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マルトリートメントとは?子どもの未来を守るために知るべきこと
マルトリートメント
公開日:2026.05.22更新日:2026.08.22
[ Index ]
マルトリートメントってなに?
「マルトリートメント」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? これは直訳すれば「不適切な扱い」や「虐待」とも言えますが、単に身体的な暴力だけを指す言葉ではありません。
「マルトリートメント」とは、子どもへの虐待やネグレクトなどにあたる心や体を傷つける不適切な育て方だけではなく、虐待には該当しない広く、子どもの健全な成長や発達を妨げるようなすべての不適切な養育を含む概念と行動を指しているのです。現代社会において、子育てに関する知識や支援が増えている一方で、この「マルトリートメント」は見えにくい形で存在しています。
今回は、マルトリートメントの概要、なぜ問題なのか、心理的な影響、私たちにできることなどについてお話します。

マルトリートメント|具体的にどのような行動?
虐待とは言い切れない大人から子どもに対する避けたいかかわりとして、以下に具体的に紹介しています。しかし、1つ該当するからと言って、すぐに「マルトリートメント」というわけではありません。しかしながら、マルトリートメントは、日々の子育ての中で、親だからという視点で知らないうちに継続して起きがちな行動であるということには注意が必要です。
身体的なかかわり
- イライラして子どもを強くつかむ、引っ張る
- 手を強く引いて無理やり連れていく
怒鳴る・怖がらせる
- 「そんなことしたら捨てるよ」「置いていくよ」と脅す
- 「警察に連れていかれるよ」など、恐怖を利用して言うことを聞かせる
人格・存在を否定する
- 「どうしてあなたは○○ちゃんみたいにできないの?」
- 人前で子どもの失敗や欠点を笑いものにする
無視・拒絶する
- 怒ったときに長時間口をきかない
- 「もう知らない」「勝手にすれば」と突き放す
過度なコントロール
- 子どもの意見を聞かず、何でも大人が決める
- 「親の言うことだけ聞けばいい」と言う
- 年齢に見合わない「ちゃんとしなさい」を繰り返す
ネグレクトに近い「放置」
- 子どもの話を聞く時間をほとんど持たない
- 病気やけがをしても「大したことない」と放置する
性的なかかわり
- 「お父さん(お母さん)にチューして」と、子どもが嫌がっている性的・身体的接触を求める
- 「親なんだから触っていい」と、子どもの身体的な境界線を尊重しない
- 年齢に応じたプライバシーを尊重せず、着替えや入浴を一方的に強要、あるいはその適切な管理をしない
など、さまざまにあります

マルトリートメントはなぜ問題なのか?|脳と心への深刻な影響
子ども時代のマルトリートメントは、大人になってからの人生にまで大きな影響を及ぼします。研究では以下のような関連が報告されています。
- 脳の発達障害(扁桃体や前頭前野などの変化)
- 情緒の不安定性やうつ症状、PTSDの発症
- 対人関係の困難(信頼感や自己肯定感の低下)
- 自己調整能力の低さ(衝動性・感情コントロールの難しさ)
このように、マルトリートメントは単なる「そのときの問題」ではなく、長期的なトラウマとして心身に残ることがあるのです。
マルトリートメントが子どもに与える心理的影響とは?
「マルトリートメント」とは、子どもへの虐待やネグレクトなど、心や体を傷つける不適切な育て方を指すことは先にも紹介をしました。ここでは、さらに心理的影響として、特に「子ども」の心の発達や人間関係に与える深刻な影響について紹介をしています。
①感情が安定しにくくなる
いつも怒鳴られたり無視されたりして育つと、子どもは不安や怒りをコントロールできなくなることがあります。 些細なことでも怯えたり、逆にすぐに怒ったりするようになります。
②自分に自信が持てなくなる
「お前なんかダメだ」と言われ続けた子どもは、「自分は価値のない人間だ」と思い込むようになります。その結果、自信が持てず、人との関わりを避けるようになります。
③人を信じられなくなる
親や身近な大人から傷つけられると、「人は怖い」「どうせ裏切られる」と感じやすくなり、人間関係に悩みやすくなります。
④心と体がストレスで疲れやすくなる
マルトリートメントを受けた子どもは、体の中でストレスホルモンが多く出続けます。そのため、いつも緊張していたり眠れなかったり、体調を崩しやすくなることがあります。
⑤問題行動につながることも
心が傷ついた子どもは、自分の感情をうまく出せずに、暴力・非行・依存症などの形で現れることもあります。また、低学年では、多動行為や、お友達とのトラブルの多さなどを特徴とした傾向を示すこともあります。

