子どもの不安症に向き合う「分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害」につい名古屋ひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院が心療内科ブログで紹介

地下鉄名古屋駅 徒歩1分

大人のためのメンタルクリニック

クリニックブログ

Hidamari Kokoro Clinic Hidamari Kokoro Clinic

子どもの不安症に向き合う「分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害」

社交不安障害・社交不安症 / 全般性不安障害 / 不安症・不安障害

公開日:2025.02.06更新日:2025.09.25

子どもの不安症に向き合う「分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害」

不安とは誰もがもつ感情です。

不安症は若者に多く子どもと青年の約10~20%に認められます。しかし、不安な気持ちがあると必ず不安症という訳ではありません。

不安症と診断されるには、さまざまな原因と診断基準を満たす必要があるのです。この記事では、子どもの不安症に注目し分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害について詳しく解説します。

不安の強い子どもとの向き合い方の参考の一助になりますと幸いです。

名古屋駅の地下街サンロードにある心療内科,精神科,メンタルクリニック

不安症とは

不安症とは、あるできごとに対して釣り合わないほどの心配や恐怖により日常生活に支障をきたすことです。[1] 成人では6か月、子どもでは4週間続いている場合に診断されます。[2]

子どもの不安症では、以下3つの不安症がとくに併発しやすいとされています。

3つの不安症のどれか1つを有している場合、60%の確率で残り2つのうちの1つを併発し、30%の確率で3つ全てを併発すると報告されています。[4]

そのため、3つの診断や治療方針を決める際にまとめて評価されることが一般的です。

それぞれの疾患について詳しく解説します。

分離不安症

分離不安症とは、子どもが両親や保護者から離れるときに、年齢を考慮しても不適切なほど強い不安を感じる状態です。

分離不安は正常な発達過程でも現れ、おもに1歳未満の子どもに現れ、9~18か月がピークで2歳半までには落ち着きます。[4]

分離不安症の子どもは、両親や保護者と離れているとき「自分が誘拐されるのではないか」「親がこのまま帰ってこないかもしれない」など、何か恐ろしいことが起きるのではと考えるのです。 [1]

そのため、ひとりで出かけることが難しくなり、学校へ行ったり友だちの家に遊びに行ったりできなくなる子もいます。

全般性不安障害

全般性不安障害とは、日常生活の中でさまざまなできごとに対して不安を感じ、日常生活に支障をきたします。

たとえば、家族や友だちとの交流、学校や勉強などの場面で「失敗するかもしれない」と心配になり恐怖や苦痛を感じてしまうのです。

全般性不安障害では不安を感じるだけでなく、下記のような症状が生じます。[3]

  • 眠れない
  • 疲れやすい
  • 落ち着かない
  • 集中できない
  • イライラする

子どもの場合は、下記のような症状もあります。[4]

  • 頻脈
  • 下痢
  • 息切れ
  • めまい
  • 吐き気

このように日常生活や人付き合いに対して不安を抱え、さまざまな症状が現れるため日常生活に支障が生じるのです。

全般性不安障害については下記の記事でも詳しく解説します。合わせご覧ください。

社交性不安障害

社交不安障害とは、人の注目を集めたり恥をかいたりすることを極端におそれ、強い不安や苦痛を抱き日常生活に支障をきたします。[4] [3]

恥ずかしがりや引っ込み思案などと思われがちですが、子どもの場合は下記のような症状が挙げられます。[4]

  • 社交場面で泣く
  • 動けなくなる
  • 話せなくなる
  • かんしゃくを起こす

他にも、注目されそうな場面自体を避ける行動もとります。たとえば、発表がある日は学校を休もうとしたり、保健室に避難したりなどといった行動で社交不安障害が発覚することも少なくありません。

分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害の原因

子どもの不安症の原因には、親の精神疾患と養育スタイル、生活上のストレスが関係しています。[4]

子どもは親たち振る舞いを見て、さまざまなことを学びます。そのため、新しいことや不慣れな環境に対して親が「大丈夫?○○ちゃんに何かあったら心配だよ」「ちゃんとできるの?失敗するかもしれないからやめたら?」など過度に心配しすぎると、子どもは不安を抱きやすくなるのです。

また、親にうつ病や不安症の既往歴があると、子どもは不安症を発症しやすいという報告があります。

生活上のストレスとは、以下のようなものが挙げられます。

  • 転校
  • 引越し
  • 身内の死
  • 生活環境の変化
  • 子ども自身の病気

このような環境の変化は、子どもの不安を強くする要因となり不安症のきっかけにるのです。

分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害の予後

不安症の予後は、原因や発症年齢、生活環境や他の疾患の有無などによってさまざまです。

一般的には、発症年齢が低く学校や放課後に友だちと遊ぶことができる子どもは、不登校や引きこもりになった年齢が高い子どもより予後は良いとされています。

ある研究で不安症の子どもと青年を3年間追跡調査した結果、分離不安症の子どもの96%は寛解状態で、回復した子どものほとんどは1年以内に回復していると報告されています。[4]

分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害の治療法

子どもの分離不安症・全般性不安障害・社交性不安障害は併発することが多く、同じ治療が行われます。[4]

おもな治療法は下記の2つです。

  • 認知行動療法
  • 薬物療法

薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)という、うつ症状に効果のある薬が用いられます。認知行動療法とSSRIを併用すると望ましいでしょう。

他にも、親子で取り組む治療や認知行動療法を元にした不安対処プログラムなどもあります。医師と相談しつつ子どもに合った治療に取り組みましょう。

【まとめ】子どもの不安症と向き合おう

子どもの不安症は、「心配性」や「寂しがり」なだけと受診しないことが多くあります。

不安症の予後は、早期治療で良くなるという報告があるため、気になる症状があると家族が気づき専門家に相談することが大切です。[4]

うつ病や他の精神疾患を併発している場合は、予後は不良になる可能性が高くなるでしょう。不安症をただの心配性や寂しがりなどと考え、子どものストレスが大きくなる前に、一度専門家に相談してみてください。親が心配している状況が長く続くのも、親にとっても子供にとっても、心の健康上よくありません。

【参考文献】

[1]小児と青年における不安症の概要 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%B8%8D%E5%AE%89%E7%97%87%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

[2] 不安症|こころの情報サイト

https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX

[3]不安障害|こころもメンテしよう 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/docs/know_02_pdf.pdf

名古屋駅の心療内科,精神科,メンタルクリニック

野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など