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双極性におけるMeasurement Based Care

Measurement Based Care(MBC) / 双極性障害

公開日:2024.10.03更新日:2025.01.28

双極性障害におけるMeasurement-Based Care(MBC)とは

双極性障害におけるMeasurement-Based Care(MBC)は、治療の効果や患者さんの状態を定量的に評価し、その結果に基づいて治療方針を調整するアプローチです。

MBCは、特に双極性障害のような複雑な症状を持つ精神疾患において、その患者さんに合った効果的な治療を提供するために有用です。今回は、双極性障害について症状、認知機能、機能とQOLのMBCと有用なツールを紹介します。

Measurement-Based Care(MBC)の重要性

MBCでは臨床診断や治療の際に、患者さんの症状や治療反応を定量的に測定します。これにより、医師は主観的な判断に頼ることなく、患者さんの状態を客観的に理解し、治療の効果を評価できるようになります。特に双極性障害の場合、以下のような要素が重要です。

気分の変動

双極性障害では、躁状態と抑うつ状態の極端な気分の変動が特徴です。気分スケールなどを使用して、症状の重症度や経過を測定します。

機能の変化

生活の質や社会的、職業的機能も評価対象となります。機能評価尺度などを用いることが一般的です。

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症状に関するMBC

双極性障害の場合は、軽躁エピソードでは、平常を装うことが可能な患者さんもいるため、外見だけでは判断できないことがあります。そのようなときに、躁症状評価尺度を定期的に使用すると躁症状への変化の可能性が予測でき、診察での病状を評価するのに役立つかもしれません。

しかし、ただ評価点を見るだけでは不十分で、各項目の変化の評価も行う必要があります。例えば、同じ10点だとしても、項目によっては前回よりも上がっていたり下がっていたりする場合は、病状に変化が見られるということになります。このように、丁寧に評価しなければ、MBCの有用性は限定されるでしょう。

双極症の症状評価に関するMBCのシステマティックレビューを見ると、躁状態の患者記述式ではAltman Self-Rating Mania Scale(ASRM)が有用で、医師の観察式では有用なものはありませんでした。抑うつ状態で最も高いスコアだったのはQIDS、次にHDRS-5、自記式では患者報告用のQIDSでした。躁と鬱の両者の症状の評価では、自記式ではInternal State Scale、医師の観察式ではBipolar Inventry of Symproms Scaleが有用です。

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それぞれのツールを紹介します

  • Altman Self-Rating Mania Scale(ASRM):気分の高揚(過度の興奮や幸福感)・過剰な活動(活動的すぎる、衝動的な行動)・話しすぎ(話す速度が速い、話題が飛びがち)・睡眠の減少(必要な睡眠時間が減少)・思考のスピード(思考が速すぎる、集中困難)について評価する。
  • QIDS(Quick Inventory of Depressive Symptomatology):Q9つの主要なうつ病症状を評価するために、16項目ある。質問は具体的で、患者さんが自己記入式(QIDS-SR)で回答する場合でも、臨床医が評価する臨床評価版(QIDS-C)でも、5~10分程度で完了するため、診療や研究において手軽に使用できる。
  • HDRS-5(Hamilton Depression Rating Scale-5):抑うつ気分・自殺念慮・精神的や身体的焦燥感・睡眠障害・全体的な臨床的印象について4段階で評価する。
  • Internal State Scale:16項目の質問があり、その程度について10段階で答える。躁状態と抑うつの状態を含む気分の変動を把握するのに役立つ。エネルギー(活動量や活力)・気分(感情の高揚や沈み具合)・思考の速度(思考の速さや遅さ)・過剰な行動(衝動的な行動や過剰な活動)・睡眠のパターン(睡眠の質や量)・自己評価(自己認識や自己評価の状態)について評価する。
  • Bipolar Inventry of Symproms Scale:双極性障害の特有の症状を評価するために設計され、単なる抑うつや躁状態だけでなく、気分の変動、エネルギーの変化、思考のスピードや内容の変化など、双極性障害の全体的な症状を網羅している。双極性障害の2つの極(躁状態と抑うつ状態)の両方を評価する点が、一般的なうつ病評価尺度との大きな違いで、44項目についてその程度を5段階で評価する。

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認知機能に関するMBC

双極症は、急性期でも寛解期でも認知機能が障害されているというエビデンスが蓄積されてきています 。SCIP(Screen for Cognitive Impairment in Psychiatry)やCognitive Deficits in bipolar disorder (COBRA)などが有用です。

  • SCIP(Screen for Cognitive Impairment in Psychiatry):SCIPは、即時記憶(口頭で提示された単語リストを覚える能力)・作業記憶(短期的な情報処理や注意を維持する能力)・言語流暢性(言語的な流暢さや語彙の使用能力)・注意と集中力(持続的な注意力と認知的な集中力)・遅延再生(時間が経った後に提示された情報を思い出す能力)について認知機能領域を評価する。
  • Cognitive Deficits in bipolar disorder (COBRA):患者自記式の認知機能スクリーニングで、日本語版の信頼性や妥当性もある。16個の質問があり、4段階で回答する。特に、記憶、注意、実行機能などの認知領域を対象とし、躁病エピソードや抑うつエピソードの間隔における認知機能の状態も評価する。これにより、エピソードの有無にかかわらず、持続的な認知機能の問題を明らかにする。

機能・QOLに関するMBC

全体的に改善しているかなど、病状の大枠を把握する視点は重要です。双極症は躁エピソード・抑うつエピソードといった波があるため、全体的な機能を評価しておくと、病状の大きな流れを把握することができます。双極症では、Functioning Assessment Show Testがあります。

  • Functioning Assessment Show Test:24個の質問からなり、4段階で回答する。主に双極性障害患者さんの日常生活の機能性(仕事、家庭生活、人間関係など)を評価する。機能的な問題の早期発見や治療効果のモニタリングに役立つ。

まとめ

双極性障害におけるMeasurement-Based Care(MBC)の主要な要素とその役割につい解説しました。症状、認知機能、QOL・機能についての有用なツールも紹介しました。双極性障害におけるMeasurement-Based Careは、患者さんの症状や治療の進捗を客観的に評価し、それに基づいて個別的な治療を提供するための効果的なアプローチです。

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