある切り替えですが、どのタイミングで、またどんな方法で行えば一番効果的なのでしょうか。切り替えの方法についてはいくつかの方法があるので、以降は切り替えの時期と方法について解説していきます。

切り替えの時期と方法
実は抗うつ薬の切り替えにあたり、「薬を使用してからどれくらい反応を待つべきなのか」「いつ効果の判定を行うのか」といった待機時間について明確な基準は定められていません。患者の個々の状態やうつ病の重症度によって待機時間が異なるためです。
しかし様々な研究や各国のガイドラインで推奨されているのは4~6週間、ないし8週間観察した上で治療効果を評価し、期待した結果にならなければ抗うつ薬の切り替えを検討するのが望ましいとされています。
そしてその切り替えにはいくつか方法があります。今回は代表的な方法について3つ紹介していきます。
休止期間を設ける方法
1つ目は「休止期間を設ける」方法です。現在服用している抗うつ薬を徐々に減らしていき、その後薬を全く服用しない期間を挟んで新たな抗うつ薬を服用していきます。休止期間の長さは最初に服用していた薬にもよりますが、長いものだと1週間程度必要なものもあります。
この方法は最も安全とされていますが、抗うつ薬を服用しない期間が生じることによってうつ症状が悪化する可能性があること、抗うつ薬を減らしたことにより吐き気や筋肉痛といった離脱症状が出る場合があることに注意する必要があります。

「漸減・漸増法」
2つ目は「漸減・漸増法」です。これは服薬している薬を少しずつ減らしていくと同時に新しい薬を服薬し始め、徐々に量を増やしていく方法です。この方法であれば離脱症状を最小限に抑えることができるため、薬の切り替え法として推奨しているガイドラインもあります。
しかし、2つの薬を同時に飲むことになるため、それぞれの薬が相互作用し、副作用が強く出る場合もあります。また、どのくらいの期間で薬を減らしていけばよいのか、増やしていけばよいのかという検証が十分にされていないため、切り替えが上手くいかず、結果的に2つの薬を飲み続けることになってしまうという事例も報告されています。
「直接切り替え」
3つ目は「直接切り替え」です。服薬している薬を中止し、新しい薬をすぐに飲み始める方法です。この方法では薬を飲まない期間をなくし症状の悪化を防ぐだけでなく、治療期間を短縮することができます。
しかし、薬によっては適応が難しく、いきなり別の薬に変えることで体に負荷がかかるため、切り替え方法として採用されにくいものもあります。また病状から考慮して、積極的に「直接切り替え」を取らない場合もあります。

薬を切り替える際の留意点
今まで服用していた薬の効果が得られず、医師から薬の切り替えを提案された際には「今までの治療が無駄だったのではないか」「もしかしたら自分のうつ病は治らないのではないか」と不安になることもあるではないでしょうか。
しかし先に説明した通り、最初に服用した薬でうつ病が改善する人は全体の4割もいません。半数以上は別の薬や方法を通して治療している場合もあるのです。
治療中に不安になることもありますが、「治療を受ける前と受けた後でどんな変化があったのか」「より効果的な治療にするために自分出来ることはなにか」を医師や薬剤師と一緒に考え、薬の切り替えの方法や時期、メリットデメリットについてよく説明を受けたうえで、前向きな姿勢で治療に取り組むことが、うつ病改善において重要なのです。

脚注
(注1)Rush AJ, Trivedi MH, Wisniewski SR et al : Acute and longer-term outcomes in depressed outpatients requiring one or several treatment steps: a STAR * D report. Am J Psychiatry 163(11): 1905―1917, 2006
参考文献
抗うつ薬における切り替え(switching)の意義と技法.臨床精神薬理



