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感染症疾患に伴う精神症状と薬物療法の注意点

感染症と精神疾患 / お薬

公開日:2025.07.22更新日:2026.09.22

感染症疾患に伴う精神症状と薬物療法の注意点

今回は、感染症に伴ってみられる精神症状と、薬物療法を行う際の注意点について解説します。

感染症にかかった後、身体的な症状が長く続いたり、生活環境や仕事に変化が生じたりすることで、気分の落ち込みや不安、意欲の低下など、さまざまな精神症状が現れることがあります。特に、感染症から回復した後も体調がすぐれず、以前と同じように生活できないことが精神的な負担につながる場合があります。

例えば、感染症の療養を終えて仕事や日常生活に戻ったものの、体力や集中力が十分に戻らず、これまでできていたことが難しくなることで、次第に気分が落ち込んでしまうケースがあります。このような場合には、抑うつ症状に対する薬物療法だけでなく、心理士などによる心理療法を組み合わせることも有効な選択肢となります。

感染症後の精神的な不調では、単純に「心の問題」と考えるのではなく、身体症状や生活への影響も含めて総合的に考えることが大切です。薬による治療と心理的な支援を組み合わせながら、その人が無理なく日常生活や仕事に戻っていけるようサポートしていくことが重要です。

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感染症とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るったことで、感染症とその後のメンタルの変化については誰もが知るところとなったのではないでしょうか。ワクチンの副反応による症状には意欲減退や倦怠感等といった精神症状も含まれていると報道でも取り上げられ、感染症による精神症状には関心が集まっていると思われます。

感染症とは、厚生労働省によると「”感染症”とは細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体(=病気を引き起こす微生物)が体内に侵入し、増えることによって体に異常(症状)が生じる状態のこと」と定義されます。

種類としては一般的な風邪と呼ばれる状態も含め、インフルエンザ、梅毒、HIV、エボラ出血熱等様々あります。本稿では、主に神経梅毒と新型コロナウイルス感染症、また抗菌薬、抗ウイルス薬、抗原虫薬に関する精神障害について解説します。

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感染症と精神障害(はじめに)

感染症による精神症状は、当然ながら感染症の種類によって異なります。感染症それ自体が精神症状を引き起こす場合と、元々の精神疾患に感染症が加わり別の症状を引き起こす場合が考えられます。

(1) 神経梅毒

神経梅毒とは、梅毒菌が中枢神経系(脳や脊髄)に感染して起こる疾患です。梅毒の症状として、1カ月程度の潜伏期間の後、頭痛や麻痺といった症状が現れます。性行為等で感染する場合が多く、HIVとの同時感染もあり得ます。治療薬はペニシリンです。精神症状としては、認知症症状や誇大妄想といった精神病症状を発症することがあります。

(2) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

新型コロナウイルス感染症は、初期症状としては風邪のような発熱、乾いた咳、倦怠感等があり、重症化すると息苦しさや胸の痛み、高熱が症状として現れます。報道では高齢者の重症化リスクが注目されましたが、Ⅱ型糖尿病や高血圧症の患者にも重症化のリスクがあることがわかっています。

新型コロナウイルス感染症では、罹患した患者のうち、うつ病や不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有病率が高いと言われています。また2019~2020年の女性や若年層の自殺率の増加も明らかとなっており、新型コロナウイルス感染症との関連が考えられます。

様々な研究により、向精神薬を内服中の新型コロナウイルス感染症患者の治療時には、薬物の相互作用に注意が必要であることがわかっています。

(3) 抗菌薬、抗ウイルス薬、抗原虫薬

治療薬により精神症状が引き起こされる場合も想定されます。抗菌薬による精神症状としては、抗菌薬関連脳症(AAE)があります。AAEは以下3つのタイプに分かれます。

Type1:けいれん発作やミオクローヌス等が主体
Type2:精神病症状主体(コカインやアンフェタミン摂取時の状態と酷似)
Type3:小脳症状主体

AAE以外にも、抗菌薬の種類によっては不安や解離、躁症状、精神病症状等様々な症状を発現させる恐れがあります。たとえば、膣トリコモナス症の治療薬であるメトロニダゾールはType3のAAEを引き起こすことがあるといわれています。

抗ウイルス薬に関しては、例えば抗HIV薬であるインテグラーゼ鎖切断酵素阻害薬(INSTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)等は、抑うつや不安等の精神症状を引き起こす場合があることがわかっています。また、ヘルペス感染症の治療薬であるアシクロビルやバラシクロビルといった薬剤は、幻視や幻聴といった精神病症状が認められることがあります。

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薬物以外の影響

新型コロナウイルス感染症の学校閉鎖に伴い、小学校低学年の児童は、新型コロナウイルス感染症への理解度が低く、泣いたり、愚痴を言ったり、親や家族に依存するといった問題が増加していることがわかりました。また、自閉スペクトラム症児と定型発達児を比較した研究では、自閉スペクトラム症児は、スケジュールの変化によりイライラが増えていること等、児童のストレスの増加が障害の影響で異なることが明らかになりました。新型コロナウイルス感染症による社会の変化に伴う子どもたちの精神面に配慮が必要であることが示唆されます。また、インターネットをはじめとしたデジタルメディアの利用時間も長くなっていることから、ゲーム依存、ネット依存といった過剰な利用の影響も検討する必要があるといえそうです。

こうした感染症における精神面への影響は、薬物に限りません。越智ら(2022)は「精神障害に対するこころのケアでは、薬物療法のみならず、心理的対応も必要となるであろう」※2と述べています。

まとめ

以上、感染症疾患に伴う精神症状と薬物療法の注意点について説明しました。感染症疾患には様々な種類があり、その精神症状の現れ方も多彩であるといえます。また、感染症治療薬(抗菌薬、抗ウイルス薬、抗原虫薬等)による精神症状や、服用している精神病薬と感染症治療薬との相互作用にも注意が必要となります。

さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで明らかとなったように、感染症による社会状況が心理面に影響を及ぼすこともわかってきました。これらに対する対応は、薬物療法だけでなく、心理社会的な視点で見ていく必要があります。患者様の生活、学業、仕事等の情報を得ながら、オーダーメイドの治療や支援が必要であるといえます。

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