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抗がん剤使用中に向精神薬を使うことはある?心のケアも大切にしよう
メンタルケア / 心理面・思考 / お薬
公開日:2025.04.24更新日:2025.07.09
[ Index ]
抗がん剤使用中に向精神薬を使うことはある?心のケアも大切にしよう
- 「がんはいつ治るのかな…」
- 「副作用はいつまで続くんだろう」
- 「不安で眠れなくてつらい…」
このように、がん治療中は先の見えない不安や、抗がん剤の副作用が強く心が疲れてしまうことがあります。そのまま過ごしていると、さらに気持ちが沈んでしまうでしょう。
少しでも心穏やかに過ごせるように、向精神薬を使用することもあります。
心の負担を減らしながら生活の質(QOL)を保つことが大切です。
この記事では、抗がん剤治療中に向精神薬が検討される理由や、どのような症状に処方されるのか、向精神薬を使用する注意点を解説します。
あなたの不安が少しでも軽くなるきっかけになりますと幸いです。
抗がん剤使用中に向精神薬を検討されることはある
抗がん剤治療は、がん細胞を攻撃したり、がん細胞の増殖を抑えたりする大切な治療法です。[1]
しかし、その一方で身体への負担が大きく、さまざまな副作用が現れることがあります。体調の変化だけでなく、精神的な不調を感じる方も少なくありません。
抗がん剤の副作用には以下のものが挙げられます。
- 脱毛
- 吐き気、嘔吐
- 下痢、便秘
- 味覚の変化
- 皮膚障害
味覚の変化により、食べのもの味が違って感じたり匂いが気になり食欲がわかなくなったりします。皮膚障害では、吹き出物ができたり乾燥によるかゆみが生じたりします。慢性的なかゆみはストレスとなり、生活の質(QOL)の低下につながるのです。
このように、抗がん剤の副作用が長く続くことで、不安や落ち込みで眠れなくなることは、めずらしくありません。
がん治療を行いながら、治療の不安や副作用に耐えることは大きな負担になります。そのため、主治医から向精神薬の使用を提案されることがあるのです。
向精神薬は、心の負担をやわらげ、少しでも治療を前向きに続けられるようにするための選択肢のひとつです。
もし医師から向精神薬を勧められても「わたしは精神的におかしいのかな?」と責めてしまう必要はありません。
抗がん剤によって生じている心の負担を軽くし、あなたの生活を心穏やかにするために勧められたと考えてください。身体の不調を整えるために薬を使うことと同じように、心の状態を安定させることも大切な治療です。
向精神薬を使用するがん症状
抗がん剤治療中に向精神薬を勧めれるのは、以下のような症状があるときです。[2]
- 不安が強い
- 夜間眠れない
- やる気が起きない
がん治療の緩和ケアでも向精神薬を用いることはよくあります。以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
不安感が強い
がんと診断された時点で大きな不安が押しよせてきます。がんの治療が進んでも不安は大きく、落ち着かない日々が続くでしょう。毎日不安を抱えて生活していると心穏やかに過ごすことが難しくなります。そのようなときは、向精神薬の一種である抗不安薬を使用し、心が穏やかになるようなサポートを行うのです。
夜間眠れない
抗がん剤治療中は、治療に対する不安や副作用により、夜間眠れなくなることがあります。睡眠不足が続くと日々の疲れが溜まったり、身体に不調をきたしたりするのです。そのため、睡眠導入剤を用いて夜間ゆっくり休めるように促します。
やる気が起きない
長く続くがん治療に、不安や悲しみ、絶望感を抱えることがあります。このような気持ちが長く続くと抑うつ気分になり、何に対してもやる気がでなくなり日常生活にも支障をきたします。
そのようなときは、抗うつ剤を使用して心の回復を図ります。がんに打ち勝つためにも心を元気にする必要があるのです。
抗がん剤と向精神薬の関係
抗がん剤治療中に向精神薬を使用すると、問題ないこともありますが組み合わせによっては効果が薄れたりがんの治療への影響に関係したりすることもあります。
たとえば、フルオロウラシル系抗がん剤と向精神薬の併用は、現在では明らかな問題点は報告されていません。しかし、ホルモン療法として用いられるタモキシフェンは、うつ病や社会不安障害などで用いるパロキセチンの併用は、併用していない患者さんより乳がんの予後が悪くなるという報告もあります。
このように、抗がん剤をと向精神薬を併用するときは、適切な医師の指示のもと服薬することが大切です。
抗がん剤治療中に向精神薬を使用する注意点
向精神薬は、心の不調をやわらげるための大切な薬ですが、抗がん剤治療中に使用する際にはいくつかの注意点があります。
- 主治医としっかり相談する
- 副作用を確認しながら使用する
- すぐに効果を感じられないこともある
注意点を知り、安心して向精神薬を使用しましょう。
主治医としっかり相談する
抗がん剤と向精神薬の組み合わせによっては、相互作用を起こすことがあります。
そのため、医師にしっかりと相談し適切な薬を処方してもらいましょう。
また、向精神薬を急にやめると体調が悪化するものがあります。[3]
症状が落ち着いたとしても、自己判断で中止するのはやめましょう。向精神薬は、始めるときもやめるときも医師と相談することが大切です。
副作用を確認しながら使用する
向精神薬を服用すると副作用が生じることがあります。たとえば、イライラしたり足がソワソワしたりなどさまざまです。[4]ときには、日常生活に支障がでることもあります。抗がん剤も使用している場合は、少しでも違和感があればすぐに医師に相談しましょう。
すぐに効果を感じられないこともある
向精神薬は、効果がすぐに現れないものもあります。たとえば、抗うつ薬は数週間かけて少しつ効果が現れることが一般的です。[5]そのため、「飲んでも何も変わらない」と自己判断で中止することはやめましょう。
すぐに変化を感じられなくても焦らずに続けることが大切です。
まとめ
抗がん剤治療含めてがんの治療においては、心にも身体にも大きな負担がかかります。だからこそ、つらい気持ちをひとりで抱え込まず、必要なサポートを受けることが大切です。
抗がん剤治療中の向精神薬の使用は、生活の質(QOL)の回復を図る手段にすぎませんが、健やかな心は、がん治療を乗り越えるための大きな力になります。
薬の服用に不安があるならば、まずは主治医や看護師に相談しましょう。あなたが少しでも安心して過ごせるように、病状や症状に応じて、精神科やメンタルクリニック,心療内科と連携することも大切なケアです。
参考文献
[1]抗がん剤(薬剤部)|大阪医療センター
https://osaka.hosp.go.jp/cancer/shinryouannnai/kouganzai/index.html
[2]II.がん患者の症状の緩和 4.向精神薬の使い方|久保 千春
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/85/12/85_12_2027/_pdf]
[3]抗精神病薬の減薬(医師)|COMHBO地域精神保健福祉機構
[4]重篤副作用疾患別対応マニュアル|平成22年3月(令和3年4月改定)厚生労働省
https://www.pmda.go.jp/files/000240113.pdf
[5]うつ病の薬物療法|国立病院機構
https://kumamoto.hosp.go.jp/files/000208379.pdf