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機能性胃腸障害
機能性胃腸障害
公開日:2024.06.13更新日:2024.06.13
機能性胃腸障害について
多くの人が「なんとなく胃の調子が悪い」と感じることがあります。
特に、胃腸は精神面の不調に伴う身体症状の不調と深く関連していることがあります。このような症状を訴える人の中には、「機能性胃腸障害(Functional Dyspepsia)」と診断されるかたもいらっしゃり、今回は、この「機能性胃腸障害」について、詳しく解説します。
機能性胃腸障害(Functional Dyspepsia)とは
機能性胃腸障害は、内視鏡検査や血液検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃の痛みや不快感、膨満感などの症状が続く病態を指します。1990年代にアメリカ消化器病学会で提唱された比較的新しい概念です。過去には「NUD(Non-Ulcer Dyspepsia)」と呼ばれることもありました。
消化器系のどの部位でも確認されうる
機能性食道障害
咽頭部の不快感や、胃内容物の反復性逆流、心窩部の運動異常、嚥下障害、胸やけなどの症状があります
機能性胃十二指腸障害
消化不良や、空気嚥下、繰り返すげっぷなどの症状があります
機能性腸障害
過敏性腸症候群、腹部膨満感、機能性便器、機能性下痢、腹鳴・緩い便などの機能性腸障害がある
機能性腹痛
機能性腹痛・機能性胆道通などの症状があります
機能性直腸肛門障害
機能性失禁、機能性直腸肛門痛、排便阻害、排尿困難、排せつの困難などがあります
機能性胃腸障害の症状
機能性胃腸障害の症状には以下のようなものがあります:
- 胃もたれ、胃痛
- 膨満感、早期飽満感
- 吐き気、嘔吐
- 便秘、下痢
- のどや口まで酸っぱいものが上がってくる感じ
- 倦怠感、肩こり、手足の冷え、立ちくらみ、背部痛
また、心理的な要因と関連して、不安、心気、抑うつ、焦燥感などの精神症状が現れることもあります。
原因と病態、診断について
機能性胃腸障害の主な原因はストレスなどの心理的要因とされています。
脳と消化管は自律神経を通じて密接に連携しており、精神的ストレスが胃の機能に悪影響を与えることがあります。これにより、胃の内圧が上昇しやすくなり、少量の食事でも早期膨満感を引き起こしたり、胃酸に対する感受性が高まって痛みを感じやすくなることがあります。
さらに、脳で不快な経験として認識されると、その反応が消化管機能の異常を悪化させ、慢性化するという悪循環が生じることが知られています。
症状の存在だけではなく、検査による確認が機能性胃腸障害の診断には必要なとなることがあります。
機能性胃腸障害の治療
機能性胃腸障害の治療には、以下のような薬剤が使用されます:
- 胃酸を抑える薬
-
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- H2拮抗薬
- 運動機能改善薬
- 消化管の運動を促進する薬
- 漢方薬
- 六君子湯など
- 心理的要因に対する薬
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
また、治療には生活習慣の改善も重要です。規則的な食事、適切な睡眠、ストレスの管理が推奨されます。以下の点に注意することが大切です
食事の際に気をつけること
- 食事は三食規則的に摂る。
- ゆっくりと時間をかけてよく噛んで食べる。
- 食べ過ぎないように腹八分目を心がける。
- バランスの取れた食事を心がけ、脂肪や香辛料は控えめにする。
- 消化の良い食品を選ぶ(卵、豆腐、鶏肉、うどん、白身魚など)。
日常生活で気をつけること
- 十分な睡眠を取る。
- 適度な運動や趣味の時間を設ける。
- ストレスをためない、解消する工夫をする。
まとめ
機能性胃腸障害は、明確な器質的病変がないにもかかわらず、胃の不快な症状が続く病気です。適切な診断と治療が必要であり、生活の質を向上させるためには早期の対応が重要です。症状のコントロールには、薬物療法とともに生活習慣の改善が不可欠です。自身の体調と向き合い、無理のない範囲で対策を取りましょう。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など