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Hidamari Kokoro Clinic
何でも先延ばしにしてしまうのは、性格ではなく脳のメカニズム?
先延ばしグセ / メンタルケア
公開日:2025.06.04更新日:2025.06.04
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何でも先延ばしにしてしまう癖とは?
やらなければいけないことは分かっている。でも、気がつけばスマホをいじっていたり、掃除を始めたりして、肝心なことには手がつかない。
「自分って本当にだらしない」と責めたことがある方も少なくないはずです。
しかし実は、「先延ばし癖」はあなたの性格や意志の弱さではなく、脳の働き方によって引き起こされている可能性があります。
先延ばしの正体:脳の“報酬回避システム”
人間の脳は、基本的に「不快」を避けて「快」を求める性質を持っています。
そのため、面倒・不安・苦手と感じることに直面すると、脳はそれを“危険信号”として処理し、回避しようとする傾向があります。
これを脳科学的に見ると、「扁桃体」という感情の中心を担う部分が関与しており、危機感や不快感をキャッチすると、それを避けるよう指示を出すのです。つまり、あなたが仕事や課題を先延ばしにしてしまうとき、それは“脳があなたを守っている”反応とも言えます。
前頭前野と先延ばしの関係
一方で、「やるべきことに取り組む」ためには、脳の“司令塔”とも言える「前頭前野(ぜんとうぜんや)」の働きが欠かせません。この前頭前野は、計画を立てたり、自分を律したり、目の前の感情に流されずに行動を選択する働きを持っています。
しかし、ストレス・疲労・睡眠不足などによってこの機能が落ちると、感情や衝動に流されやすくなり、「今はやらなくていいや」と目先の快を優先する行動が起こりやすくなります。
これが、「先延ばし」を引き起こす脳内メカニズムです。
ADHD(注意欠如・多動症)との関連性も
日常的に「先延ばしが多すぎて困っている」「大事なことほど直前まで手につかない」などの傾向が強い場合、**発達特性のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)**の可能性もあります。
ADHDの方は、脳内のドーパミンやノルアドレナリンの調整がうまく働かず、集中力・段取り力・衝動コントロールに課題を抱えることがあります。
このため、日々のタスク管理が難しくなり、「やろうとしても始められない」「気づいたら時間が過ぎていた」という状況に陥りやすくなります。
「やる気が出るまで待つ」は非効率?脳の性質上、始めるとやる気は出てくる
「やる気が出ないから始められない」という感覚、誰もが経験します。しかし、脳科学的には“やる気は始めた後に出てくるもの”とも言われており、やる気が上手く働かない時こそ上手くその「やる気の出やすい」特性を生かして工夫してみることも大切です。
これは「作業興奮」と呼ばれ、作業を開始することで脳が活性化し、やる気ホルモンであるドーパミンが分泌され、徐々に集中状態に入っていくという現象です。
つまり、やる気が出るのをただひたすら待っているだけでは、永遠に始められない可能性もあるのです。
先延ばしに対処するヒント
先延ばしを完全になくすことは難しくても、「減らす工夫」は可能です。脳の仕組みを理解したうえで、以下のような方法を試してみましょう。
▷ タスクを細分化する
「プレゼン資料を作る」ではなく、「タイトルページだけ作る」「構成を3つに分ける」など、できるだけ小さく分けて着手のハードルを下げるのがポイントです。
▷ タイマーを使って時間を区切る
集中が続かない場合は、ポモドーロ・テクニック(25分作業+5分休憩)などを活用し、時間を味方にしましょう。
▷ 環境を整える
誘惑の多い環境では、脳はつい楽な方に流されます。スマホを別の部屋に置く、通知を切る、静かな場所で作業するなど、脳に余計な選択をさせない環境づくりも大切です。
「何度も繰り返す先延ばし」には医療的なアプローチが有効な場合も
習慣的な先延ばしに悩み、「生活に支障が出ている」「自己評価が下がり続けている」と感じる場合、心療内科や精神科に相談することで道が拓けるケースもあります。
- ADHDなどの発達特性の評価
- うつや不安による意欲低下の見極め
- 薬物療法や認知行動療法などの治療方針の検討
- 自分の脳の特徴に合った「対処スキル」の獲得
自分を責め続ける前に、自分の脳の働き方を知ることから始めてみてください。
「先延ばし癖」は脳の働きの特性でもあり、傾向を知って上手く対処することも
先延ばしの原因や傾向について、解説を行いました。そしてその特性についてを知り、上手く対処するための「方法やスキル」について紹介を致しました。
- 先延ばしは、脳が「不快」を避けようとする自然な反応である
- 疲労やストレスで前頭前野の働きが落ちると、意思決定が困難になりやすい
- ADHDなどの発達特性が関係している場合もある
- 小さく始める・時間を区切る・環境を整えるなどの工夫が有効
- 必要であれば、医療的なアプローチで「生きやすさ」を取り戻せる
「どうしてまたギリギリまでやらなかったんだろう」そんな自責の気持ちに苦しむあなたへ。
その“先延ばし癖”は、脳の仕組みによるものかもしれません。だからこそ、変えられる部分や取り組んでみるべき工夫が見つかりやすいのです。
名古屋ひだまりこころクリニック名駅エスカ院は名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックです。お気軽にご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など