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せん妄の症状はいつまで続くのか|原因や対策方法について
せん妄
公開日:2024.08.05更新日:2024.08.05
せん妄って何だろう?
入院したら家族がよく分からない言動をするようになると
「もしかして認知症になったのでは…」
「このままこの状態がずっと続くのかな…」と心配になりますよね。
せん妄は精神の「状態」を表す言葉で、疾患名ではありません。
せん妄では、ある日突然支離滅裂な発言が見られますが、適切な対応で早期回復が見込めます。
この記事では、せん妄の原因や症状、いつまで続くのかについて詳しく解説しています。
ご家族がせん妄になり、不安なあなたの心が少しでも楽になりますと幸いです。
せん妄とは
せん妄とは、突然発生する意識がはっきりとしない状態(意識混濁・意識障害)のことで、高齢者や入院患者に多く見られます。
せん妄の特徴は、以下のとおりです。
- 急性の発症
- 高齢者や入院患者に多い
- 原因を改善すると急速に治る
- せん妄状態の記憶があいまい
せん妄を経験した多くの方は、症状が生じていたときのことを断片的にしか覚えていません。「ぼんやりとしか覚えていない不快な夢」「悪夢を見ているようだった」と感じることが多いです。
せん妄の原因
せん妄の原因は「病気」「薬剤」「ストレス」「アルコール」などさまざまです。
血液中のカルシウムやナトリウムの濃度に異常、血糖値や甲状腺機能の異常、加齢による薬への感受性の高まり、脳の変化もせん妄の原因になることもあります。
原因が明確な場合は、以下のような対策が優先されます。
- 入院や手術によるストレス:退院すると改善
- 薬剤によるせん妄:原因の可能性が高い薬剤の中止、または減薬
せん妄の症状
せん妄の症状は人によってさまざまです。症状は通常突然出現します。
せん妄の症状は以下のようなものがあります。
- 注意障害
- 見当識障害
- 幻覚・妄想
- 意識の変動
詳しく解説します。
注意障害
集中力が低下し、周囲に注意が払えなくなります。そのため新しい出来事への対応が難しくなり、自分のまわりで起きていることが分からなくなるのです。
見当識障害
見当識とは、日時や場所など基本的な自分の周りの状況を把握することです。
せん妄状態では見当識が障害されるため「今が何日なのか」「ここがどこか分からない」などの症状が生じます。そのため、認知症と勘違いされることが多いです。
幻覚・妄想
実際にはありもしないものが見えたり聞こえたりすることがあります。せん妄状態の方は、現実で起きていると思っているため、周囲が訂正しても「そんなことはない」と否定されることもあるでしょう。
意識の変動
意識の変動が激しく、はっきりと覚醒していると思ったら、次の瞬間には眠そうになったりすることもあります。その変化は数分で変わることもあり、とくに夕方に悪化することが多いです。
睡眠障害
眠っている間も落ち着かないこともあり、昼夜逆転することもしばしば見られます。夜間に不眠や焦り、興奮などせん妄状態になることを「夜間せん妄」と言います。
せん妄はいつまで続くのか
せん妄は原因を解決すると一気に改善しますが、一般的には一週間以内(3~7日以内)で治まります。年齢が高くなるほどせん妄の継続期間が長くなる傾向にあり、せん妄の症状によっては、完全に治るまでに2週間前後を要することもあるでしょう。
また、せん妄の治療が遅れると完治する可能性は低くなり、長期的なせん妄は死亡率や認知機能にも影響してきます。
そのため、せん妄の症状に気づいたら、速やかな原因解明と早期治療が大切です。
せん妄の対策
せん妄は早期発し治療を開始すると、入院期間が短くなることが研究で分かっています。
原因が分かっている場合は、原因となる病気の治療や原因を取り除くことが優先されます。
他には、本人が安心できる環境を整えることも大切です。
せん妄の具体的な対策は、以下のとおりです。
- 時計やカレンダーや家族の写真を置く
- 人とのかかわりを増やす
- 生活リズムを整える
時計やカレンダーは、日時や場所の確認に役立ちます。また、身近に家族の写真を置くことで自分がどこにいるのか分かり安心できるでしょう。
せん妄状態のときは、本人も不安に思っているため、家族や病院スタッフが頻繁に話しかけることで不安を軽くすることができます。また、生活リズムを整えるために、昼寝は最小限にし、日中は明るい場所ですごすことも大切です。
せん妄と認知症は違う
せん妄も認知症も、つじつまの合わない話をしたり自分のいる場所や時間が分からなくなったりと症状は似ています。
違いについては、以下のようなことが挙げられます。
- せん妄 認知症
- 急性に発生 緩やかに進行
- 意識低下あり 通常意識清明
- 注意力が低下 記憶力が低下
せん妄は、早急に症状が出現すること、一日の中でコロコロ変化が見られるなどで区別することができます。
また、せん妄は「状態」を表し、認知症は「病名」を表します。
以前から認知症とはっきり診断されている場合は、認知症とせん妄が重複診断されることもあります。その場合は「曇った認知症」と呼ばれます。
せん妄症状|まとめ
せん妄は急速に発生する意識障害です。
急に「ここはどこかな?」「(家族に対して)あなた誰?」などの発言や、1日の中で気分がコロコロ変わることが見られたら、せん妄の可能性を考えてみてください。
多くの場合、一週間以内(3~7日以内)に治まりますが、発見が遅れ治療が遅れることで予後が悪くなります。
身近な家族が今までとの違いに気づくことが大切です。
もしかして、せん妄かもしれない…と思ったら、ひだまりこころクリニックにお気軽にご相談ください。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など