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パラフィリア症とは?種類や治療法についても分かりやすく解説
パラフィリア症
公開日:2024.09.03更新日:2025.02.02
[ Index ]
性嗜好の偏りとは
パラフィリア障害群(性嗜好障害)とは、正常な性的ふるまいから逸脱した対象や行為によって、強い性的興奮を感じ、その空想や衝動を行動に移してしまう状態のことです。
人には言えない性的興奮があるからと言って、パラフィリア障害群とは限りません。
この記事では、パラフィリア障害群の方は、どのような性嗜好の人のことを言うのか、診断基準や種類、治療法について詳しく解説していきます。
あなたがパラフィリア障害群に当てはまるのか考える参考になりますと幸いです。
パラフィリア症候群とは
パラフィリア障害群(性嗜好障害)とは、性的興奮をする空想や衝動、行動の対象や行為が無生物や小児、辱められる、相手が苦しむ様子など、一般的な性的ふるまいからかけ離れている状態のことです。
この行動を、合意のない相手にすることもあり、相手に恐怖や苦痛を与え、ときには犯罪に至ることもあります。
パラフィリア障害群の診断基準
個性的な性嗜好を持つ方は多くいますが、全てがパラフィリア障害群に当てはまる訳ではありません。パラフィリア障害群と診断されるには以下の条件が必要です。
- 行動、性的衝動や空想は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている
- 少なくとも6ヶ月以上続いている
具体的には、以下のような対象や行為が6ヶ月以上続いている状態が挙げられます。
- 小児を性対象とする
- 自分自身が辱められたい
- 嫌がる相手を触りたい
- 無意識の相手を覗き見たい
- 相手が苦しんでいる姿に興奮する
- ストッキングやハイヒールなど、無生物を対象とする
正常な性行動とパラフィリア障害群の違い
人の正常な性行動とパラフィリア障害群の性行動の違いについて、下記の表にまとめました。
正常な性行動
- 結びつきを強める
- 相互の喜びを作り出す
- 愛情を強める、生み出す
パラフィリア障害群
- 攻撃性(虐待を含む)
- 極端に一方的
- 相手を思いやる気持ちがない
パラフィリア障害群の性行動の役割は、正常な性行動の役割と違い、攻撃的であり一方的で相手に対する思いやり気持ちがないことが特徴的です。
パラフィリア障害群の種類
パラフィリア障害群の種類について詳しく解説していきます。
露出障害
露出障害とは、知らない人や警戒していない人に対して、自分の性器を見せたいという強い衝動を持ち、見せることで性的興奮を得ます。
この行動は、相手に同意がない場合が多く、相手が嫌がっていることも診断基準のひとつです。
露出障害は主に男性にみられ、相手の恐怖や驚き、嫌悪感などの反応を見て自分の男らしさを認識するという特徴があります。
フェティシズム障害
フェティシズム障害とは、性的興奮を得るための対象が、無生物の物体(フェティシズム)であることを特徴とします。
たとえば、以下のような物が挙げられます。
- 靴下
- ハイヒール
- エプロン
- ストッキング
ですが、これらの物を用いた自慰行為や、通常の性行為の一環として用いられることが多く、フェティシズムの人はパラフィリア障害群の診断基準を満たさない場合がほとんどです。
窃触障害
窃触障害とは、痴漢行為として表出します。警戒していない相手の洋服の上から性器をこすりつけることによって性的興奮を得ることを特徴としています。
電車や混雑した場所で行われることが多く、その行為でのみ性的興奮を得るのです。
小児性愛障害
小児性愛障害は、13歳以下の小児に対して6カ月間にわたる長期間、繰り返し強い性的衝動を抱きます。小児性愛者が16歳以上で、対象となる小児との年齢差が5歳以内の場合は小児性愛障害とは言えません。
小児性愛の対象は小児の知り合いで、犯罪者の調査では触られる60%が男児で、覗きや眺める対象は99%が女児という報告があります。
性的マゾヒズム障害
性的マゾヒズム障害とは、辱められたい、打たれたい、縛られたいといった行為に性的興奮を感じます。パラフィリア障害群の一種としての割合は不明ですが、オーストラリアの調査では、男性が2.2%、女性が1.3%で、男性の方がやや多いと報告されています。
同意の上で行われる性行為が多く、性的マゾヒズム障害の治療は効果なく終了するケースがほとんどです。
性的サディズム障害
性的サディズム障害とは、相手の身体や心理的苦痛によって性的興奮を得ます。軽度のサディズム的性行為は、合意の上で行われる場合が多く、通常はパラフィリア障害群の診断基準を満たしません。
しかし、同意のない場合、レイプなどの犯罪行為に発展する可能性が高く、性的な動機による殺人犯の中では、性的サディズム障害の割合が37~75%に達することが報告されています。
窃視障害
窃視障害とは、裸の人や性行為をしている人を覗き見ることで性的興奮を得る障害です。同意なく見ることで捕まることもありますが、合法的なお店で性行為を見ること自体は、窃視障害とはみなされません。
窃視障害が病的になると、窃視する機会を探すために長時間を費やし、日常生活に支障をきたします。また、窃視障害の方の多くは、性的な接触を求めていません。この障害は薬や治療プログラムでの改善が可能な場合がより高まります。
異性装障害
異性装障害とは、異性の服を着ることで性的興奮を得ます。自慰行為や性行為のときに用いられることが多く、ほとんどの異性装障害の人は診断基準を満たしていません。診断には、空想や衝動、その行動によって本人が苦痛を感じることや、他人に害を与えることが必要なのです。
パラフィリア症候群の治療法
パラフィリア障害群の治療には以下の5つがあります。
- 外部からの抑制
- 性衝動の抑制
- 精神症状の治療
- 認知行動療法
- 力動的精神療法
刑務所での拘禁は外部からの抑制にはなるものの、治療効果は期待できません。実際の生活環境の職場や家庭で、危険性がないかを評価する必要があります。
認知行動療法とは、ものの受け取り方や考え方に働きかけて気持ちを楽にする精神療法です。
力動的精神療法とは、症状や悩みの後ろに隠れている、本人も意識していないことに目を向けて改善を目指す精神療法です。
精神療法の治療効果を上げるには、治療者やセラピストとの信頼関係が重要です。患者は自分自身を受け入れ、治療者・セラピストと協力して治療に取り組むことで、症状の改善が期待できます。
まとめ
パラフィリア障害群とは、偏った性的対象や行為のことを言います。性対象が小児や合意のない相手が嫌がることなど、犯罪に繋がることも少なくありません。
診断基準に、6カ月以上続く一般的な性嗜好とかけ離れた空想や衝動が行動として現れることが条件としてあるため、診断に至らないケースが多いのも特徴であり、性事情は人によってさまざまであるということもパラフィリア障害群を理解する上でとても重要です。