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遅発性ジスキネジア
遅発性ジスキネジア
公開日:2024.07.16更新日:2024.07.16
遅発性ジスキネジアについて
遅発性ジスキネジアは、パーキンソン病の治療に使用されるレボドパという薬の長期使用によって引き起こされる運動障害です。パーキンソン病の患者はドーパミンの不足により運動機能が低下しますが、レボドパはこのドーパミンの代わりとして働き、症状を改善します。しかし、長期間のレボドパ療法は副作用としてジスキネジアを引き起こすことがあります。今回は、遅発性ジスキネジアについてその特徴や原因、メカニズム、治療や予防について解説します。
遅発性ジスキネジアの特徴
遅発性ジスキネジアの特徴は、手足、顔、胴体などが勝手に動く不随意運動です。これらの動きは、レボドパの血中濃度が高くなると発生しやすく、運動パターンはさまざまです。連続的で滑らかな動き、突発的で不規則な動きなどがあり、時間とともに悪化することが多い傾向です。
遅発性ジスキネジアの原因とメカニズム
遅発性ジスキネジアの原因について詳しく説明します。
ドーパミンの変動と神経過敏
パーキンソン病は脳内でドーパミンを産生する神経細胞が減少する病気です。レボドパはドーパミンの前駆体であり、体内でドーパミンに変換されて不足したドーパミンを補います。しかし、長期間にわたるレボドパの使用は以下のようなメカニズムを通じて、遅発性ジスキネジアを引き起こします。
ドーパミン濃度の急激な変動
レボドパの服用により、血中および脳内のドーパミン濃度が急激に上昇します。この急激な変動によってドーパミン受容体の過敏反応を引き起こし、神経細胞が過剰に活動した結果、不随意運動が生じるのです。
ドーパミン受容体の変化
長期間のレボドパ療法により、ドーパミン受容体の数や感受性が変化します。運動制御に影響を与え、不随意運動を引き起こすと考えられています。
神経回路の再編成
長期のレボドパ療法は脳内の神経回路にも影響を及ぼします。
基底核の変化
パーキンソン病では、基底核と呼ばれる運動を制御する部位が異常な活動を示します。レボドパによりこの異常な活動が修正される一方で、長期間の使用により基底核の神経回路が再編成され、運動制御が過敏となってジスキネジアの一因となるのです。
セロトニン系の関与
近年の研究では、セロトニン神経系がジスキネジアの発症に関与していることが示唆されています。セロトニン神経がドーパミンを取り込み、異常なドーパミン放出を引き起こすことで、不随意運動が生じる可能性があると考えられています。
遺伝的要因
一部の患者さんでは、遺伝的な要因によりジスキネジアのリスクが高いことが分かっています。遺伝子のある型がレボドパへの反応性を変化させることがあり、このために一部の患者さんがより早期に、またはより重篤なジスキネジアを発症することがあります。
環境要因
外部環境や生活習慣もジスキネジアの発症に影響を与える可能性があります。ストレスや食事、運動習慣などがドーパミン代謝に影響を与え、ジスキネジアのリスクを増減させることがあります。
治療
遅発性ジスキネジアの治療は、個々の患者の症状や状態に応じて最適な方法を選択し、調整することが重要です。医師と密に連携し、適切な治療プランを作成することが成功の鍵となります。以下に一般的な治療方法について紹介します。
薬物療法
薬物療法レボドバの投与量を調整、ドーパミンアゴニストの使用などの方法があります。
レボドパ投与量の調整
レボドパの投与量を減少させることで、ジスキネジアの発症頻度を低減できます。ただし、これによりパーキンソン病の症状が悪化する可能性があるため、慎重に行うことは重要です。
レボドパ頻回投与
レボドパを少量ずつ頻回に投与することで、血中濃度の変動を抑え、ジスキネジアの発症を抑える方法です。
ドーパミンアゴニスト
プラミペキソールやロピニロールなどのドーパミンアゴニストを使用することで、ドーパミン受容体を刺激し、レボドパの使用量を減らす方法です。
NMDA受容体拮抗薬・MAO-B阻害薬
NMDA受容体拮抗薬・MAO-B阻害薬などを使用する方法もあります。
非薬物療法
非薬物療法には、脳深部刺激療法や集中的リハビリテーションなどの方法があります。
脳深部刺激療法
基底核に電極を埋め込み、異常な神経活動を調整する方法です。DBSは重症の遅発性ジスキネジア患者に対して有効とされ、パーキンソン病の他の症状も改善することが期待できます。
集中的リハビリテーション
特定のリハビリテーションプログラムや運動療法を通じて、運動機能を改善し、ジスキネジアの症状を軽減することができます。
ライフスタイルの管理
食事やストレス管理について意識することが大切です。
食事
タンパク質がレボドパの吸収を妨げることがあるため、食事の時間や内容を調整することで、薬の効果を最適化します。
ストレス管理
ストレスはジスキネジアの症状を悪化させることがあるため、ヨガ、瞑想、深呼吸などのリラクゼーション技術を取り入れることが有効です。
予防方法
遅発性ジスキネジアの予防について紹介します。
レボドパの使用を慎重に
パーキンソン病の初期にはレボドパの使用をできるだけ遅らせ、他の薬(ドーパミンアゴニストやMAO-B阻害薬)を優先的に使用することが推奨されます。また、レボドパの最小有効量を使用し、必要以上に増やさないようにすることが重要です。
ドーパミンアゴニストの利用
レボドパの補助薬として、ドーパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロピニロールなど)を使用することでレボドパの使用量を減らし、ジスキネジアのリスクを低減します。
定期的な評価と調整
パーキンソン病の進行状況や治療効果、副作用を定期的に評価し、治療計画を調整することが必要です。
まとめ
遅発性ジスキネジアについてその特徴や原因、メカニズム、治療や予防について解説しました。遅発性ジスキネジアは、レボドパの服用によって血中や脳内のドーパミン濃度が急激変動し、神経細胞にストレスを与えることが原因です。レボドバの開始時期や量について十分に検討し、その他の薬剤の使用や定期的な診察などによって予防が可能です。
【参考文献】
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル・ジスキネジア」