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発達性協調運動症について
発達性協調運動症 / 大人の発達障害 / ADHD・注意欠陥多動性障害
公開日:2025.04.24更新日:2025.07.28
発達性協調運動症とは
「自分の子どもが不器用で心配」と思うことや、「自分の不器用さが仕事に影響している」と感じたことはありませんか?
「発達性協調運動症」は、運動の苦手さが日常生活や社会生活に影響を及ぼす神経発達の特性の一つです。運動や手先の動きがぎこちなく、不器用さが目立つことが特徴です。幼少期に気づかれることが多いものの、大人になってから「自分もそうかもしれない」と気づく方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、発達性協調運動症の特徴や診断、サポート方法について分かりやすく解説します。
発達性協調運動症について
発達性協調運動症とは、知的な発達に問題がなく、脳性麻痺など身体の動きに影響するような病気がないにもかかわらず、運動に関する動作がスムーズにできない状態を指します。
「単なる不器用」との違いは、その不器用さが生活の中で大きな困難を引き起こす点です。例えば、ボールを投げる、走る、ジャンプするといった基本的な動作が周囲よりも遅れたり、手先を使う作業が苦手だったりすることで、学校生活や社会生活に影響を及ぼします。
発達性協調運動症の人は、特定の作業に時間がかかり、繰り返し練習してもなかなか上達しないことが特徴です。決して怠けているわけではなく、脳の情報処理の仕組みが影響していると考えられています。

発達性協調運動症の症状と影響
発達性協調運動症の特徴として、大きな動きの困難と、細かい動きの困難が挙げられます。また、そのような苦手さのために、人間関係や勉強など社会的な事柄への影響も生じます。
大きな動きの困難
特徴の一つは、体全体を使った大きな動きの困難です。ここには、座る・歩く・走るなどの運動が含まれます。この特徴を持つ子どもは、走ったり、飛び跳ねたり、ボールを投げたりといった動作がぎこちなく、スムーズにできないことが多く、でんぐり返しやスキップ、自転車などの習得にも時間がかかります。
スポーツや遊びの場面では、他の子どもと比べて動作が遅れることがあり、グループでの遊びについていけないことも少なくありません。また、転びやすかったり、物にぶつかりやすかったりすることもあります。
細かい動きの困難
もう一つの特徴は、細かい動きの困難、いわゆる手先の不器用さです。例えば、文字を書くことが苦手で字が読みにくかったり、ボタンを留めたり紐を結んだりするのが難しく、着替えに時間がかかったりします。箸やはさみなどの道具を使うことに苦労しやすく、パズルや塗り絵、楽器の演奏などにも苦手意識を持ちやすいです。そのため、学校生活や日常生活での困難が増え、ストレスを感じることも少なくありません。
社会的影響
さらに、発達性協調運動症は社会的な影響も及ぼします。運動能力の違いが原因で、集団の活動になじめず仲間関係に影響が出ることがあります。特に、幼少期から運動が苦手だと、学校の体育の時間や遊びの場面で疎外感を感じることがあり、自信をなくしてしまうこともあります。成長してからも仕事や日常生活での動作のぎこちなさがストレスとなり、人付き合いに消極的になってしまうことがあります。
ただし、スポーツや身体を使った遊び以外の方法で、友達と上手く関わることができる子もいます。

発達性協調運動症の原因と診断
発達性協調運動症の原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝的な要因や生まれた時の影響が関与していると考えられています。例えば、この症状を持つ可能性が高くなると報告されているのは、未熟児として生まれた場合などです。
また、脳の情報処理の機能の違いが研究されており、例えば、体のバランスを取る機能が関係していると考えられています。発達性協調運動症は、ADHDや限局性学習症(学習障害)と関連することも多く、注意力が散漫になりやすい、言葉の発達に遅れがあるといった特徴が併存することがあります。
診断には、専門の医師による評価が必要です。子どもの場合、運動の発達状況や動作のぎこちなさを詳しく観察し、どの程度日常生活に影響が出ているかを確認します。具体的には、ジャンプや片足立ち、靴ひもを結ぶなどの動作を通じて評価されることが多いです。成長した後に診断を受ける場合も、幼少期からの運動の遅れや現在の困難さを問診や運動テストを通じて確認します。

発達性協調運動症の治療とサポート
発達性協調運動症は、適切なサポートを受けることで、日常生活の困難を軽減することができます。
まず、リハビリテーションや運動療法が有効な手段として挙げられます。運動の基礎を身につけるためのトレーニングや、手先を使う動作の練習を行うことで、徐々に動作をスムーズにできるようになることが期待できます。
また、学校や職場での支援を受けることも大切です。例えば、学校では体育の時間に負担の少ない運動を選べるように配慮してもらう、授業で長い文章を書く際にはパソコンの使用を認めてもらうなどの対応で、学習の負担を減らすことができます。職場でも、本人の苦手な動作をカバーし、作業の負担を軽減する工夫を取り入れることができると良いでしょう。
日常生活の工夫としては、動作の負担を減らすアイテムを取り入れることも有効です。例えば、滑りにくい鉛筆を使用する、ボタンのない服を選ぶ、作業の前に動作をイメージしてから行う、といった方法が役立ちます。
周囲の理解を得ることも重要です。発達性協調運動症の特性について周囲の人と共有し、できる範囲でサポートを受けることで、ストレスを減らしながら生活することができます。保護者がカウンセリングを受けることで、子どもの特性をより理解し、不安を軽減できることもあります。

まとめ
発達性協調運動症は、単なる「不器用さ」とは異なり、日常生活や社会生活に影響を及ぼす特性です。しかし、自分の特性を理解し、必要な支援を受けることで、より快適に生活できるようになります。
運動が苦手だからといって自信を失う必要はありません。自分に合った方法を見つけ、できることを少しずつ増やしていくことが大切です。もし運動や手先の不器用さで悩んでいる場合は、一度専門家に相談してみるのもよいでしょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など








