名古屋市中村区名駅の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院が統合失調症における心理および精神分析的理論について解説

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統合失調症における心理および精神分析的理論

2024.07.112024.08.03

統合失調症

統合失調症と精神分析

統合失調症については、患者さんそれぞれが特有の精神構造を持っていると考えられています。今回は、フロイト、マーラー、フェダーン、サリバンという精神分析家が統合失調症をどのように理解しようとしたのかについて解説します。

フロイトの精神分析理論における統合失調症の理解

統合失調症に対するフロイトの精神分析論は、無意識の葛藤や初期の心理発達の問題に焦点を当てています。フロイトは、統合失調症を主に以下の観点から理解しようとしました。

無意識の葛藤

フロイトは、統合失調症の症状が無意識の葛藤や抑圧された欲望から生じると考えました。この理論では、統合失調症の患者さんは無意識の中で強い葛藤を抱えており、それが現実世界における認知の歪みや幻覚、妄想として現れるとされています。

自我と現実の崩壊

統合失調症の患者さんは、自我が現実に適応する能力を失い、イドの衝動や無意識の欲望が支配的になると考えました。この結果、現実との境界が曖昧になり、幻覚や妄想が現実の一部と感じられるようになるのです。

早期の発達障害

フロイトは、統合失調症の根底にあるのは、幼少期の心理発達における重大な障害だと考えました。その他、フロイトは、統合失調症患者が自己と外界の区別を失うことを指摘し、「自己愛的な退行」と呼びました。患者さんが現実から引きこもり、内的な幻想の世界に没入することを説明したのです。

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マーラーの精神分析理論における統合失調症の理解

マーラーの精神分析論は、発達心理学の観点から統合失調症を理解しようとするアプローチです。マーラーは、幼児期の母子関係と個体化のプロセスに焦点を当てました。マーラーの理論は、幼児期の発達段階を次のように分けて詳細に分析し、特に「分離-個体化」の過程に注目しました。

自閉期

生後数週間、赤ちゃんは外界から閉じている状態で、自分と外界の区別がつかない状態。この段階では、自己と外界の認識はほとんどない。

共生期

生後1~5か月、赤ちゃんは母親と一体化していると感じる段階。赤ちゃんは母親を自分の一部と感じ、母子の境界は曖昧。

分離-個体化期

生後5か月から3歳頃までの期間。

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「分離-個体化」過程の障害

マーラーは、統合失調症の発症が「分離-個体化」過程の障害に関連していると考えました。具体的には次のような点が挙げられます。

共生期の障害

統合失調症の患者さんは、共生期での母子関係の問題が原因で、母親との適切な分離ができず、その結果、自己と他者の境界が曖昧になることがあるとされます。この境界の曖昧さは、現実検討能力(客観的に自分をとらえて分析する力)の欠如や妄想・幻覚などの症状として現れます。

再接近期の障害

再接近期における分離不安や独立への恐怖が十分に解消されない場合、統合失調症のような重篤な精神疾患に発展するリスクが高まるとされます。この段階での葛藤が、統合失調症患者の内的な混乱や対人関係の困難さとして現れます。

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フェダーンの自我心理学における統合失調症の理解

フェダーンは、フロイトの弟子であり、フロイトの精神分析理論を統合失調症の理解に応用しました。

自我の機能

フェダーンは、自我の機能が統合失調症の理解において中心的な役割を果たすと考えました。自我は、現実と自己の内部世界を調整し、適応する役割です。フェダーンは、自我の弱体化が統合失調症の症状を引き起こすと考えました。

自我境界の崩壊

フェダーンによると、統合失調症は自我境界の崩壊によるとされています。自我境界が崩れることで、自己と外界の区別が曖昧になり、幻覚や妄想が現れるとされてます。具体的には、以下のような症状が自我境界の崩壊によって引き起こされると考えました。

  • 幻覚自我境界の崩壊により、内部の思考や感情が外界のできごととして知覚される。例えば、内的な声が外部からの声として聞こえる幻聴など。
  • 妄想自我境界の崩壊により、自己の内部の考えが外界の現実と混同され、誤った信念が形成される。例えば、他者が自分の考えを読んでいるという考え(思考伝播)

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サリバンの自我心理学における統合失調症の理解

サリバンは、対人関係に焦点を当てた精神分析理論を発展させた心理学者です。サリバンのアプローチは、主に対人関係とコミュニケーションの役割を強調し、統合失調症の症状や発症に対する新しい視点を提唱しました。

対人関係理論

サリバンの理論の中心には、人間の心理的問題は対人関係の文脈で理解されるべきだという考えがあります。そのためサリバンは、精神疾患を個人の内的な問題だけでなく、対人関係のパターンやコミュニケーションの障害として捉えたのです。

サリバンは、自我は対人関係を通じて発達すると考えました。個人の心理的健康は、他者との関係によって形作られるとし、統合失調症のような重篤な精神疾患も対人関係の障害であると考えたのです。

統合失調症の発症メカニズム

サリバンは、統合失調症の発症を対人関係の破綻や、早期の対人関係における不安やストレスの結果と考えました。統合失調症の患者さんは、対人関係のパターンにおいて一貫した問題を抱えています。サリバンは、これを「パラタクシック思考」と呼び、現実的な対人関係を築く能力が欠如している状態と説明しました。サリバンによると、統合失調症は、パニックや恐怖、自我の崩壊を回避するための適応方法だとしています。

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症状には意味があるという考え方

精神分析論は、統合失調症の多様な症状がそれぞれの患者さんにとって、象徴的な意味があると主張しています。例えば、「世界が終わる」という空想は、患者さん個人の内的世界が崩壊したという認識を表すことがあります。また、幻覚は患者さんが客観的事実に対処できないということを示し、内的な願望や不安を表す可能性があります。幻覚と同様に 妄想とは 新たな現実を作り出したり隠れた不安からくるものという考えです。

統合失調症に対する精神療法の有効性の研究では、肯定と否定の両方の意見が報告されています。どのような治療でも複雑な統合失調症の世界においては、思いやりと保護の意識を持った関係者が不可欠です。

まとめ

統合失調症における精神析的理論として、フロイト、マーラー、フェダーン、サリバンの理論について解説しました。様々な理論で統合失調症を理解しようとした研究者がいました。そして、現代にも統合失調症の患者さんを理解しようとする臨床家や研究者もまたたくさんいます。今後の研究や知見の発展には期待が寄せられます。

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野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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