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妄想性障害と共有精神病性障害の生物学的因子

妄想性障害

公開日:2024.08.23更新日:2025.02.03

妄想性障害と共有精神病性障害

今回は、妄想性障害と共有精神病性障害の生物学的因子についてお話したいと思います。妄想性障害とは、1つまたは複数の誤った強い思い込みがあり、それが少なくとも1カ月間持続するのが特徴です。

共有精神病性障害(以前は、二人精神病と呼ばれていた)は、現在では妄想性障害の亜型と考えられています。この障害は通常、妄想性障害または統合失調症を有する人と関係する個人または集団(通常は家族)において発生すると考えられています。

どのような生物学的因子がある?

妄想性障害と共有精神病性障害の生物学的因子には、遺伝子的要因、脳の構造と機能、神経伝達物質の不均衡、感染症と免疫反応、ホルモンバランス、発達要因などが挙げられます。多くの生物学的因子が関与し、これらが複雑に絡み合って発症すると考えられています。ひとつずつ説明していきましょう。

遺伝的要因

遺伝的要因としては、家族歴と遺伝性が挙げられています。

家族歴と遺伝性

精神疾患全般において遺伝的要因が関連し、統合失調症や双極性障害などの精神疾患は、家族内で発生する可能性が高いことが知られています。特に妄想性障害や精神病的症状を持つ家族がいる場合に、その影響を受けやすくなります。遺伝子研究により、精神疾患の発症に関連する特定の遺伝子変異が発見されていますが、妄想性障害と共有精神病性障害の遺伝子はまだ明確には特定されていません。

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脳の構造と機能

脳の構造と機能としては、前頭葉の役と辺縁系の影響が挙げられています。

前頭葉の役割

前頭葉は、判断、意思決定、社会的行動の制御に関与しており、精神疾患に関連する脳領域の一つです。前頭葉の異常や機能不全は、現実認識や論理的思考に影響を与え、妄想を引き起こす可能性があります。脳画像の研究により、統合失調症患者の前頭葉における機能的・構造的な異常が確認されていますが、妄想性障害と共有精神病性障害においても同様の異常が観察される可能性があります。

辺縁系の影響

辺縁系は感情や記憶の処理に重要な役割を果たしており、不安、恐怖、怒りなどの情動反応に関与していることが明らかです。辺縁系の異常は、過剰な恐怖や不安を引き起こし、それが妄想的な思考に結びつくことがあります。特に、扁桃体や海馬の機能障害が精神疾患と関連していることが示されています。

神経伝達物質の不均衡

経伝達物質の不均衡としては、ドーパミン仮説とセロトニンとノルアドレナリンについてが挙げられています。

ドーパミン仮説

ドーパミンは、脳内の報酬系や快感に関与する神経伝達物質です。ドーパミンの過剰な活動が、統合失調症などの精神病性障害の妄想や幻覚に関与しているという「ドーパミン仮説」があります。妄想性障害と共有精神病性障害においても、ドーパミンの異常な調節が妄想を共有するプロセスに関与している可能性があります。

共有精神病性障害では、妄想を引き起こす側の人においてドーパミンや他の神経伝達物質の不均衡が影響を与えることがありますが、共有する側の人には明確な神経伝達物質の異常がない場合が多いです。

セロトニンとノルアドレナリン

セロトニンは感情の調節、ノルアドレナリンは覚醒とストレス反応に関与します。これらの神経伝達物質のバランスが崩れると、感情の制御が困難になり、妄想や偏った思考が強化される可能性があります。

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感染症と免疫反応

感染症と免疫反応では、精神疾患と感染症の関連、自己免疫反応が挙げられています。

精神疾患と感染症の関連

一部の研究では、特定の感染症(例: トキソプラズマ、ヘルペスウイルス)が精神疾患の発症リスクを高める可能性が示唆されています。感染症が引き起こす慢性的な炎症や免疫の異常が、脳機能に影響を与え、精神病的な症状を引き起こす可能性があると考えられています。共有精神病性障害では、妄想を引き起こす側の人において、感染症や免疫系の異常が精神病的症状を引き起こすことがあるかもしれませんが、共有する側の人には影響が少ないことが多い傾向です。

自己免疫反応

免疫系が誤って自己の脳組織を攻撃する自己免疫反応が、精神病性障害と関連することがあるとされています。共有精神病性障害では、妄想を引き起こす側の人において、感染症や免疫系の異常が精神病的症状を引き起こすことがあるかもしれませんが、共有する側の人には影響が少ないとされています。

ホルモンバランス

ホルモンバランスでは、レスホルモン(コルチゾール)と甲状腺ホルモンが関連していると考えられています。

レスホルモン(コルチゾール)

コルチゾールは、ストレス反応に関与するホルモンで、過剰なストレスによりコルチゾールレベルが上昇すると、精神的なバランスが崩れ、妄想的思考が増加することがあります。特に慢性的なストレスは、脳の機能や構造に影響を与え、精神疾患のリスクを高める可能性があります。共有精神病性障害では、妄想を引き起こす側の人において、コルチゾールや甲状腺ホルモンの異常が影響を与えることがありますが、共有する側の人にはそれほど影響が見られない傾向です。

甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンの異常(特に甲状腺機能亢進症や低下症)は、感情の変動や精神状態の不安定さを引き起こし、これが精神病的症状のリスクを増加させることがあります。

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発達要因

発達要因では、神経発達障害の影響と胎児期の影響が関連していると考えられています。

神経発達障害の影響

神経発達障害(例: 自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症)は、脳の発達に影響を与え、精神病的症状のリスクを高めることがあります。これらの障害は、社会的な相互作用や現実認識に影響を与えやすく、妄想や共有された妄想の形成に関与する可能性があります。共有精神病性では、妄想を引き起こす側の人において、神経発達障害や胎児期の影響が関与していることがありますが、共有する側の人には明確な発達要因が見られない場合が多いです。

胎児期の影響

胎児期における母体の栄養状態、ストレス、感染症などが、胎児の脳発達に影響を与えることがあり、これが後の精神疾患リスクに関連することがあります。胎児期のストレスや栄養不足が、脳の発達に影響を与え、妄想的思考が形成されやすくなる可能性があります。

まとめ

妄想性障害と共有精神病性障害の生物学的因子について、遺伝子的要因、脳の構造と機能、神経伝達物質の不均衡、感染症と免疫反応、ホルモンバランス、発達要因について解説しました。これらの因子は、個々のケースに応じて複雑に絡み合っており、必ずしも単一の因子が発症を引き起こすわけではありません。複数の要因が相互作用することで症状が現れると考えられています。

【参考文献】

MSDマニュアル「妄想性障害」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E5%A6%84%E6%83%B3%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3

MSDマニュアル「共有精神病」

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E5%85%B1%E6%9C%89%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%97%85

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