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ジェネラティビティについて

心理面・思考

公開日:2025.02.06更新日:2025.09.13

ジェネラティビティってなに?

ジェネラティビティは、心理学や社会学、さらには創造性の研究において重要な概念です。特に、エリック・エリクソンが提唱した心理社会的発達理論において、成人期の中心的な課題として位置付けられています。今回は、エリクソンの視点からみたジェネラティビティ、ジェネラティビティの構成要素、発達プロセス、社会的意義、実例などについて解説します。

ジェネラティビティとは、「次世代のために何かを生み出し、育て、社会に貢献しようとする心理的な欲求や行動」を指します。具体的には、子どもを育てることや、若い世代を指導することなどが挙げられます。

エリクソンの視点からのジェネラティビティ

ジェネラティビティをエリクソンの視点から考えると、これは彼の心理社会的発達理論の7番目の段階であり、特に成人中期(30代~50代)の重要な課題とされています。エリクソンの理論では、人生は8つの発達段階に分かれており、各段階で特定の課題に直面し、それらを乗り越える必要があるとしています。成人中期(おおよそ30代から50代)の課題は、「ジェネラティビティ(生産性)対停滞」です。

  • ジェネラティビティ➡他者や社会に貢献し、自分の価値を未来に伝える。
  • 停滞➡自己中心的で、他者や社会への貢献が欠け、内向きな態度が強まる。

成人中期では課題を乗り越えることで、人生の次の段階(老年期)における「統合感」を得る準備が整います。しかし、停滞が強い場合は、自分の利益や満足感にのみ焦点を当て、他者への関心が薄れ、自己中心的な態度となる傾向です。社会や他者とのつながりが弱くなり、人生に虚無感や孤独感を抱きやすくなります。この状態では、社会や他者への関心が薄れ、成長や貢献への意欲が失われる可能性があります。

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ジェネラティビティの構成要素

エリクソンは、ジェネラティビティを以下のような具体的な側面に分けて考えました。

  • 生殖➡次世代を生み出し、育てる生物学的なプロセス。子どもを持つことや育児が代表例です。例: 子どもを育てる中で、次世代に価値観や倫理を伝える。
  • 親性的ジェネラティビティ➡子どもや若い世代を育て、指導し、成長を支える行動。例: 教育や子育て、後輩をサポートする活動。
  • 技術的ジェネラティビティ➡自分の知識やスキルを次世代に伝えること。例: 職場での後進育成や、熟練技術の継承。
  • 文化的ジェネラティビティ➡社会や文化の価値観、伝統を次世代に伝える行為。例: 芸術や文化を通じて、社会に新たな価値を生み出す。

ジェネラティビティの発達プロセス

エリクソンの理論によると、ジェネラティビティは単に自然に生まれるものではなく、成長過程の中で発達するものとされています。

初期の基盤➡アイデンティティ

青年期における「アイデンティティの確立」が基盤となります。自分が誰であるかを明確に理解し、安定した自己像を持つことで、他者や社会への貢献が可能になります。

中期の成長➡親密性の確立

若年成人期における「親密性」が確立されていることも重要です。他者と深い関係を築く能力がジェネラティビティの基盤となります。

ジェネラティビティの発揮

成人中期に入ると、他者や社会に目を向け、自分がどのように次世代や社会に影響を与えるかを考え始めます。具体例としては、家族を持つこと、地域社会で活動すること、職場で後輩を育成することなどです。

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ジェネラティビティの社会的意義

ジェネラティビティは、単に個人の成長だけでなく、社会全体の発展にも寄与します。例えば、若い世代に知識や価値観が継承されることで、社会の持続性が保たれ、世代間のつながりを作ることが可能です。社会全体での相互支援が強化され、全体の幸福感、社会的な責任感の醸成につながるなど、個々の文化や伝統が次世代に引き継がれることも、社会的アイデンティティに対する期待や意義にも繋がります。

ジェネラティビティの実例

ジェネラティビティの実例はたくさんありますが、ここでは、家庭、職場、地域社会での実例について紹介します。

家庭におけるジェネラティビティ

子育てにおいて、子どもの教育や成長をサポートし、健全な人格形成を助けることが挙げられます。例えば、一緒に学習をしたり、価値観を共有する会話を持ったりすることです。これは、次の世代の育成そのものであり、社会の未来を支える基盤となると考えられます。

家庭内では、家庭内のルールを作り、それを子どもたちに教えることがあてはまります。例えば、家事を教えたり、責任感を育てる機会を与えたりすることなどです。次世代に「生活スキル」や「自己管理能力」を伝えるという意義があります。

職場におけるジェネラティビティ

職場で新人や若手社員に対してOJT(On-the-Job Training)を提供し、業務スキルや職業倫理を教えることなどです。組織内での知識や経験の継承につながり、長期的な成長に寄与します。

新しいプロジェクトを立ち上げ、若手社員を巻き込んで意見を取り入れたり、次世代のニーズを考えた商品やサービスを企画したりするといったイノベーションの推進もジェネラティビティです。社会全体への貢献や、組織の発展にも役立ちます。

地域社会でのジェネラティビティ

地域の清掃活動や、高齢者の支援活動、子どもたちの学習支援に参加することです。地域社会をより良い場所にすることで、次の世代にも安全で快適な環境を提供することにつながります。また、地域の祭りやイベントを企画し、若い世代に伝統文化を教えたり、地域の若者にリーダーシップの経験を提供したりすることも地域社会でのジェネラティビティです。地域文化の継承と、若者の成長のサポートとなります。

ジェネラティビティの重要性

ジェネラティビティの重要性は、人生の充実感を高める点です。次世代に貢献する行動は、自己実現や人生の意味を深める助けとなり、心理的な健康にもつながるでしょう。他者に貢献する感覚は、自己肯定感や幸福感を高め、孤独感やストレスを軽減する効果があるだけでなく、社会の持続性を支える役割も果たします。ジェネラティビティが発揮されることで、社会の知識や価値観、文化が次世代に受け継がれ、未来への大きな貢献となります。

まとめ

エリクソンの視点からみたジェネラティビティ、ジェネラティビティの構成要素、発達プロセス、社会的意義、実例などについて解説しました。ジェネラティビティは、自己を超えて他者や社会に貢献することで、人生に深い意味と満足感をもたらしたり、個人の成長だけでなく、チームの成長や幸福感といった良い影響力を築く力となります。

名古屋駅の心療内科,精神科,メンタルクリニック

野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など