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早発性統合失調症とは|原因や診断、予後などを徹底解説します
統合失調症
公開日:2025.04.24更新日:2025.07.07
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早発性統合失調症とは|原因や診断、予後などを徹底解説します
「最近、子どもの様子がいつもと違う…もしかして統合失調症?」
小学校高学年になると、子どもの行動や心構えが変わることがあります。しかし、明らかな妄想や幻覚、意味の伝わらない話をするなど普段とは違う様子が見られると、親としては不安になりますよね。
統合失調症は適切な治療や環境のサポートを受けることで、症状をコントロールしながら学校生活を送ることも可能です。そのためにも、親が正しい知識を持ち、必要な支援を受ける必要があります。
この記事では、早発性統合失調症の症状や治療法について詳しく解説します。 正しい知識を持ち、必要なサポートを受けるための手助けになりますと幸いです。
早発性統合失調症とは
早発性統合失調症とは、18歳未満で発症する統合失調症のことです。脳の発達異常が関係し、重症化しやすい傾向があります。
この病気は、発症時期によって以下の2つに分けられます。
- 児童期発症(13歳未満):非常にまれで、重症化しやすい
- 青年期発症(13歳以上18歳未満):比較的多く見られる
また、年齢が低いほど、知能指数・記憶力・知覚運動能力などが低くい傾向だと報告されています。
発症率・男女比
早発性統合失調症の発症率は以下のとおりです。
- 児童期発症:4万人に1人
- 青年期発症:1,000人に1~2人
児童期発症は青年期発症よりも50倍ほどまれで、5歳未満で診断されることはほとんどありません。
男女比では、男児の発症率が1.67倍高く、女児よりも低年齢で発症しやすいとされています。
併発しやすい病気
早発性統合失調症は以下の疾患と併発しやすいです。
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 抑うつ障害
- 不安症
- 会話と言語の障害
- 運動障害
多くの疾患と併発するため、診断は慎重に行われます。
早発性統合失調症の原因
この病気の原因は、大きく以下の2つが考えられています。
- 遺伝的要因
- 脳の発達異常
それぞれ解説します。
遺伝的要因
遺伝的要因は以下のとおりです。
- 児童期発症の遺伝率は約80%
- 親族に統合失調症の人がいる場合、発症リスクは約8倍
また、早発性統合失調症の親の統合失調症の有病率は約8%で、成人発症の統合失調症よりも約2倍の有病率です。
脳の発達異常
脳の発達異常は以下のとおりです。
- 小脳の体積減少
- 灰白質(脳の神経細胞が密集する部分)の減少
- 白質(神経の伝達経路)の発達遅延や異常
約20年にわたる研究では、灰白質の減少は時間とともに回復することが分かっています。
早発性統合失調症の症状
早発性統合失調症の症状は、成人期に発症する統合失調症と同じ症状が生じます。[1]
- 幻聴➡実際には存在しない声が聞こえる
- 妄想➡周りが自分を攻撃していると思い込む
- 思考の混乱➡話がまとまらない、突然話題が変わる
- 意欲の低下➡何もやる気が起きない
妄想の内容は、年齢が低いほど単純で、動物やモンスターが関係することが多く、場面にそぐわない笑い方や不自然な行動も見られることがあります。
また、成人期発症の統合失調症と比べると、早発性統合失調症の子どもは社会的生きづらさを感じています。
たとえば以下のようなことです。
- 友だち付き合いが難しい
- 授業についていけない
- 言葉の発達が遅れる
早発性統合失調症の子どもは、スムーズな会話をしていても突然話を変える連合弛緩が見られたり、うまく話が伝わらなかったときに修正しようとする素振りがなかったりします。
早発性統合失調症の診断
早発性統合失調症の診断を決定づける検査所見はありません。診断は、医師が以下のような方法で総合的に判断します。
- 子ども本人や保護者への聞き取り
- 行動観察や心理検査
- 他の病気(自閉症スペクトラム症や双極性障害など)との区別
年齢の低い子どもは、早発性統合失調症以外の疾患で幻覚や言葉の遅れや現実との区別がつきにくいことがあるため、早発性統合失調症が原因で症状が生じていると明確に判断するのが難しいとされています。
症状やコミュニケーションの特徴などの経過を観察し時間をかけて診断していくため、診断には数か月~数年かかることもあるのです。
早発性統合失調症の予後
以下の要因があると、予後が悪くなる可能性があります。
- 低年齢での発症
- 発達の遅れ
- 学習症
- 低いIQ
- ADHDや素行症の併発
ある研究では、統合失調症と診断されていた子どもの3分の1は、青年期に双極Ⅰ型障害へ診断変更されていることが分かりました。統合失調症と比べると双極Ⅰ型障害の方が長期的な予後は良好とされています。
早発性統合失調症の治療法
早発性統合失調症の治療には、総合的なアプローチが大切です。
心理社会的介入
心理的介入は以下のとおりです。
- 認知行動療法
- グループスキルトレーニング
- 家族への心理教育
ある研究で、2年間の経過観察で通常の治療と比べると精神疾患の発症を遅らせたり、再発リスクを下げたりする効果高いと報告されています。
児童期の子どもへは成人期よりも薬物療法の効果が低いため、心理的介入が重要視されているのです。
薬物療法
早発性統合失調症では、第2世代の抗精神病薬(セロトニン-ドパミン拮抗薬)が有効です。早発性統合失調症に有効な第2世代の抗精神病薬は、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、クロザピンなどがあり、とくに副反応に優れています。
まとめ
早発性統合失調症は、18歳未満で発症する統合失調症であり、とくに児童期発症は重症化しやすい傾向があります。
- 原因➡遺伝的要因や脳の発達異常
- 症状➡幻聴・妄想・思考の混乱・意欲の低下
- 診断➡時間をかけて慎重に行われる
- 治療➡心理社会的介入と薬物療法
適切な治療とサポートを受けることで、子どもが社会生活を送ることも可能です。気になる症状がある場合は、ひだまりこころクリニックへお気軽にご相談ください。
参考文献
[1] 統合失調症|こころもメンテしよう 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/docs/know_03_pdf.pdf