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非定型精神病に対する治療と疾患教育

非定型精神病 / 統合失調症

公開日:2026.08.24更新日:2026.08.26

非定型精神病に対する治療と疾患教育

非定型精神病に纏わる研究と経過特徴

非定型精神病は一般的にまだ認知度が低く、治療ガイドラインや急性一過性精神症(ATPD)の前身となった疾患概念に対する治療の体系的なデータなどもほとんど報告されていません。

また、急性一過性精神症(ATPD)の良質なエビデンスに基づく臨床ガイドラインが存在しないため、多くの患者において十分な再発予防のための治療が行われていないのが現状です。急性一過性精神症(ATPD)群の患者の多くは急性かつ劇的な症状の経過をたどり、柔軟な治療戦略を必要とし、体系だった二重盲検プラセボ対照試験を行うことが困難であることが理由として挙げられます。

更に、統合失調症や双極性障害は服薬中断による再発・再燃が認められますが、非定型精神病では投与を終了しても病像の完全な寛解が長期に維持されることがしばしば見られる経験です。長期経過において薬物療法の終了が可能かどうかを見極めることは臨床的に非常に重要となります。

樽谷ら(2016)の非定型精神病中核群症例についての後ろ向き研究

樽谷ら(2016)の非定型精神病中核群症例についての後ろ向き研究では、これからの知見を発展させる結果でした。先ず治療経過では無投薬寛解が55%、うち約3割が3年以上無投薬で寛解を維持され、治療導入時と比べ寛解時の抗精神病薬投与量に有意な減少が認められました。

次に抗精神病薬のD2受容体に対する結合特性としてtight binding、loose binding、dopamine partial agonist(DPA)の3群に分類し比較したところ、tight bindingやDPAにおいては投与量に変化が見られない一方で、loose bindingでは有意に投与量が減少した結果でした。またtight bindingでは錐体外路症状などの副作用を理由とした変薬例が目立ち、DPAでは副作用の発現が目立たないことが影響し、寛解後も投与量に変化が見られません。

一方で、loose bindingでは高用量で治療導入されても症状改善とともに眠気やだるさなどの訴えが出現することによって段階的な漸減中止が可能となっており、臨床実感と相違ない結果でした。

非定型精神病の治療に関して

薬物治療について

岡山らは非定型精神病の治療アプローチ法を作成しました。まず意識レベルに注目し、(亜)昏迷を呈する意識変容状態であれば修正型電気けいれん療法(mECT)を念頭に置き、次いでそうでなければ各症例の個人史における再発の有無を考慮して薬剤選択を行うことが重要です。

何度も再発が見られる症例では、統合失調症双極性障害などの可能性を考慮し、再発による機能低下を予防すべく特効性注射剤(LAI)の導入を見据えたaripiprazole(APZ)やpaliperidone(PAL)の選択が望ましいと言えます。初発あるいは再発が個人史において数回程度に限られている場合、糖尿病などの脂質代謝異常の有無や忍容性の確認も必要です。問題が有る症例においてはolanzapine(OLZ)以外の第二世代抗精神病薬を選択するべきですが、薬剤選択の優位性についてのエビデンスは現段階では十分と言えず、統合失調症治療に準じた薬剤選択が無難という考えもあります。

問題が無い症例においては、以前のエピソードに効果が高かった薬剤があればそれを選択すべきであるものの、初発や治療経過が確認困難な場合はOLZ高用量での治療開始が第一です。いかなる状態像が優勢であっても治療当初は十分量の抗精神病薬を投与して鎮静を図り、精神症状の寛解により薬剤の漸減中止ができれば再発防止のためOLZの少量頓服処方をし、定期的な外来受診を終えます。ただし、患者やその家族が眠れない日が数日続けば頓服の薬剤を服用しつつ、可能な限り早期に医療機関を受診するように説明しておくことは不用意な再燃や入院を防ぐためにも重要です。

疾患に対する理解と教育も大切です

他疾患と同様に疾病教育などの心理教育、心理的安全性を抱いてもらうためのフリーアクセス、そのための基盤として医療機関・主治医・薬剤に対する信頼性の構築など大切となります。しかし何よりも、最終的には安全に向精神薬を断薬へと持っていき、それを患者に理解享受してもらうことが大切と言えるでしょう。
この記事では非定型精神病の縦断的な臨床特性に着目し、数少ないこれまでの報告をふまえ、非定型精神病に対する診断や治療について紹介をしました。未だ十分な臨床研究がなされておらず、今後も更なる臨床的なエビデンスが必要な疾患です。