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Hidamari Kokoro Clinic
突然こみ上げる涙、止まらない感情の波と「ココロの異変」とは
大人の発達障害 / メンタルケア / 双極性障害 / 心理面・思考 / うつ病
公開日:2025.06.16更新日:2025.06.16
[ Index ]
突然こみ上げる涙と、感情の波について
- 「理由もなく泣いてしまう」
- 「小さなことに過剰に反応してしまう」
- 「感情の浮き沈みが激しく、自分でも制御できない」
こうした訴えは、心療内科や精神科を受診される方に非常に多く見られます。
感情の起伏が激しい状態は、日常的には「情緒不安定」と表現されますが、背景には心の病気やストレス過多の状態が潜んでいることも少なくありません。単なる性格の問題と片付けず、状態の正確な理解が必要です。
医学的には「情緒不安定」という診断名はない
「情緒不安定」という表現は一般的に使われますが、医学的には正式な診断名ではありません。ただし、これは症状のひとつとして非常に重要であり、診察の現場では診断や治療の判断材料として重視されます。
具体的には、以下のような兆候が「情緒不安定」と呼ばれる状態に含まれることがあります
- 理由のない涙や怒りが突発的に出る
- 気分の変化が極端で、自覚しにくい
- 周囲の言動に過敏に反応する
- 自己評価が急激に変動する
- 衝動的な言動が増える
このような感情の乱れは、脳の働きやストレス処理能力、身体的な状態などの影響を受けている可能性があります。
背後に潜む心の病気や特性
感情のコントロールが難しくなる状態の背景には、以下のような疾患や心理的要因が関与している場合があります。
うつ病・抑うつ状態
涙もろさや焦燥感、些細なことで落ち込むといった感情の不安定さが現れることがあります。典型的な「気分が沈む」だけでなく、怒りっぽさが目立つケースもあります。
双極性障害
躁状態と抑うつ状態が交互に出現する病気です。軽躁状態では気分が高揚し、自己中心的になったり、怒りの爆発が見られることもあります。周囲とのトラブルを繰り返しやすい傾向があります。
境界性パーソナリティ障害(BPD)
感情が瞬間的に変化しやすく、人間関係が不安定になる傾向があります。自分の価値や他人への評価が極端に変動し、「感情のブレーキがきかない」と感じることが特徴です。
月経前不快気分障害(PMDD)
女性ホルモンの変化に伴い、月経前に強い不安・イライラ・涙もろさが出現することがあります。周期性のある感情の乱れは、PMDDの可能性を考えるべきサインです。
ADHD・ASDなどの発達特性
刺激への過敏さや認知の偏りから、日常の小さなストレスに対する反応が大きくなり、感情が爆発的に噴き出すことがあります。「感情の整理が苦手」という背景も絡んでくることは軽視できません。
身体の不調が感情に影響することも
情緒不安定な状態は、心の病気だけでなく、身体的な要因によって引き起こされることもあります。特に以下のような状態が関与しているケースがあります
- 睡眠の質の低下・睡眠不足
- 更年期やホルモン変化(例:甲状腺機能異常)
- 栄養不足(特に鉄・ビタミンB群の欠乏)
- 慢性疲労や身体の痛み
こうした場合、心療内科・精神科だけでなく、内科的なアプローチも必要となることがあります。
「情緒が不安定」=「弱い」ではない
感情の不安定さを「自分の甘え」「精神的に弱いから」と考えてしまう方は少なくありません。しかし実際には、神経系や脳の働きが限界に近づいていることのサインである場合も多いのです。
以下のような背景が積み重なることで、感情のコントロールに必要な機能が一時的に低下してしまいます
- 終わりのない情報とタスクにさらされる毎日
- 人間関係でのストレス(職場・家庭)
- 完璧主義や過度な責任感による自己圧力
- 慢性的な疲労や睡眠障害
つまり、情緒の不安定さは、心身への過剰な負荷が可視化された状態と捉えるべきです。
心療内科での支援的内容とは
感情の波が大きくなってきた時点で医療機関を受診することには大きな意味があります。心療内科・精神科では、以下のような評価と支援が行われます
項目 | 内容 |
---|---|
状態の見極め | 発症時期・きっかけ・症状の経過の把握 |
心理検査 | 感情パターンや性格傾向、認知のクセを分析 |
精神療法 | ストレスや過去の経験との関連性の整理 |
必要に応じた薬物療法 | 不安や衝動性を抑える薬などの処方 |
生活習慣の見直し | 睡眠・食生活・刺激環境への介入 |
他科との連携 | 内科・婦人科での検査・治療の提案 |
症状の重さにかかわらず、早期の介入が回復を早めるポイントになります。
感情の揺れは「サイン」であって、「性格の問題」ではないことも
感情が不安定になることに対して、「気持ちの持ちよう」「我慢が足りない」といった反応が返ってくることもあります。しかし、感情の異常な動きは、脳や神経、心の疲弊からくる自然な反応であり、医学的に対処すべき対象です。
「最近、感情の浮き沈みが自分でもコントロールできない」と感じたときこそ、専門家のサポートが必要です。診察では、自覚していなかった身体の不調やストレスの影響が明らかになることも多くあります。
感情があふれてしまいすぎる前に、一度立ち止まり、医療的な視点から自分の状態を見直してみることが、次の一歩につながります。
名古屋ひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院は、名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックですお気軽にご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など