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多重知能理論について
多重知能理論
公開日:2025.04.24更新日:2025.07.24
多重知能理論ってなに?
近年の教育現場では、生徒一人ひとりの個性や多様な才能を尊重する学習方法が求められています。その中で、ハワード・ガードナーによって提唱された「多重知能理論」は、従来のIQや学力テストでは測りきれない、さまざまな知能の存在を明らかにしました。この記事では、多重知能理論の概要と、それぞれの能力の種類、それを教育に応用する方法について解説します。
多重知能理論は、1983年にハワード・ガードナーによって提唱された知能の概念です。彼は、知能は単一のものではなく、複数の独立した知能が存在すると考えました。この理論は、従来のIQテストのような尺度では測れない多様な能力を評価する視点を持っています。
多重知能の8つの種類
多重知能理論の8つの知能について、詳しく説明します。
言語的知能
言葉を効果的に使う能力を指し、話したり書いたりすることが得意な人が持つ知能です。この知能が高い人は、言葉のリズムやニュアンス、意味を深く理解し、的確に表現する力があります。主に、次のような特徴があります。
- 読書や文章を書くのが好き
- 語彙が豊富で、言葉の使い方が巧み
- 話し方が上手で、人を引きつける
- 議論やディベートが得意
職業例
- 作家・詩人・ジャーナリスト
- 弁護士・スピーチライター
- 教師・政治家

論理・数学的知能
数や論理的な関係性を理解し、数学的な思考やパターン認識が得意な人が持つ知能です。物事を体系的に考え、理論的に分析する力に優れています。主に、次のような特徴があります。
- 計算や数学が得意
- パズルや論理的な問題を解くのが好き
- 仮説を立てて検証するのが得意
- 物事を体系的に整理するのが好き
職業例
- 科学者・数学者・エンジニア
- プログラマー・データアナリスト
- 済学者・論理学者
空間的知能
視覚的・空間的に物事を把握し、イメージを思い描く能力を指します。芸術や設計、地図の読解などに優れています。主に、次のような特徴があります。
- 絵やデザインを描くのが得意
- 地図や図表を見て理解するのが速い
- 立体的なものを想像するのが得意
- 組み立てやレイアウトを工夫するのが好き
職業例
- 建築家・デザイナー
- カメラマン・イラストレーター
- 航空パイロット・ナビゲーター
身体・運動的知能
体を巧みに使い、動作を通じて表現する能力を指します。スポーツやダンス、手先の器用さが求められる分野で力を発揮します。主に、次のような特徴があります。
- スポーツやダンスが得意
- 手を使う作業(工作・演技・楽器演奏)が得意
- 体を動かすことで学ぶ方が理解しやすい
- 身体のバランスやリズム感が優れている
職業例
- スポーツ選手・ダンサー・俳優
- 外科医・理学療法士
- 職人・彫刻家

音楽的知能
音楽のリズムやメロディを理解し、表現する能力を指します。音の違いを聞き分けたり、楽器演奏や作曲が得意な人が多いです。主に、次のような特徴があります。
- 音楽を聴くと感情が動かされる
- 楽器の演奏や歌が得意
- メロディやリズムを記憶するのが得意
- 作曲や即興演奏ができる
職業例
- ミュージシャン・作曲家・指揮者
- 音響技師・DJ
- 音楽教師・映画音楽作曲家
対人的知能
他人の感情や考えを理解し、コミュニケーションを円滑にする能力を指します。リーダーシップを発揮したり、交渉が得意な人が多いです。主に、次のような特徴があります。
- 人の気持ちを察するのが得意
- コミュニケーション能力が高い
- チームでの活動が好き
- 他人を指導したり、仲裁するのが得意
職業例
- 教師・カウンセラー
- 政治家・営業職
- 経営者・ソーシャルワーカー
内省的知能
自分自身を深く理解し、感情や思考をコントロールする能力を指します。自己認識が強く、自分の長所や短所をよく理解している傾向です。主に、次のような特徴があります。
- ひとりで考えたり、内省するのが好き
- 自分の感情や動機を深く理解している
- 哲学や心理学に興味がある
- 目標設定が上手で、自己管理ができる
職業例
- 哲学者・心理学者
- 作家・宗教家
- コンサルタント・自己啓発コーチ
博物的知能
自然や生き物に対する興味が強く、動植物を観察し、分類する能力に優れています。環境や生態系について深く理解し、自然との関わりを大切にする傾向です。主に、次のような特徴があります。
- 動物や植物を観察するのが好き
- 自然環境に強い関心を持つ
- 動物の種類や特徴を記憶するのが得意
- 科学や環境問題に興味がある
職業例
- 生物学者・動物学者
- 環境保護活動家・農業従事者
- 獣医・園芸家

多重知能理論の活用
この理論の大きな利点は、IQのような知能を単一の尺度で測るのではなく、多様な能力の観点から評価できることです。教育やキャリアの選択、個人の強みを活かす方法を考える際に役立ちます。
- 教育➡子どもに合った学習方法(視覚・聴覚・体験型など)を選ぶ
- キャリア選択➡自分の強みを活かせる仕事を見つける
- 自己成長➡得意な分野を伸ばし、苦手な分野も補強する
教育への応用
この理論は、教育の場面で「子どもたちの強みを活かす教育法」を考える上で重要視されています。たとえば、数学が苦手な子どもでも、音楽的知能や身体・運動的知能を活かした学習法を取り入れることで、より効果的に学ぶことが可能です。この理論は、「すべての人が異なる才能を持っている」という前提のもと、個々の強みを伸ばす教育を推奨しています。
教育への応用のポイント
多重知能理論を教育に活用するためのポイントについて紹介します。
個別最適な学び
生徒の得意な知能を特定し、それを活かした学習方法を導入します。例: 音楽的知能が高い生徒にはリズムを使った学習、空間的知能が高い生徒にはビジュアル教材を活用。
多様な学習アプローチを組み合わせる
授業に複数の知能を活かす要素を取り入れ、全員が学びやすい環境を作ります。
例: 歴史の授業で「物語として語る(言語的知能)」「年表を作る(空間的知能)」「劇として演じる(身体・運動的知能)」など多様な方法を採用。
協働学習の促進
異なる知能の得意分野を持つ生徒が協力し合うことで、互いに学びを深めることができます。例: 対人的知能が高い生徒がリーダーシップを取り、論理的知能が高い生徒がデータを分析するプロジェクト型学習。
評価方法の多様化
テストだけでなく、プレゼンテーション、ポートフォリオ、プロジェクト発表など、多様な評価方法を取り入れます。例: 身体・運動的知能が高い生徒にはパフォーマンス評価、言語的知能が高い生徒にはエッセイ評価など。

まとめ
多重知能理論の概要とそれぞれの能力の種類、多重知能理論を教育に応用する方法について解説しました。多重知能理論は、学習者一人ひとりの個性や得意分野を尊重し、多様な学びのスタイルを提供するための重要な指針となります。従来の一律的な教育方法では見過ごされがちだった才能を引き出し、生徒の自己理解や学習意欲を高めることが可能です
教育現場でこの理論を活用することで、生徒が自分に合った学び方を見つけ、より深い理解と成長を遂げることが可能になります。今後も多様な知能を活かした教育方法を模索し、すべての生徒が自信を持って学べる環境を築いていくことが求められます。
参考文献
1.文部科学省「学習指導要領の趣旨の実現に向けた 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する 参考資料」
https://www.mext.go.jp/content/210330-mxt_kyoiku01-000013731_09.pdf
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など




