名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院が閾値下うつ病について解説

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閾値下うつ病|近年のうつについて

閾値下うつ病 / 抑うつ / うつ病

公開日:2025.12.20更新日:2026.08.21

抑うつ障害との境界状態とは

コロナ禍により人々のライフスタイルや意識に大きな変化が生じたことで、不適応や感染に対する恐怖から抑うつや不安などの精神症状の発現が大幅に増加し、“コロナうつ”という言葉を聞くこともありました。多くの人々がコロナ禍において抑うつ障害との境界(グレーゾーン)と呼ばれる状態にあったといえます。

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閾値下うつ病とは?

境界やグレーゾーンの抑うつに対しては、“軽症うつ病”、“小うつ病”、“未満うつ”等の様々な用語が使われてきました。その中で最も広く知られているのは“閾値下うつ病”です。

“閾値下うつ病”は、抑うつ障害におけるグレーゾーンを表す概念として知られています。閾値下うつ病は定義としては一定したものはないものの、抑うつ障害の診断基準は満たしていないものの臨床的に意味のある抑うつ症状があり、その人の仕事や生活に支障をきたしており将来的により重篤な抑うつ障害に移行する可能性のある状態をいいます。

閾値下うつ病の特徴は?

閾値下うつ病の有病率は11%程度とされており、大うつ病性障害(いわゆる“うつ病”)の有病率が約7%であるのに比べると、閾値下うつ病の有病率は大きく上回っていることがわかります。

閾値下うつ病は男性よりも女性に有意に多く、これはうつ病と同様ですが、10代半ばから後半にかけてピークを迎えるという点では、20代でピークを迎えるうつ病と比べるとやや早いものです。

また、閾値下うつ症状のある大学生を対象とした研究では、約6%が1年以内にうつ病を発症したとされており、放置されればより重篤な抑うつ障害に発展する可能性がある“うつ病前駆状態”であるといえます。

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閾値下うつ病による問題とは?

閾値下うつ病の症状は、仕事の欠勤や休職のように目に見える問題はみられないものの、健康問題によって業務の効率が落ちるというような問題を生じることがあります。

従業員が何らかの健康問題により仕事を欠勤したり休職する状態をアブセンティーイズムといい、うつや頭痛、PMS(月経前症候群)等により心身の調子が良くないまま無理をして出勤して仕事を行っている状態を“プレゼンティーイズム”と呼びます。

2017年の厚生労働省の調査では、健康関連総コストに占めるアブセンティーイズムの割合は4.4%であったのに対して、プレゼンティーイズムの割合は77.9%を占めています。閾値下うつ病はプレゼンティーイズムの問題を生じる可能性があり、特にコロナ禍においてアブセンティーズムがもたらした損害は大きなものであったと予想できます。

閾値下うつ病は仕事への影響だけでなく生活機能も大きく障害します。過去の研究では、閾値下うつ病は生活の質(QOL)の低下や心理的幸福感の低下、死亡リスクに関連していることが示されています。これらの関連の程度はうつ病と同等であるとする研究もあります。

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閾値下うつ病の治療法について

閾値下うつ病の治療については、薬物療法の効果が乏しいことが知られており、診断基準を満たさないといってもその治療は簡単ではありません。

英国国立医療技術評価機構のガイドラインでは、閾値下うつ病を含む軽症うつ病治療の第一選択として11の治療法をあげています。その中のいくつかを詳しくみていきましょう。

①ガイド付きセルフヘルプ

ガイド付きセルフヘルプは、患者さんが自助学習資料を使用して専門家の指導を受けながら症状への対処を学んでいく治療法です。認知行動療法等の理論に基づいた本や資料が使用され、定期的に専門家が面接を行い、日々の取り組みに対してアドバイスをする形で行われることが多くあります。

ガイド付きセルフヘルプのメリットは、その利便性です。専門家が定期的な面接を行うものの、基本的には自助学習で治療が進んでいくため、施設や治療者の制限や不足による影響を受けにくく、医療資源の少ない環境でも効果が期待できます。

閾値下うつ病の患者さんを対象とした研究では6回のセルフプログラムを実施したところ、その後1年のうつ病発症が抑制されることが明らかになっており、日本でも漫画形式の資料を用いたオンラインプログラムが開発さ、抑うつ症状に対する効果があることが示されています。

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②認知行動療法(CBT)

閾値下うつ病に対する認知行動療法プログラムは通常8回程度の定期的なセッションで構成され、下記のような治療技法を含みます。

  • 心理教育
  • 認知再構成法
  • 問題解決法
  • アサーショントレーニング

閾値下うつ病に対する個人認知行動療法は他の非薬物療法に比べて有効性が高いことが示されており、十分なエビデンスがある治療法として位置づけられています。

③行動活性化

行動活性化はうつ病に対する行動的技法をいいます。行動理論においては、これまで行っていた適応的な行動をしても望ましい結果が得られない環境においてうつ病が発症するとされています。そのような環境では元来の適応的な行動が減少し、不快な結果を避けるための回避行動が増加した結果、行動のレパートリーが減少し望ましい結果が得られる機会も減ることになります。

行動活性化では、この悪循環を断ち切るために回避行動を減らし対処行動をとることで抑うつ気分を軽減させることを目的としています。

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④選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

患者さん本人が希望しない限り第一選択治療として日常的に提供しないことが明記されており、薬物療法はあくまで補助的な役割であり、閾値下うつ病に対して薬物療法は積極的に推奨されていないということがわかります。中等度から重度のうつ病に対しては抗うつ薬と個人認知行動療法の併用を強く推奨しており、また閾値下うつ病治療の第一選択として他の薬物療法が含まれていない点において、対照的であるといえます。

閾値下うつ病の治療における問題

前述のとおり、閾値下うつ病の治療に対しては非薬物療法が主体となります。特に有効性が認められているのは認知行動療法ですが、日本の精神科医療機関における認知行動療法の実施率は7%以下であり、認知行動療法による介入は容易ではありません。

この現状に対して、近年インターネット認知行動療法(iCBT)が広がりを見せています。アプリを用いて患者さんが単独で進める完全なセルフヘルプ形式のものから、web会議システムを用いて専門家との対話形式で行う遠隔認知行動療法まで、その形式はさまざまです。

日本ではまだ少数ではあるものの、日常的な不安や抑うつを対象としたセルフヘルプツールやアプリが利用できます。

しかしながら、閾値下うつ病だと思っていても、うつ病に移行していたりなど、生活への支障が進行していることも少なくありません。そのような時には、薬物療法などによる治療介入がとても重要になってきますので、自己判断は禁物です。

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おわりに

閾値下うつ病に対する早期介入は、生活機能の改善と抑うつ障害への発展の予防という面で重要といえます。デジタル機器を用いた治療法は有効であり、患者さん単独で簡単にアクセスできる点で身近なツールとなり、その利用については徐々に広がりつつあります。