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『ボンディング』パート2

ボンディング / アタッチメント理論

公開日:2025.04.24更新日:2025.08.30

ボンディングについて

ボンディングは、一朝一夕で築かれるものではなく、継続的な関わりと信頼の積み重ねによって育まれます。パート1では、一貫したポジティブで愛情あふれたかかわりが大切なことを具体例を挙げてお話ししました。パート2では、ボンディングについてその形成の阻害要因とボンディング不足による影響について解説します。

ボンディング形成の阻害要因

ボンディングが形成されにくくなる要因には、環境的・心理的なものがあります。これらが続くと、愛着不安や対人関係のトラブルにつながることもあります。具体的にどのような阻害要因があるか見てみましょう。

身体的接触の不足

乳児期のスキンシップ不足は、「安全基地」(安心できる存在)を確立できない原因となり、不安定な愛着を形成します。大人でも、ハグや手をつなぐなどのスキンシップが不足すると、親密さを感じにくくなる傾向です。

一貫性のない関わり(不安定な養育態度)

「あるときは優しく、あるときは冷たくする」といった関わり方は、ボンディングを妨げます。特に幼少期に「無視されるかもしれない」「愛されるかどうかわからない」という状況が続くと、不安型愛着の原因となる可能性があります。

過度なストレスや心理的負担

親が極度にストレスを抱えていると、子どもと向き合う余裕がなくなり、ボンディングが弱まるとされています。夫婦関係の不安定さ、貧困、精神的な病気(うつなど)も影響する可能性があります。恋愛や友人関係でも、相手にストレスを感じ続けると、関係が冷める要因になるでしょう。

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ネグレクトや虐待

無視、極端な放置、暴力などの虐待行為は、愛着形成を妨げ、ボンディングが築かれにくくなります。幼少期に愛着がうまく形成されなかった場合、大人になってからの人間関係に影響を及ぼすことがあります(回避型・不安型愛着スタイルなど)。

長期間の分離

入院、親の仕事での長期出張、離婚などで親子が長期間離れると、ボンディングが弱まりやすい。ただし、頻繁なコミュニケーション(手紙、ビデオ通話など)で部分的に補うことは可能です。

コミュニケーションの欠如

無関心な態度、会話の少なさ、表情の乏しさは、心理的距離を生むと考えられています。例えば、夫婦間や親子関係でも、相手が話しかけてもスマホを見ながら適当に返事をするような態度が続くと、ボンディングが低下するでしょう。

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ボンディング不足による影響

再び、親子のボンディングを取り上げてみましょう。親子間のボンディングが不足すると、子どもの情緒の安定、社会性の発達、精神的・身体的な健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に幼少期の愛着形成が不十分だと、大人になってからの人間関係や自己肯定感にも悪影響を与えます。

情緒の不安定化

親子のボンディングが不足すると、子どもは安心感を得られず、不安やストレスを抱えやすくなります。具体的には、親が無関心で関わりが少ないと、子どもは不安を抱えやすく、些細なことで情緒不安定になりやすいのです。

  • 感情のコントロールが苦手になる(些細なことで怒る、泣く)
  • ストレス耐性が低くなる(困難に直面するとすぐに諦める)
  • 分離不安が強くなる(親から離れることに強い不安を感じる)

信頼関係の構築が難しくなる

親子間のボンディングが不足すると、基本的な信頼感が育たず、親子や家族以外でも人間関係を築くのが苦手になる可能性があります。具体的には、幼少期に十分な愛情を受けられなかった子どもは、大人になってからも恋愛や友情での信頼関係を築くのが難しくなるといえるでしょう。次のような傾向が考えられます。

  • 人を信用しづらくなる(裏切られるのではないかと常に疑う)
  • 適切な距離感を取るのが難しくなる(過度に依存する or 過度に距離を取る)
  • 友人・恋愛関係に影響を与える(親密な関係を築くことを避ける、または依存しすぎる)

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自己肯定感の低下

親子のボンディングが不足すると、子どもは「自分は愛されていない」「価値がない」と感じるようになります。例えば、親があまり褒めなかったり関心を示さなかったりするような環境で育つと、子どもは自己評価が低くなり、チャレンジ精神が育ちにくくなる傾向があります。

  • 自分に自信が持てない(何をやっても「どうせ自分なんて」と思う)
  • 過度に他人の評価を気にする(親からの愛情が不足していたため、他者に認められようと必死になる)
  • 挑戦を避けるようになる(失敗を恐れて行動できなくなる)

問題行動の増加

ボンディング不足の子どもは、親の関心を引こうとして問題行動を起こしやすくなります。具体的には、親に構ってもらえない子どもは、わざと問題行動を起こして親の関心を引こうとすることがあります。

  • 反抗的な態度をとる(意図的にルールを破る、親の言うことを聞かない)
  • 攻撃的になる(他者を傷つける言動が増える)
  • 無気力・引きこもりになる(「どうせ誰も自分を気にしていない」と感じる)

精神的・身体的な健康への悪影響

親子間のボンディング不足は、子どものメンタルヘルスや身体の健康にも悪影響を及ぼします。例えば、親の愛情が不足すると、子どもは慢性的なストレスを抱え、精神的に不安定になりやすい傾向です。

  • ストレスホルモン(コルチゾール)の増加することによって、 免疫力が低下し病気にかかりやすくなる
  • うつ病不安障害のリスクが高まる
  • 摂食障害や睡眠障害が起こる可能性がある

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大人になってからの影響(愛着スタイルの形成)

ボンディング不足は、子どもが大人になってからの人間関係にも大きな影響を与えます。心理学者ボウルビィの愛着理論によると、幼少期の親子関係がその後の愛着スタイルを決定します。具体的には、親との関係が不安定だった子どもは、大人になってからも恋愛で不安を感じやすく、相手に過度に依存する可能性があると考えられています。

  • 安定型➡幼少期に愛情をしっかり受けた人は、適切な距離感で人と関われる
  • 不安型➡愛情が不安定だった場合、相手に過度に依存しやすい
  • 回避型➡ ボンディングが不足すると、人と深く関わるのを避けるようになる

学業・キャリアにも影響を及ぼす

親子のボンディングが不足すると、学習意欲や将来のキャリア形成にも悪影響を及ぼします。例えば、親との関係が冷たいと、子どもは「頑張っても誰も認めてくれない」と感じ、学習意欲が低下するといった傾向があります。

  • 努力する意欲が低くなる(「どうせやっても無駄」と思いやすい)
  • 周囲との協力が苦手になる(チームワークが苦手、対人関係にストレスを感じる)
  • 長期的な目標を持ちづらくなる(未来に希望を持ちにくい)

まとめ

パート1ではボンディングの意味やその形成過程、心理学的背景、ボンディング形成の促進要因、パート2ではボンディング形成の阻害要因、ボンディング不足による影響について解説しました。ボンディングは、人との関係を深め、安心感や信頼を築くために欠かせない要素です。日々の小さなコミュニケーションや共感、思いやりの積み重ねが、強い絆を生み出しやすくなります。

【参考文献・引用文献】

1.日本助産学会 「助産用語特別検討委員会案」

https://www.jyosan.jp/uploads/files/journal/josanyougo.pdf

2.精神経誌2002第124巻別冊

https://fa.kyorin.co.jp/jspn/guideline/kG108-113_s.pdf

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など