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Hidamari Kokoro Clinic
知的発達症、知的能力障害の発達特徴
知的発達症群
公開日:2024.05.31更新日:2024.05.31
知的発達症(知的能力障害)について
知的能力障害の人は、抑うつ、注意欠如多動症など発達障害などの特性や精神疾患を持っていること多い傾向です。そのため、発達や成長の過程にもさまざまな個人差が見られます。ここでは、知的能力障害の重症度別におおまかな発達的な特徴と将来の見通しについて解説します。
また、就学前(0-5歳)、就学期(6-20歳)、成人期(21歳以上)についても発達のポイントをまとめました。
軽度知的能力障害の発達特徴
軽度知的能力障害の子どもは、小学校1、2年頃まで知的能力障害を持っているとわからないことがあります。小学校での学習が始まり学業能力が必要になったとき、知識を得ていく過程において初めて知的能力障害が明らかになることがあるのです。
一般的に、言語的な発達は遅れていますが、基本的な言語能力は持っています。単語の理解や発話、基本的な文法の理解が可能ですが、複雑な文章や抽象的な概念には理解が難しい傾向です。社会的なスキルや感情の理解は、遅れが見られます。他者との関わりやコミュニケーションに苦労することがありますが、基本的な社会ルールや行動について理解できるようになってくるでしょう。
新しい情報や概念を理解するのに時間がかかりますが、興味を持って学ぶ姿勢が見られることもあります。軽度知的能力障害をもった成人は、適切な支援を受けながら自立して生活し、 自分の家庭を持つことができる可能性があります。
0~5歳
- 社会的な技能やコミュニケーション能力は発達していく
- 感覚運動領域での遅滞は少ない
- 年齢が高くなるまで正常知能の子どもと区別がつかないことが多い
6~20歳
- 20歳近くになるまでには、ほぼ小学6年生レベルの学業能力を身につけることができる
- 社会適応ができるように指導を行うことが可能
21歳以上
- 最低限の範囲で自分のことは自分の力でできる
- 社会技能や職業技能を身につけることができるが、社会的なストレスや経済的なストレス下では指導や支援が必要となる
中等度知的能力障害の発達特徴
中等度知的能力障害の子どもの大部分は言葉を獲得し、 幼児期であれば違和感がないくらいのコミュニケーション能力を身につけることができます。 しかし、学習面では困難に直面し、小学2、3年生以上の学力は身につけることができないことが多いでしょう。社交能力に限界があるため、青年期には他者との違いが明確になって孤立することが多い傾向です。成人になると、適切な監督のもとであまり熟練を必要としない仕事が行えるようになる可能性があります。
言語発達は遅れが見られ、複雑な文章や抽象的な概念の理解が難しい場合があります。社会的なスキルや感情の理解は遅れが見られ、他者との関わりやコミュニケーション、感情の表現や制御について学習が必要です。自己ケア能力は基本的なレベルであり、食事や着替え、トイレなどの基本的な動作は、一部支援を受けながら行えるようになることが多いでしょう。
0~5歳
- 話すことができるか、または コミュニケーションの手段を身につけることができるようになる
- 社会的なことへの意識は乏しい
- 運動機能の発達はそれほど悪くない
- 自分で自分のことを行うトレーニングは効果が見られる
- 中等度の監督で生活可能
6-20歳
- 社会的な技能訓練や作業訓練は効果がある
- 教科学習では小学校2年生以上の能力を獲得することは少ない
- 何度も行ったことがある場所へは1人で移動可能
21歳以降
- 生活維持に関する技能を身につけることができる
- 保護的な条件では、非熟練作業または半熟練作業に従事することが可能
- 軽度の社会的なストレスや経済的なストレス下では見守りや指導が必要
重度知的能力障害の発達特徴
重度知的能力障害の子どもは、子ども時代にミュニケーション能力を身につけることができて、数を数えたり生活に欠かすことができない単語を認識できたりするようになります。成人になると、グループホームなどの支援がある生活環境での生活にはよく適応し、サポートを受けながら仕事に関する作業を行うことができる可能性があります。
言語の発達に遅れが見られ、話すことや他者とコミュニケーションを取ることが難しいことが多いです。他者との関係性や社会的ルールの理解、適切な行動の取り方などが難しく、社会的なスキルや行動の適応に関する課題があります。
0-5歳
- 運動発達が乏しい傾向
- 発話は最低限しかない
- 一般的に自分で自分のことを行う能力のトレーニングは効果がない
- コミュニ ケーション能力は非常に低いか、あってもごくわずかである
6-20歳
- 話すことができるか、コミュニケーション手段を身につけることができるようになる
- 基本的な健康習慣についてトレーニングが可能
- 日常生活の習慣について系統的なトレー ニングをすることで改善が期待できる
- 職業訓練は効果がない時が多いと考えられる
21歳以降
- 完全な見守りのもとで、自分の生活維持に関してその一部ができるようになることがある
- 保護的な環境では、自分を危険から守る能力の最低限の力が発揮できる
最重度知的能力障害の発達特徴
言語やコミュニケーション能力が制限されているため、自己表現や他者との意思疎通が非常に難しいです。食事や着替え、トイレの利用などの基本的な自己ケアスキルには支援が必要です。
社会的な環境やルールを理解し、それに適応する能力が極めて低いことがあります。他者との関係性や社会的行動の理解が難しいため、社会的な場面での振る舞いには支援が必要となります。重度知的能力障害の子どもは、適切なトレーニングを受ければ、 セルフケア能力の一部を身につけたり、自分欲求を伝えることができるようなったりするかもしれません。
0-5歳
- 感覚運動機能領域での能力は最小限
- 介護ケアが必要で、つねに支援が必要
6-20歳
- 発達する運動能力もある
- セルフケアについて最低限のトレーニング、あるいは限られたトレーニングに反応する者もいる
21歳以降
- 運動や発話がいくらかは発達する
- ごく限定されたセルフケアを獲得することがある
- 介護ケアが必要となる
まとめ
知的能力障害の重症度別に、おおまかな発達的の特徴と将来の見通しについてお伝えしました。知的能力障害の人々は言語や認知能力に遅れがあるものの、適切な支援やトレーニングでスキルを獲得できる可能性があります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など