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ポジティブ心理学について
心理面・思考
公開日:2025.02.06更新日:2025.09.20
ポジティブ心理学について
ポジティブ心理学という言葉をよく耳にします。幸せという言葉は、ポジティブなイメージを持ちますよね。ポジティブ心理学は、人の「幸せ」に焦点を当てる心理学の一分野です。簡単に言うと、「どうすればもっと幸せに生きられるか」を科学的に研究する学問です。しかし、ただ単にポジティブ思考になればよいというわけではありません。今回は、ポジティブ心理学について、ポジティブ心理学が重要視していること、ポジティブ心理学の具体例や中心的となる柱についてお伝えします。
ポジティブ心理学ってなに?
普通の心理学が「心の病気や問題を解決する」ことを目指してきたのに対して、ポジティブ心理学では「健康な人がもっと幸せで、充実した人生を送るためにはどうすればいいか」を探求します。1990年代後半に心理学者マーティン・セリグマンが提唱者の一人として広め、学術研究や実践が活発に行われるようになりました。
ポジティブ心理学は、単なるポジティブ思考とは異なるものです。伝統的な心理学が主に「問題」や「病気」の解決に重点を置いてきたのに対し、ポジティブ心理学は「人間がより良い生活を送るためにはどうすればよいか」というポジティブな側面を探求します。

ポジティブ心理学が重要視していること
ポジティブ心理学が重要としていることについて解説します。
幸せの正体を探る
「幸せとは何か?」「どうすれば増やせるのか?」ということ、楽しい気持ちや人生の意味を感じること、充実感などについて考えます。
人の強みに注目する
人にはみんな得意なこと(強み)があります。たとえば、「親切」「創造性」「感謝する気持ち」などです。それを見つけて伸ばすことで、人生がもっと良くなるという考えから、人の強みに注目します。
良い人間関係を育てる
友達や家族とのつながりは、幸せにとってとても大事です。ポジティブ心理学は「どうすれば良い関係を築けるか」について考えます。
逆境に強くなる方法を学ぶ
ストレスや困難を乗り越える力(レジリエンス)を高めることで、どんな状況でも前向きに幸せをとらえます。
日常をもっと楽しくする方法を提案
感謝の気持ちを持つ、好きなことに没頭する(フロー体験)、目標を達成する喜びを味わうなど、毎日をポジティブにする方法を探ります。

ポジティブ心理学の例
ポジティブ心理学の具体例を見てみましょう。
感謝日記を書く
毎日「感謝していること」を3つ書くだけで、ポジティブな気持ちが増えます。例えば、「今日天気が良かった」「友達が親切にしてくれた」「家族と楽しく話せた」などです。
得意なことを活かす
自分が得意なこと(強み)を見つけ、それを仕事や趣味で使う。例えば、「人を笑わせるのが得意なら、それを職場で活かす」などです。
没頭できることを見つける(フロー体験)
自分が没頭できることを見つける。例えば、「絵を描く」「スポーツをする」「料理をする」など、好きな活動に集中している時間を増やすことなどです。
ポジティブ心理学の中心的となる柱
ポジティブ心理学が大切にしている中心となる柱について、詳しく解説します。それぞれのテーマが「どうすれば人が幸せに生きられるか」を探求する重要なポイントになっています。
幸福感
「幸福感」は、ポジティブ心理学の中でも中核となるテーマです。幸福感が高い人はストレスに強く、人生の満足度が高いだけでなく、健康や社会的成功にもつながることが研究で示されています。幸福感には2つの側面があります。
快楽的幸福
喜びや満足感など、ポジティブな感情を多く体験することが幸福とされています。たとえば、おいしい食事を楽しむ、友人と笑い合うなどです。
充実的幸福
人生に意味や目的を感じ、自分らしさを発揮することによる深い満足感を指します。たとえば、困っている人を助けたり、自分の目標を達成することです。
強みと美徳
人間の「強み」に注目し、それを活かすことで幸福感を高めようとします。自分の強みを知り、それを日常生活や仕事で活かすと、やりがいや幸福感が高まります。
強み
たとえば、「親切」「感謝」「ユーモア」「勇気」「創造性」など、自分らしさを発揮する特性のことです。これらは、誰もが持っているポジティブな要素です。
6つの美徳
強みは以下の6つの美徳に分類されます。
- 知恵:好奇心、創造力など
- 勇気: 忍耐力や活力
- 人間性:親切、愛情など
- 正義:公正さ、リーダーシップ
- 節度:謙虚さ、自制心
- 超越:感謝、希望、ユーモア
レジリエンス
レジリエンスとは、困難やストレスから立ち直る力のことです。これは幸福感を支えるために重要な能力です。レジリエンスが高い人は、人生の困難に対しても前向きに対処でき、幸福感を維持しやすいでしょう。レジリエンスを高める方法としては、次のことが挙げられます。
- サポートを求める:家族や友人とつながりを持つ
- ポジティブな側面を見る:失敗や挫折から学びを得る
- 自己効力感を育む:自分の行動が状況を改善できると信じる
フロー体験
フローとは、ある活動に深く没頭し、時間を忘れるような状態を指します。心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱しました。フロー体験は深い満足感をもたらし、創造性や学習能力を高めます。フロー体験の特徴には次のようなことがあります。
- 活動に完全に集中している
- 時間の感覚が消える
- 自分の能力と課題の難易度が適切なバランスにある
感謝
感謝とは、周囲の人や出来事に対して「ありがたい」と思う気持ちを持つことです。感謝を日常的に実践することで、幸福感や健康状態が向上します。これは幸福感を高めるための強力な方法といえます。
感謝の効果
- ポジティブな感情が増える
- 人間関係が良くなる
- ストレスが減る
感謝を実践する方法
- 感謝日記を書く
- 感謝の気持ちを言葉で伝える
- 自分にとって大切なものを思い返す
人間関係の質
良い人間関係は、幸福感の最大の源ともいえます。信頼や共感、支え合う関係が、人生の満足感を向上させます。孤独感は幸福感を低下させるだけでなく、健康にも悪影響を与えるため、良い関係を築くことが重要です。良好な関係を築く方法は次のことがポイントです。
- 他者を理解し、共感する
- 信頼を築いていく
- ポジティブなコミュニケーションを心がける
まとめ
今回は、ポジティブ心理学について、ポジティブ心理学が重要視していること、ポジティブ心理学の具体例、中心的となる柱についてお話ししました。ポジティブ心理学を意識して取り入れることで、充実した人生を築き、幸福感を高めることができます。ポジティブ心理学は単なる理論ではなく、「より良い人生をデザインするためのツール」と考えると分かりやすいと思います。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など







