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Hidamari Kokoro Clinic
睡眠関連歯ぎしりと原因、睡眠障害について
睡眠障害・不眠症 / 歯ぎしり
公開日:2024.05.10更新日:2024.05.10
歯ぎしりには2種類あります
睡眠関連歯ぎしり・覚醒関連歯ぎしり
歯ぎしりには、寝ているときにする歯ぎしりと、目覚めているときにする歯ぎしりの2種類があります。その中でも寝ている間に歯を食いしばったり、歯をギシギシすり合わせたりする歯ぎしりを睡眠関連歯ぎしりと呼んでいます。
今回のお話は、睡眠関連歯ぎしりの原因、症状、影響、検査、診断、治療などについて紹介しています。
そもそも歯ぎしりとは・・・?
歯ぎしりは、寝ている間に歯をギシギシとすり合わせたり、歯を食いしばったりするような症状が見られます。
歯ぎしりの頻度とは…
頻度は次のように個人差があります。
◆まれにある(1ヶ月に1回程度)
◆定期的にある(1週間に1回程度)
◆頻繁になる(毎晩)
歯ぎしりの頻度や、おきやすい年齢は?
歯ぎしりで睡眠がとぎれる、痛みがある、歯が欠けるなど、状態によって重症度が判断されます。
欧米やアジア諸国での「患者の歯ぎしり音の自己申告」調査によると、寝ているときの歯ぎしりの発生率は、子どもで10~20%、大人では約5~8%、高齢者で2~3%です。加齢とともに少なくなり、性差には大きな差はないことが報告されています。
【睡眠関連歯ぎしり】どんな病気?
歯ぎしりの種類には、睡眠関連歯ぎしりと覚醒関連歯ぎしりがあります。今回お話するのは睡眠関連歯ぎしりですが、それぞれの特徴を見てみましょう。
睡眠関連歯ぎしり
眠りが浅いノンレム睡眠の時に起こる
睡眠関連歯ぎしりは、寝ている間に歯をギシギシとすり合わせたり歯をくいしばったりします。長期間歯に強い力がかかっていると、様々な弊害が生じて問題となります。睡眠関連歯ぎしりの大半は、眠りが浅いノンレム睡眠のときに起こるとことがわかっており、睡眠関連疾患と考えられています。
覚醒関連歯ぎしりは、目覚めている時におきる、意識的な歯ぎしり
覚醒関連歯ぎしりは、目覚めているときに現れます。無意識なことばかりでなく意識的に起こることがあります。強い力がかかる場合だけでなく、弱い力でも長時間続く場合は歯に対して悪影響を及ぼすことが考えられます。覚醒関連歯ぎしりは、色々な条件によって起こる癖と考えられるため、治すことが可能です。
睡眠関連歯ぎしりの原因とは?
睡眠関連歯ぎしりに関しては、詳しいメカニズムが明らかになっていません。しかし、最近の研究では、睡眠中の大脳中枢の変化によって歯ぎしりが引き起こされることがわかっています。
また、ストレスなどの精神的な要因が影響しているとも考えられています。その他、遺伝性、あごの骨格形態、かみ合わせの問題なども指摘されているのが現状です。飲酒、タバコなどの生活習慣がある場合、睡眠の質が低下して交感神経に影響します。その結果、眠りが浅くなり歯ぎしりが起こる可能性が高くなります。
子どもの睡眠関連歯ぎしりについては、乳歯の生え変わりが原因の一つです。
歯ぎしりの原因まとめ・・・
◆ストレス
◆遺伝性
◆あごの骨格形態
◆かみ合わせ
◆飲酒・タバコなどの習慣
◆乳歯の生え変わりの影響
歯ぎしりによる影響とはなに?
睡眠関連歯ぎしりによる歯への直接的な影響は、歯がすり減ったり詰め物がとれたりすること、歯への圧迫から歯周病が悪化する可能性があることなどです。
歯ぎしりが過度に起こると、口が開きづらくなる顎関節症を引き起こすこともあります。全身的な影響は、頭痛や肩こり、顔や顎の痛みなどです。一緒に寝ている人の睡眠を妨げるといった周囲の人への影響も考えられます。
歯ぎしりによる影響の例…
◆歯がすり減る
◆歯が欠ける
◆詰め物が取れる
◆歯や顎の痛み
◆顎関節症
◆頭痛
◆肩こり
◆顔の痛み
◆歯周病が悪化する
◆一緒に寝ている人の睡眠を妨げる
歯ぎしりには、かみしめタイプ・すり合わせタイプなど
歯ぎしりの種類には次の3つがあります。
◆グラインディング:上下の歯をギシギシとすり合わせる歯ぎしり
◆クレンチング:上下の歯を強く噛みしめる歯ぎしり
◆タッピング:上下の歯をカチカチと慣らす歯ぎしり
歯ぎしりにはどんな検査があるの?
眠りに関する症状の原因を調べるために、終夜睡眠ポリグラフ検査検査があります。睡眠の様子やいびき、歯ぎしりの程度を調べることが可能です。自宅でも測定可能な携帯型装置もあります。
歯ぎしりの診断は?
睡眠関連歯ぎしりについて、一般の歯科診療で終夜睡眠ポリグラフ検査を行うことは難しいため、一般的には次のような基準に基づいて診断されています。
★患者が睡眠時の噛み締めや歯ぎしりを自覚している
★次の症状が1つまたはそれ以上当てはまる
●歯の異常なすり減りがある
●朝起きたときに口の周りの筋肉の不快感、疲労、痛みや顎の引っ掛かりがある
●強く噛みしめをしたときに口の周り筋肉の肥大がある
●別の睡眠関連疾患や神経学的障害、薬物使用や物質使用による障害などではうまく説明できない口の周りの筋肉の活動がある
歯ぎしりの治療は?
睡眠関連の歯ぎしりのタイプは個人差があるため、現在では確実な治療法はありません。
ストレス環境や飲酒などの生活習慣の見直しなど
ストレス、飲酒、タバコ、服薬、睡眠障害等が関係していることが疑われる場合は、睡眠障害の治療や、ストレスマネジメント、飲酒やタバコに対する制限、服薬の変更や中止によって症状を抑えられる可能性があります。
主にマウスピースなどの治療方法が挙げられますが、その他にリラクゼーション法、バイオフィフォバック、催眠療法、理学療法、ストレス管理なども治療に有用であると考えられています。
マウスピース
夜間にマウスピースを装着することによって、歯を保護します。ソフトタイプとハードタイプがあり、歯ぎしりによって歯が削られたり欠けたりするのを防ぎます。
ソフトタイプ:短期間の使用を想定している。
ハードタイプ:アクリル製で長期の使用を想定している。定期的なチェックが必要となる。
薬物療法
筋弛緩剤、高血圧治療に用いられる薬など、いくつかの薬がありますが、副反応や依存性の観点から長期的な使用はしないことが多い傾向です。
フィードバック療法
睡眠中の歯ぎしりに対して、音などのフィードバック刺激を与えることによって、歯ぎしりが抑制されることが示されています。しかし、装置が複雑となり実用化には至っていないのが現状です。
まとめ
睡眠関連歯ぎしりは、寝ている間に歯をギシギシとすり合わせたり歯を食いしばる行動が見られます。原因と考えられるのは、ストレスや睡眠障害、飲酒、タバコなどです。歯ぎしりによって、歯がすり減る、詰め物が取れる、歯周病が悪化する、肩こり、頭痛などの影響があります。治療としては、睡眠障害がある場合には睡眠に関する適切な治療、そしてストレスマネジメント。さらには歯を守るためにマウスピースをつけるなどの方法を紹介しました。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など