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Hidamari Kokoro Clinic
【睡眠随伴症とは】睡眠途中で起きて行動してしまう症状とは
睡眠障害・不眠症 / ノンレム睡眠覚醒障害
公開日:2024.05.10更新日:2024.05.10
睡眠随伴症
睡眠途中で起きた時に生じる、好ましくない行動
眠りに入る直前や眠っているとき、睡眠途中で目が覚めたときに起こる好ましくない行動のことを睡眠随伴症といいます。睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があります。睡眠随伴症は、睡眠段階のうちどのレベルから症状が出るかによって分類されています。
まずは、レム睡眠とノンレム睡眠ついて簡単な説明からお話します。
レム睡眠・ノンレム睡眠
レム睡眠とは?
レム睡眠は、脳は起きているけれど、身体は眠っている状態のことをいいます。脳は起きているため、眼が動いたり夢を見たりする状態です。レム睡眠は目覚めの準備段階であるため、レム睡眠のときに目覚めるとすっきりすると言われています。
ノンレム睡眠とは?
ノンレム睡眠は、脳が眠っている状態のことをいいます。眠った直後に現れ、夢はほとんど見ませんが、体を支える筋肉は働いている状態です。眠りの深さによって、4段階に分類され、浅い眠りから深い眠りへと続き、その後は浅い眠りとなってレム睡眠へと移行します。うたた寝のほとんどがノンレム睡眠といわれ、昼休みなどに10~20分眠るだけでもすっきりするのは、ノンレム睡眠によって脳が休息するためです。
睡眠随伴症の種類
睡眠随伴症とは、眠る前や眠っている間に起こる悪夢や行動などの望ましくない現象の総称です。子どもの場合は、脳が発達途中であるため、睡眠時随伴症が起こりやすい状態です。
ノンレム睡眠から起こる睡眠時随伴症
睡眠随伴症は、大きく分けてノンレム睡眠から起こる睡眠時随伴症(ノンレム睡眠覚醒障害にも)と、レム睡眠から起こる睡眠時随伴症があります。
錯乱性覚醒
子どもに多く、夜中に混乱した状態で目覚めて寝床で周囲を見回します。
夜驚症
睡眠中に、突然叫んだり泣き出したりします。
睡眠時遊行症
体を起こし、寝床を出て歩き回ることがあります。歩きながらぶつぶつと何かを話していたり、ものにぶつかってけがをしたりすることがあります。ほとんどの人は、睡眠中に歩き回ったことを覚えていません。(ノンレム睡眠覚醒障害)
睡眠関連摂食障害
眠っている間、意識がない状態で食べ物を求めて食べたり、料理をしたりします。
レム睡眠から起こる睡眠時随伴症
レム睡眠行動障害
睡眠中に突然、大きな声で寝言や奇声を発することや暴力的な行動を特徴です。声をかけると比較的簡単に目を覚まし、夢の内容を思い出すことができます。レム睡眠中は、筋肉の緊張を低下させる神経調節が働くため、夢の中で見ている行動のように身体は動きません。レム睡眠行動障害は、筋肉の緊張に関連する神経調節に問題が生じることによって、夢で見ている行動が実際の寝言や行動として現れます。
50歳以降の男性に多いとされ、加齢に伴って増加し、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などの神経疾患に関係すると考えられています。レム睡眠に影響する抗うつ薬が関係して起こる場合もあるとされています。
悪夢障害
不快な夢を繰り返し見ることがあり、悪夢から目覚めたときに、夢の内容を思い出すことができます。悪夢の内容によって、睡眠や日中の活動に支障が出る病気です。眠ることへの抵抗感、集中力の低下、就寝時間や消灯への恐怖、疲労感、対人関係の問題などの症状があり、悪夢の内容をはっきりと思い出すことができる点で、夜驚症と異なります。
悪夢障害は子どもによくみられる傾向で、多くは成長とともに自然におさまること多い傾向です。大人の悪夢障害の多くは、心に負った傷(心的外傷後ストレス障害:PTSD)やうつ病に合併して出現するとされています。
睡眠麻痺
金しばり状態のことを指します。本人は目覚めていると感じているのにもかかわらず、身体を動かそうとしても力が入らず、声も出ないという現象です。眠る直前の幻覚に引き続いてこの状態になりやすい傾向で、強い恐怖感を感じます。睡眠時随伴症を伴っていない人でも同じような体験をしますが、ほとんどは明け方に起こり夜眠るときに起こるのはまれです。
その他の睡眠時随伴症
睡眠時遺尿症(夜尿症)
5歳以降、週に2度以上おねしょがある場合に、睡眠時遺尿症(夜尿症)といいます。
睡眠関連幻覚
眠る直前や睡眠から目覚めるときに幻覚が現れます。
頭内爆発音症候群
眠るときに突然、爆発音が聞こえる病気です。目が覚めてしまうため、不眠となる傾向が高まります。
睡眠時随伴症の原因
睡眠時随伴症の原因は、次のようなことがあります。
- 睡眠と目覚めの移り変わりがうまくいかない
- 睡眠不足
- 不規則な睡眠リズム
- 薬の副作用
- ストレス
- アルコール
- 頭部の怪我をしたことがある
- 認知症など
睡眠時随伴症の影響
睡眠時随伴症は、その行動によってけがをするリスクがあります。また、安定した睡眠がとれないことで眠りの質が低下し、その結果、日中の活動に支障をきたす可能性が高まる傾向です。
診断方法
本人が気づいていない場合があるため、家族による睡眠や異常行動の情報が診断の手がかりになります。子どもの場合は、養育者の観察が重要な情報です。異常行動の動画があると、診断の参考になるため、撮っておくといいでしょう。
検査は、てんかんなど病気と鑑別する必要があることから、終夜睡眠ポリグラフ検査を行うことがあります。どのような異常行動があるかを確認するためにビデオ撮影が行われます。
治療
治療としては、大人では睡眠習慣の見直しが大切です。寝酒は、眠りに関して良い影響を与えると誤解されがちですが、かえって睡眠を不安定にして夜間の異常行動を引き起こす要因となります。そのため、アルコールを飲む習慣がある場合は、飲まない選択をすると病状の軽減に効果的です。
子どもに多いノンレム睡眠から起こる睡眠時随伴症は、成長していく中で症状が消失することが多い傾向です。そのため、睡眠が不足しないように規則正しい睡眠リズムを保つことが主な治療となります。その他、睡眠時随伴症の種類や重症度によって、薬の使用が検討されます。
まとめ
今回は、睡眠時随伴症の種類や症状、睡眠時随伴症による影響、診断、治療などについてお話しました。ノンレム睡眠から起こる睡眠時随伴症には、錯乱性覚醒、夜驚症、睡眠時遊行症、睡眠関連摂食障害があります。
レム睡眠から起こる睡眠時随伴症には、レム睡眠行動障害、悪夢障害、睡眠麻痺があります。睡眠時随伴症は、不眠症をおこしたり睡眠の質が下がり日中の活動にも影響することが多い傾向です。大人、子どもともに生活習慣を見直し、規則正しい睡眠習慣を保つことに着目することが大切です。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など