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妊娠中の向精神薬の影響と治療意義について
妊娠と精神疾患 / 抑うつ / お薬 / うつ病
公開日:2026.08.26更新日:2026.08.26
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妊娠中の向精神薬の影響と治療意義について
妊婦さんや授乳中のお母さんにとって服薬は症状への不安だけでなく赤ちゃんへの影響に対する不安にもつながり、妊娠や授乳の中断につながる可能性も考えられる大きな問題です。
「薬を飲みながら妊娠できるのか」「薬を飲んでいる間は妊娠しないようにしないといけないのか」「薬を飲み続けないといけないので妊娠はあきらめないといけないのか」、そういった不安や心配を抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は妊娠中の向精神薬の服薬による影響について、その概観をみていきます。

向精神薬と抗精神病薬の違いとは?
「こうせいしんやく」と聞くと「抗精神病薬」と「向精神薬」の2つのものを思い浮かべる人がいるのではないでしょうか。同じ読み方であるため混同している人もいるかもしれませんが、それぞれは別のものです。
「向精神病薬」は中枢神経系に作用する薬剤の総称をいい、抗うつ薬や抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬、睡眠薬、ものによっては鎮痛剤も含まれます。
一方で「抗精神病薬」はメジャートランキライザーとも呼ばれ、主に統合失調症や双極性障害に対して使用される薬を指し、精神疾患によっておこる症状を抑える薬のことをいいます。「抗精神病薬」は「向精神病薬」の中のひとつのカテゴリーです。
妊婦さんと精神疾患の薬物療法について
近年では産科ガイドラインにより「エジンバラ産後うつ質問票」が広く認知されただけでなく妊婦健診でも使用が推進されるようになり、今まで診断されていなかった精神疾患を有する妊婦さんが発見される可能性も少なくありません。そのため、今後はさらに精神疾患を合併する妊婦さんの産前・産後のサポートや管理が重要になると考えられます。
精神疾患を合併する妊婦さんの中では、妊娠中に精神症状の悪化が多くみられます。妊娠をきっかけとして精神疾患に対するそれまで使用していた薬の減量や中断により悪化するというケースが多くあります。双極性障害の妊婦さんに関する研究では、薬による治療を継続した場合の再発率は40%以下であったのに対して、薬を中断した場合の再発率は85%以上であったという報告があります。
また、うつ病を合併する妊婦さんにおいては、妊娠中も薬物療法を継続した場合の再発率は30%以下であったのに対して、妊娠前に薬物療法を中断した場合の再発率は68%であったと報告されています。
こういった報告をみると、妊婦さんの精神疾患の悪化を防止するためには妊娠中も薬物療法を継続する必要があると考えられます。妊娠によって薬物療法を中断したケースでは、精神疾患適応で早産となるケースや断乳、薬物離脱症候群等の割合も高くなっており、妊娠をきっかけに薬物療法を中断することは周産期における状態の悪化を招く可能性があるとも考えられます。

妊婦さんの薬の使用に関する情報はどこで得られる?
市販の薬でも「妊娠中や妊娠の可能性がある方は医師と相談の上ご使用ください」というような注意書きがあるように、妊娠中の薬剤の使用については慎重におこなうことが広く知られており、妊娠中の薬剤の使用は胎児の奇形や障害保有の可能性につながることを懸念している妊婦さんも多いのではないでしょうか。
医薬品開発においては、研究開発、非臨床試験、臨床試験(治験)、承認申請といった段階を踏み、承認申請ののち承認審査を経て厚生労働省の承認後に市販されるようになります。
これらの過程に含まれる治験では、妊婦さんや授乳中の方は対象外となっているため、医薬品が市販される時点での妊婦さんへの情報は、非臨床試験の結果が参考情報とされます。人間の妊婦さんや授乳中の方への投与に関しては根拠となる情報が乏しいことが現状です。
妊娠中の生活習慣や服薬による赤ちゃんへの影響について
妊娠中にアルコールを習慣的に摂取することにより赤ちゃんの精神発達に影響を与え知的障害が現れる「胎児性アルコール症候群」や、環境汚染や食事により妊婦さんが鉛を過剰に取り込むことによって赤ちゃんが鉛に暴露し、赤ちゃんの知能や発達に影響を及ぼす可能性についても議論されることが多く、妊婦さんが妊娠中の飲食や生活習慣を気にするようになるきっかけともいえます。
薬剤使用についても、妊娠中は薬を使用しない方が良いという考えが広がっており、薬剤の使用に慎重になっている妊婦さんもいらっしゃるのではないでしょうか。妊娠中の薬剤使用、特に向精神薬の使用による赤ちゃんへの影響については、薬物や放射線の影響で赤ちゃんに奇形や異常をおこす“催奇形性”の観点から懸念されることが多くありますが、赤ちゃんの中枢神経系への影響やそれに伴う発達障害の出現の可能性も考慮しなければなりません。
治療の意義とのバランスについて
妊娠中や授乳中に全く薬を使わないことが必ずしも赤ちゃんに対して安全であるというわけではありません。それまで使用していた薬を減量・中断することによりお母さんが調子を崩すことがあれば赤ちゃんにも少なからず影響があるでしょう。また、妊娠中や授乳中に薬剤を使用していなくても先天異常や発達障害発症の可能性を完全に否定できるわけではありません。
次回の後半の記事では、向精神薬のなかでも抗てんかん薬・SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)・抗不安薬について、それぞれの胎児期の曝露と発達障害の関連についてみていきます。
参考文献
当院における精神疾患合併妊婦に関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspnm/56/1/56_49/_pdf/-char/ja
妊娠・授乳中の向精神薬の服用について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/25/2/25_92/_pdf/-char/ja



