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急性一過性精神病性障害(短期精神病性障害)とは|症例と予後について詳しく紹介
急性一過性精神病性障害
公開日:2024.08.23更新日:2025.02.03
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急性一過性精神病性障害(短期精神病性障害)はどんな病気だろう?
急性一過性精神病性障害と診断されたけどよく分からない。
これからの生活がどうなるのかな?
聞きなれない病名で、このように不安になることもありませんか?
急性一過性精神病性障害は短期精神病性障害とも呼ばれ、1日~1ヶ月以内に症状が落ち着くことを特徴とした急性の精神疾患です。
急にさまざまな症状が現れるため、本人や家族は「どうしたんだ…」と不安や心配になることが多いです。しかし、正しい知識を得ることで、不安が和らぐでしょう。
この記事では、急性一過性精神病性障害の症状や原因、治療法について詳しく解説していきます。後半にはケース例についても紹介していますので、あなたの今後の参考になりますと幸いです。
急性一過性精神病性障害の症状
急性一過性精神病性障害の症状の多くは急性に現れます。
急性の定義は、約2週間以内に明らかに異常な症状が現れることです。
主な症状は、以下が挙げられます。
- 妄想
- 幻覚
- まとまりのない発語
- 非常にまとまりのない行動や緊張病性の行動
急性一過性精神病性障害の症状には、上記の主要症状が少なくとも1つは必ず含まれています。また、幻覚や妄想、まとまりのない言動が見られますが、自分の今いる場所や時間(見当識)が分からなくなる症状があまり見られないのも特徴の一つです。
急性一過性精神病性障害の症状は1日~1ヶ月以内で症状が落ち着きます。
診断基準の1つに「少なくとも1日以上1カ月未満」とあるため、症状が1ヶ月を越える場合や、他の気分障害や統合失調感情障害などの精神疾患が考えられる場合は別の疾患を考える必要があります。
急性一過性精神病性障害になる原因
急性一過性精神病性障害の原因は解明されていません。
正確な発生率や有病率も分かっていませんが、年長者よりも20~30歳代に多く、男性より女性の発症率が高いという調査結果があります。
他にも、以下のような方が発症しやすいと言われています。
- 大災害を体験した人
- 死別、失業など大きな心理社会的ストレスを抱えた人
- ストレスへの対処が苦手な人
急性一過性精神病性障害の治療法
急性一過性精神病性障害の治療法は3種類あります。
詳しく解説します。
薬物治療
急性一過性精神病性障害の薬物療法には、抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬物の2種類があります。
抗精神病薬は、効果の高いハロペリドールが処方されることがあります。しかし、若い男性には手がふるえる・身体が硬くなるなどの錐体外路系の副作用が生じることがあるため、ジプラシドンを使用するケースもあります。
ベンゾジアゼピン系薬物は、長期的な治療には限界があり、短期治療を目的として使用することが多いです。さらに、精神病薬に比べて副作用も少ない傾向にあります。
どちらの薬も、長期的な服用は避けるべきです。服薬に関して気になることがあったら、主治医の先生に相談しましょう。
精神療法
急性一過性精神病性障害は、抱えきれないほどのストレスが誘発因子となっているため、発症に関係しているストレスは何だったのかを理解することが大切になります。
主治医や精神保健福祉士・臨床心理士など心の専門家とともに、本人のみならず家族とともに理解することが治療のポイントになるでしょう。
入院治療
急性一過性精神病性障害は急速に出現するため、家族や患者さん自身も急な症状に対応が難しくなります。そのため、本人の安全確保や症状の状態を把握するために入院治療が必要なケースも生じるでしょう。
また、静かに安全が守られた病院の中での生活は、幻覚や妄想などの症状から現実感覚を取り戻す手助けになります。
急性一過性精神病性障害の予後
一般的には急性一過性精神病性障害の予後は良好とされています。
ただし、急性一過性精神病性障害は稀な疾患であり、診断基準は「1日以上1カ月未満」です。そのため、最初に急性一過性精神病性障害と診断された方の約半数は、症状が落ち着かず、統合失調症や気分障害と診断しなおされます。
急性一過性精神病性障害の治療経過
急性一過性精神病性障害は、再発することもがよく見られますが、症状はほとんどない場合や全くない場合が多くあります。
もともとストレスを感じやすいと、今後の生活で再び大きなストレスを抱えると再発する確率が高くなります。
交通事故や不幸ごとなど、突発的な大きなストレスを予防するのは難しいです。
まずは、日常生活や業務上でストレスを抱え込まないように気をつけることを大切にしましょう。
具体的には下記のような方法を試してください。
- 軽い運動をする(ラジオ体操や15分ほどのウォーキングなど)
- 規則正しい生活を送る
- 信頼できる人に悩みを相談する
規則正しい生活や、軽い運動は身体が感じるストレスを発散してくれます。日常的に習慣化させておくことで、負担にならずにストレス発散ができるようになるでしょう。
また、自分ひとりで抱えきれないストレスは、誰かに相談することが大切です。自分では思いつかなかった解決策や意見がもらえることもあります。
心が苦しくなったときに相談できる相手を作っておくことは大切なことです。
急性一過性精神病性障害のケース例
27歳 女性Aさん
営業職でお客さんや社内でも愛想がよくて好かれていた。
Aさんには結婚の約束をしている恋人がいた。しかし、恋人が事故で帰らぬ人となる。
恋人が亡くなった2週間後、Aさんは突然周りの人が見えないものが見えているような発言をはじめる。会社の同僚は「疲れているんだよ…ちょっと休んだら?」と提案するも、支離滅裂な話をはじめる。心配した同僚が上司に相談した。勤務医の元へ行き、心療内科の受診を勧められる。Aさんは心療内科を受診し「急性一過性精神病性障害」と診断される。そのまま入院し、2週間ほど薬物療法を受けると症状が落ち着いてきた。
急性一過性精神病性障害|まとめ
急性一過性精神病性障害(短期精神病性障害)は、急性に発現し、約1ヶ月未満に症状が落ち着く稀な精神疾患です。
- 妄想
- 幻覚
- まとまりのない発語
- 非常にまとまりのない行動や緊張病性の行動
上記のどれか1つは症状として、急性に発現するため、本人や家族、周囲の方は心配になるでしょう。
しかし、急性一過性精神病性障害の予後は一般的に良好とされています。そして、正しい知識を知ることと、適切な対応を落ち着いてとることもとても重要です。
▼参考文献
短期精神病性障害|MDS
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E7%9F%AD%E6%9C%9F%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%97%85%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3
短期精神病性障害|MDSマニュアル 家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%BE%A4/%E7%9F%AD%E6%9C%9F%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%97%85%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3
20第一章 初発精神病性障害|日本神経精神薬理事会
https://www.jsnp-org.jp/csrinfo/img/togoshiccho_01.pdf
こころもメンテしよう 若者のためのメンタルヘルスブック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book.pdf