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ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性と離脱

お薬

公開日:2024.08.23更新日:2025.02.03

ベンゾジアゼピン系薬剤

ベンゾジアゼピン系薬剤は、不安や不眠症の治療、筋弛緩、けいれんの抑制などに広く使用される薬剤です。しかし、長期に使用すると耐性ができたり依存的になったりする可能性があり、離脱症状のリスクがあります。今回は、ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存と離脱症状、離脱の管理について解説します。

耐性

耐性とは、薬剤を継続的に使用することで、同じ効果を得るためにより高い量が必要になる現象のことです。ベンゾジアゼピン系薬剤に対する耐性は、数週間単位の比較的短期間で発生することがあります。特に、鎮静効果や抗不安効果に対する耐性が起こりやすい傾向です。耐性が進行すると、薬の効果が減少し、離脱を避けるために薬を摂取し続ける必要が生じ、依存のリスクが高まります。

  • 鎮静耐性:薬の鎮静作用に対する耐性が進むと、同じ量を摂取しても眠気や鎮静効果が弱まる
  • 抗不安耐性:不安を和らげる効果も時間とともに減少し、患者さんが薬剤の増量を求めることがある

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依存と離脱症状

ベンゾジアゼピン系薬剤は、長期的または高用量で使用すると身体的な依存を引き起こすことがあります。依存状態になると、その薬剤の使用を中止したり減量したりすることで、離脱症状のリスクが高まります。離脱症状は、短時間作用型では服用をやめてから2日以内、長時間作用型では4日から7日以内に現れることが多い傾向です。

特に、長期間使用していた場合や高用量を使用していた場合、離脱症状が強く現れる傾向です。また、急に薬を中止すると、重篤な離脱症状が発生するリスクが高まるため、慎重な減量が推奨されています。

依存は、薬を使用しているすべての人に起こることではありません。しかし、依存の予防には、必要以上に長期にわたって薬を使用しないことが大切です。薬の使用に関しては、主治医とよく相談しましょう。

  • 軽度の離脱症状:焦燥感、不安、緊張、頭痛、睡眠障害など
  • 重度の離脱症状:けいれん発作、幻覚、錯乱、抑うつ、パニック発作
  • 精神症状:不安の増強・易刺激性・睡眠障害・内的不穏・抑うつ症状・いらだち・精神病症状・せん妄・離人感・ 混乱
  • 自律神経症状:振戦・発汗・嘔気・嘔吐・呼吸困難・頻脈・血圧上昇・頭痛・筋緊張
  • 神経学的合併症・身体合併症:けいれんリスクの増大・認知機能障害・記憶障害・視覚障害・聴覚障害・異常にまぶしさを感じる・過眠症

離脱の管理

離脱を適切に管理するためには、以下のステップが重要です。

  • 漸減(テーパリング):医師の指導の下で、ベンゾジアゼピンの用量を時間をかけて徐々に減らすことで、離脱症状を軽減する
  • 心理的サポート:不安や不眠症の根本的な原因を治療するために、認知行動療法(CBT)などの心理療法が有効
  • 代替薬の使用:一部のケースでは、他の抗不安薬や抗うつ薬を使用して、離脱症状を和らげることがある

減薬の方法

ベンゾジアゼピン系薬剤の減薬は、依存を避け、離脱症状を最小限に抑えるために慎重に行う必要があります。ここでは、具体的な減薬のステップについて解説します。

医師の指導のもとで計画すること

ベンゾジアゼピンの減薬は、必ず医師のもとで行うことが大切です。医師は、それぞれの患者さんの薬の種類や使用状況、使用期間、依存の程度などを考慮して減薬の計画を立てます。

徐々に薬の使用量を減らすこと

急に薬を中止すると、離脱症状が強く現れる可能性が高くなります。そのため、次ように用量を少しずつ減らしていく方法が一般的です。

一般的には、1~2週間ごとに現在の用量の10~25%を減らすこという減量方法がとられてきました。最近では、数週間から数ヶ月かけて総量の10から25%を減らすという方法が提案されています。

また、薬を減量する時に不安を感じる患者さんに配慮して、月単位で減量する場合も多いです。減量している最中に離脱症状が出現した場合には、一旦離脱が生じた量よりも少し多い量に戻してから、再び減量を開始することもあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の中止時の離脱症状の出現のピークは、数日後です。そのことをふまえて、少しずつ 薬を飲まない日を増やしていく隔日法も用いられています。短期間作用型薬剤などでは、より半減期の長いベンゾチアゼピン系の薬に置きかえてから隔日法が行われます。

長時間作用型のベンゾジアゼピンへの切り替え

短時間作用型のベンゾジアゼピンを使用している場合、離脱症状が強く出ることがあります。そのため薬を減らす前に、長時間作用型のベンゾジアゼピンに切り替えることが推奨されることがあります。長時間作用型は血中濃度が安定しやすく、離脱症状が軽減される可能性があるためです。

代替療法の併用

減薬中の不安や不眠症の管理のために、次のような代替療法が利用されることがあります。

  • 抗不安薬や抗うつ薬:必要に応じて、減薬中の症状を和らげるために他の薬剤が処方されることがあります。例えば、オレキシン受容体拮抗薬、セロトニン再取り込み阻害薬などの薬です。薬の選択は患者さんの状態に応じて行われ、リスクがあるため十分な説明と患者さんの同意が必要です。
  • 認知行動療法:不安や不眠症に対する心理的サポートとして、認知行動療法が有効とされています。

定期的なフォローアップ

減薬の過程では、定期的に医師の診察を受けて進捗状況を確認します。必要に応じて、減薬のペースを調整することが重要です。また、心理的なサポートや生活習慣の改善も進めることが奨励されます。

緊急時の対応

万が一、減薬中に重篤な離脱症状が発生した場合は、すぐに医師に連絡し適切な対応を受ける必要があります。状態によっては、減薬のペースを遅らせたり一時的に薬の用量を戻したりことが必要です。

生活習慣の改善

薬を晴らしていくためには、生活習慣の改善も大切です。

  • 規則正しい生活: 規則正しい睡眠と食事、適度な運動が重要です。これらは離脱症状を和らげ、精神的な安定を保つのに役立ちます。
  • ストレス管理: 減薬中はストレスが増すことが多いため、ストレス管理のための方法(リラクゼーション、深呼吸、趣味の時間など)を見つけることが推奨されます。

長期使用のリスク

ベンゾジアゼピン系薬剤の長期的な使用は、耐性と依存のリスクに加えて、認知機能の低下や反応時間の遅延、運動失調などの副作用を引き起こす可能性があります。特に高齢者においては、転倒や骨折のリスクが増加するため、慎重に対応することが必要です。

まとめ

ベンゾジアゼピン系薬剤の耐性、依存と離脱症状、離脱の管理について解説しました。離脱の管理では、状態の応じて減量ペースを調整して、患者さんに合わせた方法が取れられます。

【参考文献】厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存」https://www.pmda.go.jp/files/000245274.pdf

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