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身体症状症(身体表現性障害・心気症)について
身体症状症・身体表現性障害・心気症 / 心理面・思考 / うつ病 / 不安症・不安障害
公開日:2024.06.10更新日:2024.06.10
[ Index ]
身体症状症の特徴について
身体症状症とは、従来は心気症や身体表現性障害と呼ばれていた疾患にもあたり、『苦痛を伴う身体症状に対して、自分が大きな病気にかかっているのではないか?あるいはかかっているということへの不安や恐怖が高まってしまう疾患』です。
そして、身体症状症は単なる病気に対する心配や懸念というレベルではなく、日常生活に支障を来してしまうほど長時間考えが囚われてしまったり、生活の制限や混乱を生じてしまうことを指しています。
身体症状症の診断について
身体症状症の診断基準について、DSM5を参考にご紹介をいたします。
診断基準A:苦痛を伴い、日常生活に意味のある混乱や支障を引き起こす身体症状
診断基準B:以下のうちの少なくとも一つに、健康への懸念に関連した過度な思考や行動がある
(1)自分の身体症状の程度・深刻さとは、不釣りあいで持続する思考
(2)症状が継続する事や健康に対して、強く持続する不安
(3)症状または健康への恐怖や懸念に関して、費やされる過度の時間と労力
診断基準C:症状のある状態・症状の存在している日々が、典型的には6か月以上継続している
身体症状症では、これらの診断基準を満たすことが大切です。
身体症状症の症状について
身体症状症では、存在する様々な身体症状について、重篤な疾患にかかってしまっているのではないか?
という不安を抱いてしまい、そしてその病気の存在や健康に対しての強いとらわれが存在してしまうことが特徴です。
心臓や呼吸器系、更には腹部症状など、自律神経系などを含めた、様々な種類の症状を呈していることもあり、その症状の存在のために、大きな病気との関連への恐怖や不安のために、
- 常に緊張してしまっている
- くつろげない
- 疲れやすい
- 懸念にずっと囚われてしまう
- 検査を求めて医療機関を受診してしまう
- 医師に対する診察や説明を求めることを繰り返してしまう
などの状態に陥ってしまうこともあります。
身体症状症のきっかけについて
身体症状症のきっかけには、手術などの大きな病気の後や、患者にとって大切な人の重篤や病や死の後のような重大なストレスの後に生じてしまうことがあります。
例えば、心筋梗塞などの発症後、適切な処置と治療を経て治癒を認めていたものの、発症前に認めていなかった心臓への違和感やチクチク感といった感覚などを治療後も訴え、まだほかにも大きな病気にかかっているのではないか?他にもかかりつつあるのではないか?治療をすることでよりもっと重大な健康への被害が出ているのではないか?という心配が大きくなってしまい、身体症状症の囚われが生じてしまうことがあります。
身体症状症と、身体症状に対する過敏性について
また、身体症状症の方には、身体症状に敏感になってしまっていることも少なくなく、身体症状への違和感を感じやすく、痛みや重だるさなどの感覚も敏感になってしまっていることも少なくありません。
身体症状症はうつ病や不安症とも合併しうる
身体症状症の患者さんにはうつ病やパニック症との合併も多く、身体症状症の患者さんのおおよそ7~8割の患者さんに合併しうるという報告もあります。
特にパニック症におけるパニック発作との鑑別は重要であり、身体症状へのヒアリングは元より、病気であることへの囚われに関するヒアリングはとても重要です。
身体症状症の治療について
身体症状症の治療については、精神療法や心理療法などが用いられることが多く、指示的療法やストレスへの対処に関する治療を組み合わせることが非常に多いです。
しかし、うつ病や不安症と身体症状症が合併している時には、うつ病や不安症に対する薬物療法を含めた治療は有効で、身体症状の軽減や不安や囚われの感情を緩和して、よりストレスや思考に対する考え方や捉え方が柔軟になっていくように働きかけることが可能となっていくことがあります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など