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フロイトの心理性的発達理論とは?段階の特徴と人格形成について解説
心理面・思考 / クリニックお知らせ
公開日:2024.06.04更新日:2024.11.14
人格形成について
「三つ子の魂百まで」という言葉にあるように、人間の人格形成には子どものころの体験が重要とされています。具体的には、どのように人格が形成されていくのでしょうか。
人格形成に関する理論は、さまざまな心理学者によって提唱されています。その中でも、精神分析学を創始したジークムント・フロイトが提唱した「心理性的発達理論」は、人格理論の発展に影響を与えました。
心理性的発達理論では、「リビドー」という性的エネルギーが、年齢に応じた身体の部位で満たされると考えます。リビドーが適切な形で満たされることで、人格が発達していくという点が特徴です。
本記事では、フロイトが提唱した心理性的発達理論の5つの段階を解説します。各段階の特徴を分かりやすく説明していますので、人格形成について知りたい方はぜひ参考にしてください。
心の発達は5つの段階に分けられる
フロイトは、人間のさまざまな活動には「リビドー」という性的なエネルギーが関わっていると考えました。例えば、「食べたい」と感じるのもリビドーの影響です。食欲が沸くと、料理をするために買い物に行くというように、行動が伴います。
このように、人間が活動するためのエネルギー源となっているのがリビドーです。そして、リビドーを満たす部分や充足の仕方が年齢によって異なるものと考えました。各段階において、適切にリビドーが満たされることで、健康な人格が形成されます。
フロイトが想定したのは、以下の5つの段階です。各段階の特徴について詳しく説明します。
- 口唇期(0~1歳ごろ)
- 肛門期(1~3歳ごろ)
- 男根期/エディプス期(3~5歳ごろ)
- 潜伏期(5・6歳~思春期)
- 性器期(思春期~)
口唇期(0~1歳ごろ)
口唇期は、口を通してリビドーを満たそうとする時期です。1歳ごろまでは、授乳によって欲求を満たします。食欲を満たすだけでなく、母親の乳首を吸うことによる安心や睡眠欲求も含まれるでしょう。
1歳近くになると、かみついたり、吐き出したり、泣いたりするといった攻撃的な反応もみられるようになります。
甘えたり、攻撃的になったりしながら、口を通して養育者と交流することが口唇期の特徴です。「この人は生きるために必要な世話をしてくれるんだ」と信頼できるようになっていきます。そして、この信頼感が人間関係の基礎となるのです。
肛門期(1~3歳ごろ)
肛門期では、排泄のタイミングを自分でコントロールできる力を身に付けるため、肛門にリビドーが集まり、欲求を満たします。便を我慢し、適切なタイミングで排泄することを学び、親からの自立心を育むのが肛門期の目標です。
自分で便をコントロールすることは、自信につながります。一方で、コントロールできずお漏らしをしてしまうと自信を失ってしまうでしょう。ただ、どちらの体験も重要で、失敗に対して過剰に恥ずかしがることなく努力することが、自立心を育てます。
男根期/エディプス期(3~5歳ごろ)
生殖器にリビドーが集まる時期です。生まれて初めて生殖器に対して興味を持ち、男女の性差を認識します。その一方で、「生殖器を失うかもしれない」という「去勢不安」を抱くことが特徴です。
去勢不安とは、子どもが異性の親に対して抱く「エディプス葛藤」にまつわる不安のことをいいます。エディプス葛藤とは、子どもが母親に対して「自分のものにしたい」という感情を抱き、父親を敵視するようになることです。
父親を敵視することで、「父親に生殖器を取られてしまうかもしれない」と感じるのが去勢不安です。「母親を手に入れたいけど、怖い」という葛藤を乗り越えて、「父親のようになろう」と親を同一化し、成長していくのが正常な発達と考えられています。
※フロイトは、エディプス葛藤を男児にみられるものとして想定していました。女児は「エレクトラコンプレックス」という類似した葛藤を抱くとされています。
潜伏期(5・6歳~思春期)
潜伏期では、性的欲求があまり表面化せず目立たない時期です。リビドーを勉強や遊び、スポーツなどに向け、周囲の環境とうまく関われるようになります。学校の先生を始めとした大人と関わることで、手本とすべき人物像を学び、成長していくことが特徴です。
性器期(思春期~)
性器期は思春期以降の時期を指します。この時期にみられる欲求は、一般的に性的欲求として知られているものと同じです。身体の発達が成熟し、大人と同じ構造になることで、本能的な性的欲求が強くなります。
興味の対象が異性に向けられ、性的な欲求や恋愛感情を抱くようになるのが、この時期の変化です。親以外の他者と親密な関係を築こうとする時期で、成熟した大人として自立していくことがこの時期の目標とされています。
必ず発達段階に沿って成長するわけではない
心理性的発達理論では、リビドーが集中する部位によって発達段階が分けられていることが特徴です。各段階で適切に欲求が満たされれば、次の段階に進み、成長が促されるとされています。
しかし、1つの段階で適切に欲求が満たされなかった場合、その段階にとどまってしまう「固着」が生じます。固着により性格形成に影響が及んで、精神的な問題の原因になることがあるでしょう。固着の例を2つ紹介します。
口唇期の固着
口唇期において適切に欲求が満たされなかった場合、以下のような性格になる可能性があるとされています。
- 自己愛的
- 依存的
- 嫉妬、妬みを抱きやすい
口唇期では、養育者から与えてもらうことで欲求を満たします。欲求を満たしてもらえなかった場合や過度に満たされていた場合、成長しても世話をしてもらうことを求めやすくなるでしょう。
肛門期の固着
肛門期において固着が見られる場合、以下のような性格が形成される可能性があります。
- 几帳面
- 頑固、強情
- 倹約家
肛門期は、排泄をコントロールできず失敗し自信を失いやすい時期です。失敗に伴う罪悪感が強いと、失敗しないように几帳面な性格になる可能性があるでしょう。さまざまなことに正確さを求める傾向があり、それが強くなると「強迫性障害」という状態になることがあります。
人格形成には欲求が関係している
フロイトが提唱した心理性的発達理論からは、性的な欲求を適度に満たすことが大切だといえます。とくに、子どもの頃は親との関わり方が大きく影響するといえるでしょう。
子どもの頃に持っていた欲求をきちんと満たせていたかを知ることで、自分の人格形成を知るヒントになります。本記事で紹介した発達段階を知り、自己理解を深めてみましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など