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双極性障害と双極スペクトラム

双極性障害

公開日:2025.04.24更新日:2025.07.08

双極性障害と双極スペクトラム

双極性障害という病気のことをご存じでしょうか。日本では1000人に4人~7人が発症すると言われており、うつ病と比べると発症率は低いですが、決して他人事というわけではありません。

双極性障害は診断が難しく、過少診断(双極性障害なのに別の病気と診断してしまう)も少なくないとされています。それを防ぐために「双極スペクトラム」という考え方が考案されました。

なぜ双極性障害は診断が難しいのでしょうか。双極スペクトラムとはどんな考え方なのか、患者やそのご家族にできることはあるのでしょうか。今回は「双極性障害と双極スペクトラム」について解説していきます。

双極性障害とは

そもそも双極性障害とはどのような病気なのでしょうか。

双極性障害は躁(そう)状態とうつ状態を繰り返す病気です。躁状態とはハイテンションで活動的になり、「自分はすごい人間なんだ」と感じる状態です。うつ状態は躁状態とは反対に消極的で悲観的になり、「自分なんて価値のない人間だ」と感じる状態です。うつ状態は6か月ほど続き、その後2週間から5か月ほど躁状態になり、その後またうつ状態になることを繰り返していきます。

躁状態は気分がハイになっているため、自分が病気であると気づきにくく、むしろその躁状態を自身でも「良い状態」と捉えてしまう特徴があり、とくに診察室のヒアリングでは初診時にははっきりしないことも少なくありません。そして、うつ状態に転じて「意欲が出ない」・「体が思う様に動かない」などの症状で初めて病院へ受診し、最初はうつ病として治療を開始しながら、通院を重ねながら医師との診療を通して、躁状態の存在に気づかれたり、双極性障害への病気だと診断されることは実は少なくありません。そのため、病状の経過上、最初は双極性障害であると気づかれず、経過を追うことで、双極性障害という診断に切り替わることもあります。

双極スペクトラムとは

スペクトラムとは「連続体」という意味を持ち、近年精神疾患に対して採用されている考え方の1つです。

例えば骨が折れている状態はレントゲンを見れば一発でわかるため、どの医師も「骨折」と判断するでしょう。しかし精神疾患の場合、患者の状態や日々の様子から、目に見えな精神疾患について診断しなければなりません。さらに患者の様子も日々変わっていき、調子のよい時と悪い時で診断結果が変わってしまえば適切な治療は困難になります。

そこで用いられるようになったのがスペクトラムという考え方です。「この症状だからこの病気」と固定するのではなく、「症状の強い時もあれば弱い時もある、それをすべて含め、領域として診断とする」のです。

これにより、双極性障害への理解がさらに進み、適切な治療や生活へのケアや注意点へのアドバイスが受けいれられやすくなりました。

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双極性障害・双極スペクトラムの診断のために

精神科の領域は、双極性障害はじめとして、ある一定期間において診療経過を診せて頂くことで、正しく診断が得られたり、診断が適切に切り替わることは珍しくはありません。

ですので、患者とその家族にできることとして、患者の状態を正確かつ細かく医療機関に伝えるためにも、患者の性格や普段の様子、数か月前と比べて変わったこと、気になることなどをまとめ、医療機関へ情報提供するようにしましょう。双極性障害のように、過去の情報が必要になって、受診した時点での患者の様子からは読み取れない情報が正しい診断への足がかりとなるケースが多くあります。

また、診断を受けて治療が始まってからも「病名がわかったからもう大丈夫」とは考えず、治療を受ける前と受けてから変わったことはないか、症状はよくなっているのか、それとも悪化しているのか、副作用はどのくらい出ているのかを観察し、定期的に医師に相談することも大切です。

最後に

今回は双極性障害と双極スペクトラムについて、そして双極性障害の診断と患者とその家族にできることについて解説しました。

双極性障害は「躁状態を病気だとは思わず医師に診察時に症状として言わないこともある」「双極性障害を発症されている方でも、うつ状態になってから病院に行くため初期ではうつ病と診断され診察と治療を経ながら適切な診断へと切り替わっていく」という特徴のある疾患です。

そのため最初は、過少診断となってしまうケースが多く、適切な診断を行うために「双極スペクトラム」という考えや、診療を経ながら適切な病名への変更という精神科診療における特徴があります。適切な診断に繋げるために、自分自身や家族の状態をよく観察し、変わったことや気になることを医師に相談することで医師がたくさんの情報の中から判断できるようにしていく必要があります。

病名がわかってからも安心しきるのではなく、通院や診療・治療を続け、適切な医療ケアを受け続けることも大切なのです。

参考文献

佐々木雅明 (2024) 双極性障害の過剰診断と双極スペクトラム.精神科治療学 39(9), 971 – 977

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」 双極性障害(躁うつ病)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/79/6/79_337/_pdf  (2025.3.9参照)

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など