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キャリア・レインボーとは

心理面・思考

公開日:2025.04.24更新日:2025.07.07

キャリアと人生観について

「キャリア」と聞くと、仕事や職業を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 しかし、私たちの人生には、働くこと以外にも家族との時間、学び、趣味、地域との関わりなど、さまざまな“役割があります。

それらを総合的に捉え、「人生全体をひとつのキャリア」として描こうとする考え方が、キャリア・レインボーです。この理論は、人生を通じた多様な役割のバランスを視覚的に「虹(レインボー)」にたとえたユニークなモデルです。この記事では、キャリア・レインボーの基本構造や意味、活用方法について解説していきます。

キャリア・レインボーってなに?

キャリア・レインボーは、アメリカの心理学者ドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア発達理論の概念のひとつで、人のキャリアは人生のさまざまな役割(ライフロール)の影響を受けながら発展していくという考え方です。スーパーは、個人のキャリアは「職業」だけでなく、家庭・学業・地域社会など多様な要素が影響すると考え、これを「キャリア・レインボー」という図で表現しました。

キャリア・レインボーの基本構造

キャリア・レインボーは、ライフロール(9つの役割)をレインボーの帯として描き、それがライフステージ(5つの段階)の上を横断している形をしています。

ライフロール(9つの役割)

もともとのスーパー理論では【①〜⑦】の7つのロールがベースです。⑧配偶者と⑨親は「家庭人」の中に含まれることが多いですが、現代では別の重要な役割として区別されることもあります。人によっては、「介護者」や「学び直しの学習者」などを加えて10以上になるケースもあります。

ポイントは、同時に複数の役割を持つことがある(例:働きながら親でもある)こと、役割の比重はライフステージによって変わる(学生時代と中年期では役割が異なる)ことです。

  • ①子ども➡親や保護者の子どもとしての役割例)実家で暮らし、親のサポートを受ける
  • ②学生➡学び、成長するための役割例)高校生、大学生、社会人学習など
  • ③余暇人➡趣味や娯楽を楽しむ役割例)旅行、音楽鑑賞、スポーツ、ゲームなど
  • ④働く人➡社会で職業に従事する役割例)会社員、公務員、アルバイト、自営業など
  • ⑤家庭人➡家庭生活を営む役割例)子育て、家事、家族の健康管理など
  • ⑥市民➡地域や社会の一員としての役割例)ボランティア、地域活動、投票など
  • ⑦退職者➡引退後の生活を送る役割例)年金生活、趣味や家族との交流を楽しむ
  • ⑧配偶者➡パートナーとしての役割例)婚生活、夫婦関係の構築や協力
  • ⑨親➡子どもを育てる役割例)育児、教育、精神的な支えとなること

人生の中では、これらの役割について同時に複数担うこともあり、年齢とともに変化するでしょう。たとえば、30代の人が同時に「働く人」「親」「配偶者」「市民」「余暇人」など、5つ以上の役割を兼ねていることもあります。キャリア・レインボーは、「ライフロール(人生における役割)」と「ライフステージ(人生の段階)」が組み合わさって形成される」という考え方に基づいています。

ライフステージ(人生の段階)

スーパーは、人のキャリア発達を以下の5つのライフステージに分けました。しかし、すべての人がこの流れに沿って進むわけではありませんし、ライフステージの進行は個人の状況によって異なります。

成長期(0~14歳)

  • 家庭・学校での影響を受け、価値観が形成される
  • 職業に対する漠然とした興味が芽生える

探索期(15~24歳)

  • 自分の適性や興味を探りながら、職業を選択する準備をする
  • アルバイトやインターンなどを経験する

確立期(25~44歳)

  • 職業を本格的に始め、スキルを磨きながらキャリアを確立する
  • 結婚や育児などのライフイベントも経験することが多い

維持期(45~64歳)

  • これまで築いたキャリアを維持し、安定した働き方を模索する
  • 部下の指導や組織の管理など、リーダー的な役割が求められる

下降期(65歳以降)

  • 退職し、仕事以外の生活(趣味・社会活動)に重点を置く
  • 健康や経済状況に応じて、新たなライフスタイルを構築する

キャリア・レインボーの図解

キャリア・レインボーは、ライフロール(9つの役割)をレインボーの帯として描き、それがライフステージ(5つの段階)の上を横断している形をしています。つまり、人生の各段階で複数の役割が重なり合いながらキャリアを形成していることを示しています。

キャリア・レインボーの図について

  • 横軸に「年齢」や「人生のステージ」
  • 縦軸に「ライフロール(役割)」
  • 各ライフロールの役割がアーチ状の曲線(虹のように)で描かれる
  • アーチの大きさや太さは、その時期にその役割がどれくらい重要かを示す

例えば

  • 20代の会社員(確立期)➡「働く人」「配偶者」「市民」の役割が中心
  • 40代の親(維持期)➡「働く人」「親」「市民」「余暇人」の役割が強くなる
  • 60代の引退者(下降期)➡「退職者」「余暇人」「市民」の役割が重要になる

キャリア・レインボーの活用

キャリア・レインボーは、次のようなことに活用できます。

自己理解

自分が今、「どんな役割を担っているのか」「バランスはとれているのか」について見える化することで、自分の状態を整理できます。

キャリアプランニング・ライフプランニング

将来、どの役割をどれくらい重視したいのかを考えることができます。「5年後、10年後に大切にしたい役割を想像する」「子育てと仕事の両立をどうするか考える」「定年後のセカンドキャリアや趣味を設計する」など、将来どのような人生を送りたいのか、ライフステージごとの役割の変化を考えることで、長期的なキャリアプランニングやライフプランニングがしやすくなります。

ワークライフバランスの見直し

仕事と家庭、趣味、地域活動などのバランスを可視化する。例えば、「働く人」としてだけでなく、「家庭人」「余暇人」「市民」など、見過ごしがちな役割にも目を向けることができます。

カウンセリングやコーチングでの活用

進路・転職・人生設計において、可視化して整理するツールとして使われる。「将来何をしたいかわからない」という悩みに対して、「どんな人生を送りたい?」という広い視点で問いかけることができます。

まとめ

キャリア・レインボーの基本構造や意味、活用方法について解説しました。私たちの人生は仕事だけでなく、家庭、学び、余暇、地域社会など、さまざまな役割によって彩られています。キャリア・レインボーは、それら一つひとつの役割を大切にし、人生全体をバランスよく豊かにしていくためのヒントを与えてくれるでしょう。

「今の自分は、どんな役割を担っているだろう?」「これからの人生で、どんな役割を大切にしたいだろう?」そんな問いを自分自身に投げかけながら、これからのキャリア(=人生)を描いてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1.厚生労働省 令和5年度島根県地域職業能力開発協議会 ワーキンググループ作成「職業訓練用キャリアコンサルティングマニュアル」

https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/001764482.pdf

2.文部科学省「~ワーク&ライフ・デザイン教育プログラム~ 第五回 」

https://www.mext.go.jp/content/20210329_mxt_kyousei02_100014244_30.pdf