青年期〜成人期にあらわれるマルトリートメントの影響
マルトリートメントは子供への心理的な影響だけではなく、大人になってからも、大きな影響を及ぼしてしまいます。
自尊心が低くなる
「自分なんて価値がない」「どうせ失敗する」といった思い込みを持ちやすく、進路選択や人間関係に消極的になることがあります。
対人関係がうまくいかない
人を信じるのが怖い、過度に依存したり逆に極端に距離をとったりするといった「人間関係」における対人的な距離への支障、さらには家族や子供への「愛着」に関連した影響が出てしまうことがあります。
感情や衝動のコントロールが苦手
ちょっとしたことでキレてしまう、落ち込みから抜け出せない、という自分の感情をうまくコントロールできず、感情に大きく飲み込まれた行動や体調状態になりやすく、時には自傷や依存行動(アルコール・ギャンブルなど)に進んでしまうこともあります。
うつ病や不安障害、PTSDのリスクが高まる
過去の傷つき体験が、心の深いところでトラウマとして残り、大人になってから「うつ病」「不安症・不安障害」「PTSD」など心の病として表れることがあります。

「世代間連鎖」としてのマルトリートメント
厄介なことは、マルトリートメントは世代を超えて連鎖するという事実であり、大変重大な支障となりえます。自分が親になったときに「どう育てていいか分からない」「また同じことをしてしまうのでは」と悩む人も多く、虐待への連鎖につながってしまうこともあります。また、「子供を持つことが怖い」「自分は立派な親になれるか心配」といった認知面や価値観への影響を及ぼしてしまい、家族やパートナーとの関係について悩んでしまう方も少なくありません。
これは特別なケースではなく、心理学では「世代間連鎖」として多くの事例が確認されています。
「世代間連鎖としてのマルトリートメント」は、心理学・福祉の現場で非常に重要視されるテーマです。これは、親自身が受けた不適切な育てられ方(マルトリートメント)が、次の世代の子どもにも繰り返されてしまうという現象です。

なぜマルトリートメントは連鎖するのか?
マルトリートメントが連鎖する背景について見てみましょう。
育てられた方法しか知らないから
親自身が「叩かれて育った」「無視されて育った」「親から愛された記憶がない」という経験をしていると、それが「普通の育て方」だと思い込んでしまいます。
すると、自分が親になったときに、無意識に同じような関わり方を子どもにしてしまうのです。
感情調整が苦手なまま大人になる
マルトリートメントを受けて育った人は、自分の感情をどう扱えばいいか分からず、イライラや不安をそのまま子どもにぶつけてしまうことがあります。また子供が表出する感情面について、どう受け止めていいのかわからないという方も多くいらっしゃいます。
愛着の問題が引き継がれる
安心できる親子関係(愛着)が育たなかった人は、自分が親になっても、子どもとどう関係を築けばいいのか分からないまま悩むことがあります。子供とどう関わったらよいのか、ということで悩んでしまうことで、その結果、知らず知らずのうちに、希薄な関わり方や、過度に介入した関わりなどを選択してしまっていることも少なくありません。

連鎖を断ち切るには?
連鎖は運命ではありません。正しい知識や支援があれば、断ち切ることが可能です。適切なサポートや教育に触れることが必要不可欠でもあります。
また、特にパートナーや支えてくれる方からの支援はとても大きく、自分が感じることを相手に語ったり、自分以外の人の意見や感情の変化を聞いてみることで、次第に自分の感情や行動面を客観視するきっかけにもつながります。
自分の育ちを見つめ直す
「自分はどう育てられたのか」「それは本当に望ましい関わり方だったのか」と振り返ることが第一歩です。また、その振り返るきっかけとして、パートナーや身近な人だけではなく、心理士や医師などの心の専門家に頼ってみることも大切です。
子育てについて学ぶ
最近では「トリプルP」「愛着形成講座」「ペアレント・トレーニング」など、科学的根拠に基づく子育て支援プログラムが用意されています。
支援を受ける勇気を持つ
親自身がカウンセリングや支援機関につながることで、感情のコントロールや親としての不安を少しずつ整理できます。また、そのような同じ悩みを抱いている方が集まる場面で、お互いの経験や悩みを共有してみることも、時として感情の整理やコントロールにつながります。

私たちにできること「見守る目」「つながる意識」
マルトリートメントを防ぐためには、「親の努力」だけに任せるのではなく、社会全体で支える視点が大切です。一人ひとりが「見守る目」と「つながる意識」を持つことが、マルトリートメントのない社会をつくる第一歩になります。
- 子育て家庭への理解と支援
- 子どもの発達についての情報提供を行い保護者のイライラを緩和
- 虐待に気づいたときの通報や相談(児童相談所189)
- 地域や学校、医療機関などの連携体制の強化
- 親支援プログラム(例:トリプルP、ペアレンティング講座)の活用
まとめ
マルトリートメントの概要、なぜ問題なのか、心理的な影響、私たちにできることなどについてお話ししました。
子育ては決して「当たり前のこと」ではありません。ときに孤独やプレッシャーに押しつぶされそうになることもあるでしょう。だからこそ、親もまた支えられるべき存在であり、学び合って助け合う社会が必要です。マルトリートメントの理解は、単なる「虐待防止」ではなく、すべての親と子どもの尊厳を守ることにつながるのです。
