地下鉄名古屋駅 徒歩1分
大人のためのメンタルクリニック
クリニックブログ
Hidamari Kokoro Clinic
自己調整学習について
心理面・思考
公開日:2025.02.06更新日:2025.09.21
自己調整学習について
近年、自己調整学習は教育心理学や学習理論で注目されています。この学習方法は、自律的で効果的な学びを促進し、特に長期的なスキルや知識の獲得に重要です。今回は、自己調整学習について、自己調整学習の主要な要素、自己調整学習の段階を繋ぐサイクル、自己調整学習の重要なスキルやメリットなどについてお話しします。
自己調整学習ってなに?
自己調整学習とは、学習者自身が目標を設定し、その達成に向けて計画を立て、学習方法を選択し、進捗を評価・調整しながら学びを進めるプロセスのことです。自分の行動、思考、感情を管理しながら主体的に学ぶ力を育むことを目的としています。

自己学習の具体例
学習計画を立てて進捗をチェックするアプリを利用する
学びたい内容を短期目標(1週間以内)と長期目標(半年後)に分けて管理する
学んだ内容を簡単なテストやクイズ形式で復習する
学習日記をつけて、振り返りを習慣化する
自己調整学習の主要な要素
自己調整学習は、計画段階、実行段階、振り返り段階の3つの段階に分けられます。それぞれについて解説します。
計画段階
この段階では、学習を始める前に目標を設定し、戦略を選択し、学習の準備を整えます。このプロセスは学習の成功を左右する重要なステップです。
目標設定
単に「数学を勉強する」ではなく、「今週中に二次方程式を解けるようになる」など、明確で達成可能な目標を設定します。また、短期的な目標を設定することで、達成感を得てモチベーションを維持しやすくなります。同時に長期目標を念頭に置くことで、学習全体の方向性を確保します。
動機づけ
自分の能力に対する信念が学習への積極性に影響します。「できる」と思える具体的な目標や段階的な成功体験を設けることが重要です。目標達成による利益や成果を明確に意識することで、努力を続けやすくなります。
戦略選択
教材の選定、時間配分、学習方法(例:マインドマップ、記憶術)など、適切な学習戦略の選択を計画します。必要な教材やツール(参考書、アプリなど)を用意します。
実行段階
計画段階で決めた目標や戦略に従って学習を進める段階です。この段階では、学習中の自己管理が重要です。
自己監視
学習の目標に対して、どの程度進んでいるかを確認します。例えば、タイマーを使って学習時間を測ったり、問題を解いた数を記録するなど。自分が本当に理解しているかを確かめる
ために、自分で問題を作ったり、友人に説明するなどの方法を使います。
集中力の維持
集中できる静かな場所を選んだり、スマホの通知をオフにするなど、集中を妨げる要因を減らします。ポモドーロ・テクニック(25分間の集中作業と5分間の休憩を繰り返す時間管理術のこと)のような手法を使い、集中と休憩を適切に交互に取り入れます。
柔軟な戦略の実行
学習中に問題が発生した場合、計画を柔軟に変更します。例えば、理解が難しい場合は、オンラインチュートリアルや他の教材を利用するなど、目標を達成するために、どうしたらよいかを考える必要があります。
振り返り段階
学習後に結果を分析し、次回以降の学習に活かすためのプロセスです。
自己評価
学習目標に対してどの程度達成できたかを評価します。例えば、「二次方程式の問題を90%正解できた」などです。自分の結果を目標や基準と比較して、満足できるレベルに到達して
いるかを確認します。
原因分析
どの行動や戦略が成功に結びついたかを特定します。うまくいかなかった場合、その原因を分析します。例えば、「学習計画が甘かった」「集中力が切れやすかった」など。
調整
前回の振り返りを基に、新しい計画を立てます。例えば、次回は「復習の時間を増やす」「分からない箇所を早めに質問する」など。
自己調整学習の段階を繋ぐサイクル
これらの3つの段階は互いに連動し、循環することで自己調整学習が進化していきます。たとえば、振り返り段階で得た洞察は次回の計画段階にフィードバックされ、より良い学習サイクルを形成します。この循環を意識することで、学習効果はさらに高まります。最初は難しく感じるかもしれませんが、徐々に自動化され、より自然に進められるようになります。
自己調整学習の重要なスキル
以下のスキルが自己調整学習を支えます。
メタ認知
自分の思考や学習プロセスを意識する能力が大切です。計画し、学習中には自分が目標に向かっているかを確認します。学習が終わった後に、目標の達成度や学習の効果を振り返ります。
時間管理
効果的に時間を使い、計画に沿って学習を進める能力です。目標を設定して、何をどの順番で実行するか、スケジュールを決めで学習を進めていきます。無駄な時間を見極め、学習時間を確保することも大切です。
自己効力感
自分が成功できると信じる感覚のことです。成功体験を積み重ねて、自信をつけていきます。また、目標を達成したときの自分へのご褒美を決めて、モチベーションを保ちます。また、学習する目的や意義を思い出し、やる気を維持することも大切です。
学習戦略
目的に応じて適切な方法を選び、柔軟に適用する能力です。学習したことをわかりやすく整理したり、理解を深めたりします。繰り返し行うことも重要です。また、自分で問題を作ったり模擬試験を受けたりして理解を深めていきます。
自己調整学習のメリット
自己調整学習のメリットは、自分に合った学び方を選ぶことで効率的に学ぶことができます。また、他人に頼らずに自分で問題を解決する能力が高まり、学習目標を明確にすることで意欲を保ちやすいでしょう。学んだことを他の分野や場面に応用しやすくなります。また、学習の効率性だけでなく、学びの楽しさや自己成長を実感できるようになります。
まとめ
今回は、自己調整学習について、自己調整学習の主要な要素、自己調整学習の段階を繋ぐサイクル、自己調整学習の重要なスキルやメリット、具体例などについてお話ししました。自己調整学習をマスターすることで、学ぶ力だけでなく、人生全般にわたる問題解決能力や柔軟性も向上します。この方法を日常的に実践することで、学びの質を大幅に高めることが可能です。
【参考文献】
文部科学省「令和の日本型学校教育における 『個別最適な学び』『協働的な学び』についての概念的考察」
https://www.mext.go.jp/content/20201023-mxt_kyoiku01-000010203_2.pdf
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など







