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緊張病(カタトニア)とは?症状・治療法について解説
カタトニア・緊張病
公開日:2024.09.03更新日:2025.02.02
[ Index ]
はじめに
- 「緊張症(カタトニア)って、どんな病気なのかな?」
- 「どんな症状があるのかな?治療したら治るの?」
緊張症(カタトニア)は、緊張病性障害やカタトニア症候群と呼ばれています。
長い時間動きが止まったり、同じ動きをくり返したりする症状を引き起こす症候群です。
緊張病(カタトニア)と言われても、聞きなれず「なにそれ?どんな病気?」と疑問に思うでしょう。
この記事では、緊張病(カタトニア)とは、症状や診断基準、治療法と予後、あがり症とちがいについて解説します。
緊張病(カタトニア)について知ることで、安心して治療ができるようになると幸いです。
緊張病(カタトニア)とは
緊張病(カタトニア)とは、長い時間動きが止まる・問いかけに対して無言になる・人に手を動かされたらそのままの状態を1時間続けるなどの症状を引き起こす症候群をいいます。[1]
緊張病は単発で発症することはほとんどはなく、気分障害や統合失調症の進行に伴って現れる珍しい状態です。
疾患別割合は、25~50%は気分障害(うつ病や双極性障害など)、約10%は統合失調症と関連しています。
昔は統合失調症の、気分障害や身体の病気によって生じる精神疾患(器質性精神障害)などでもみられるため、DSM-5で新しく緊張病(カタトニア)として取り挙げられるようになりました。[2]
緊張病(カタトニア)の原因
緊張病(カタトニア)はさまざまな原因によって引き起こされます。
具体的には以下のとおりです。
- 統合失調症や気分障害などの精神疾患
- てんかんや脳炎、低ナトリウム血症などの身体疾患
- 薬剤の影響
原因となる疾患や薬剤の特定が第一の治療にあります。
医師による適切な診断が大切です。
緊張病(カタトニア)の診断基準・症状
DSM-5の緊張病(カタトニア)の診断基準には、12個の症状のうち3つ以上の症状が必要です。
どのような症状なのか、具体例を挙げて解説していきます。[3]
- 昏迷:意識障害はないが、外からの刺激に意思や反応がない
例)無言・動きがない・痛み刺激にも反応しないことがある - カタレプシー:筋緊張が高くなり自分から動くことができない。不自然な姿勢でもされるがまま保ち続ける。
例)検査者から両手を上げてバンザイの姿勢にされても1時間以上そのままですごす - 蠟屈症(ろうくつしょう):ろう人形のように自分で動かさなくても、検査者によって自由な姿勢をとることができる。不自然な姿勢でもそのまま保ち続け、自発的に姿勢を変えることは難しい。[4]
※カタレプシーと似ていますが、検査者が姿勢を変えるときの感覚によって区別されています。
例)検査者が腕を曲げたときに、ロウソクを曲げたような感覚がある - 無言症:言葉での反応がない
例)話しかけても返事がない・反応があったとしても少し - 拒絶症:周囲からの指示や刺激に、意味なく抵抗し拒否する
例)検査者が手を動かそうとしても拒否・無視・食事をすすめても拒食 - 姿勢保持:自分で動かしたり他人から動かされたりしても同じ姿勢を保ち続ける
例)同じ姿勢で長時間すごす - わざとらしさ:わざとらしい不自然な発言、表情、態度
例)つま先歩きであいさつをする、後ろ歩きで行動する - 常同症:目的なく同じ動作を何度もくり返す
例)何度もドアの開け閉めをしている、両足をバタバタしている - 外的刺激の影響によらない興奮:なにもなく突然興奮する
例)静かにすごしていると思ったら突然興奮する - しかめ面:まゆのあたりにシワを寄せた、機嫌の悪そうな顔
例)怒っているような表情 - 反響言語:他人の言葉をマネする
例)今日は暑いですね!→今日は暑いですね!
朝食は何を食べましたか?→朝食は何を食べましたか? - 反響動作:他人の動作をマネする
例)バンザイ→バンザイ
右足を上げる→右足を上げる
上記の症状の他にも、他の精神疾患ではその症状が説明できない・せん妄の経過中ではないなどの基準があります。
緊張病(カタトニア)の治療法・予後
緊張症(カタトニア)は正しい診断と治療が行われないと、[1][3]
緊張病の治療には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や電気けいれん療法(ECT)が効果的です。
緊張病になると、身の回りのことができなくなり、興奮状態になり周囲の人に危害を加える可能性があるため入院治療が必要になることが多くなります。
治療は、医師と相談しながら進めることが大切です。緊張病(カタトニア)の治療について不安や疑問がある場合は、ひだまりこころクリニックまでお気軽にご相談ください。
Q:緊張病(カタトニア)とあがり症はちがうの?
緊張症(カタトニア)とあがり症はちがいます。
「緊張」というフレーズによって勘違いされやすいのでしょう。
あがり症とは、大勢の前で話したり大切な試験のときに緊張して汗をかいたり、心臓がどきどきしたりする人間の正常な反応を「あがり症」と呼んでいるのです。
[5][6]
あがり症の治療には心理療法や認知行動療法が有効です。
このように、あがり症と緊張症(カタトニア)の症状や治療法とは異なります。
まとめ
緊張病(カタトニア)とは、周囲からの刺激に反応がなくなったり、人の言葉をくり返したりする症状が現れる症候群をいいます。統合失調症や気分障害などでみられる珍しい状態です。
緊張病(カタトニア)は合併症を発症することが多いため、適切な診断と治療が大切になります。
緊張とあがり症というフレーズが似ていることから、勘違いされがちですがあがり症とは別物です。
緊張病(カタトニア)の正しい知識をつけることで、特徴的な症状と、精神疾患との合併などの理解を元に早期の診断と治療に繋がりやすくなります。
参考資料
[1] カタトニア(緊張病)症候群の診断と治療|大久保 善朗 https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1120040396.pdf
[2] 器質性精神障害 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%99%A8%E8%B3%AA%E6%80%A7%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3
[3] 緊張病症候群|黒瀬 心 https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/35/4/35_17073/_pdf/-char/ja
[4] DSM-5日本語版における蝋屈症の説明について|萩原 徹也https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1190060452.pdf
[5] 不安障害|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
[6]あがり症(社交不安障害)とは?|一般社団法人あがり症克服協会
https://agarishow.or.jp/about-agarishow/