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場面緘黙とは?選択性緘黙との違いや親ができるサポートについて

場面緘黙 / 家族と家族関係について

公開日:2025.02.04更新日:2025.09.26

場面緘黙とは

人見知りや引っ込み思案などと勘違いされやすい場面緘黙。

「家ではよく話すのに外では無口に…大きくなると治るかな?」と気になりますよね。

場面緘黙(ばめんかんもく)とは、特定の状況で話すことができないことを指します。

この記事では、場面緘黙の発症年齢や原因、診断基準や親ができるサポートについて詳しく解説していきます。

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場面緘黙について

場面緘黙とは、安心できる家では話せるが学校や職場など緊張する場面で話せなくなる疾患です。[1]

社交不安障害と密接に関係していると言われています。

場面緘黙の有病率は幅広く、大まかに1,000人~数100人に1人ぐらいの割合です。[1]

選択性緘黙(せんたくせいかんもく)との違いは翻訳にあります。選択性緘黙も場面緘黙も、英語表記では『Selective mutism』です。2014年にアメリカの精神医学会が発表したDSM-5では、「選択性緘黙」と翻訳されましたが、2023年に国際疾病分類ICD-11では「場面緘黙」と翻訳されています。[2] [3]

発症年齢

場面緘黙の発症年齢は、2~5歳ごろが多いですが、小学生や中学生で発症する人もいます。低年齢で発症することもありますが、5~6歳にならないと診断は難しでしょう。[4]

また、発症のきっかけはさまざまで、入学時や進級時などの学校イベントや、転校や学校で嫌なことがあったなど特定のきっかけで発症するとは限りません。

原因

場面緘黙は本人が持っている要素と環境による要素が関係して発症すると言われています。

本人が持っている要素の例として、以下のようなことが挙げられます。

環境による要素には、話せなくなってしまう社会環境が関係してきます。

話す相手が高圧的だったり、話せなくても用事が終わってしまったりする状況もその一つとされています。

また、本人が話さなくても配慮されすぎている状況では、話す必要がなくなってしまうでしょう。そして、その状況で話す必要がなくなったり、話すことに対するハードルが上がることで場面緘黙になってしまうという場合もあるのです。

場面緘黙の診断基準

DSM-5の診断基準は以下のとおりです。[1]

他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において、話すことが一貫してできない。

B.その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。

C.その障害の持続期間は、少なくとも 1 ヶ月(学校の最初の 1 ヶ月だけに限定されない)である。

D.話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。

E.その障害は、コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

場面緘黙の治療法

場面緘黙の治療法には、以下の3つが挙げられます。[4]

  • 認知行動療法
  • 家族に対する心理教育
  • 必要に応じた薬物療法

就学前の子どもには治療的保育プログラム、学童期の子どもには個別の認知行動療法が優先的に行われています。

場面緘黙の症状は、友人関係や学校での過ごし方に深く関係するため「様子を見ましょう」はよくありません。子どもが何に困っているのか明確にし、適切な支援が不可欠なのです。

そのためには、早い時期からの適切な治療的介入が大切になります。

子どもが場面緘黙のとき親ができるサポート

病院での治療だけでなく、親は何ができるのか考えるでしょう。

ここでは子どもが場面緘黙の場合、親ができるサポートについて紹介します。

困っていることを聞く

場面緘黙の子どもは、自分の意思とは関係なく社会場面で話すことが難しくなります。そのため、受診した際に自分の困っていることを話せないことがあるのです。[1]

子どもが安心して話せる家庭内で親が「学校で話せなくて、どんなことに困ってる?」「お友達とは離せてる?」など実際に子どもが困っていることを聞いてみましょう。

場面緘黙で困ることは一人ひとり違います。困っていることに対して必要な支援をしていくためには、子ども自身が何に困っていてどう変えたいのかという思いを尊重することが大切なのです。

環境を整える

原因や困っていることは人それぞれ違いますが、場面緘黙の子どもに共通する対応が2つあります。対応方法は下記の2つの環境を整えることです。[1]

  • 安心できる環境
  • 力が発揮できる環境

場面緘黙の子どもは、家庭内の安心できる環境では話したり自分らしさを発揮できたりします。だからといって、家でトレーニングをして外でも話せるように練習するのではありません。

「もともとできていることを他の環境でもできるようになる」を目指すことが大切です。

ただし、安心できる環境は一人ひとり違います。たとえば、一緒にその日のスケジュールを確認して見通しを立てやすくしたり、先生にお願いして手助けを増やしてもらったりするのもよいでしょう。

子どもの安心できる環境を整えるためにも、医療機関と一緒に考えていくことも大切です。

【まとめ】場面緘黙には正しい対応が大切

最近の研究で、場面緘黙の症状には適切な対応でよくなることが分かってきました。治療には本人や家族の協力は不可欠です。

話さなくても困らない工夫だけでなく、安心して話せるような支援を組み立てたり取り組んでいくことも大切です。

場面緘黙を人見知りや恥ずかしがり屋で終わらせるのではなく、一人ひとりにあった支援が大切であることも紹介させていただきました。

【参考文献】

[1] Ⅱ. 分担研究報告 場面緘黙症の実態把握と支援のための調査研究|中村 和彦

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf

[2]ICD-11新病名草案におけるSelective mutism の訳語に「場面緘黙」が採用されたことについて|日本不安症学会

https://jpsad.jp/information/ICD-11.html

[3]国際疾病分類ICD-11(2023)をリリース 公益財団法人 日本WHO協会

国際疾病分類ICD-11 (2023) をリリース

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など