地下鉄名古屋駅 徒歩1分
大人のためのメンタルクリニック
クリニックブログ
Hidamari Kokoro Clinic
皮膚むしり症とは?強迫症との関係|原因・症状・治療法
皮膚むしり症 / 抜毛症 / 強迫性障害
公開日:2025.03.29更新日:2025.03.29
[ Index ]
皮膚むしり症とは?強迫症の関連疾患としての位置づけ
皮膚むしり症(英: Excoriation Disorder、Dermatillomania)は、強迫的に皮膚をいじったり、むしったりする精神疾患で、「強迫症(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)」の関連疾患と考えられています。
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)では、皮膚むしり症は「強迫関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)」に分類され、強迫性障害同様に、皮膚むしり症も独立したそれぞれの疾患として分類されています。
【強迫症および関連障害群】
- ✅ 皮膚むしり症(Excoriation Disorder):皮膚の損傷を引き起こす、繰り返された皮膚むしり行為
- ✅ 強迫症(OCD):不合理な強迫観念と、それを打ち消すための強迫行為が特徴
- ✅ 抜毛症(Trichotillomania):髪の毛を抜く強迫的な行動
- ✅ 身体醜形障害(BDD):身体の特定部位に過度なこだわりを持つ
- ✅ チック症・トゥレット症候群:不随意な動きや発声を繰り返す
等があります。
皮膚むしり症も、強迫性障害やその他の強迫関連障害群の疾患と同様に「衝動を抑えられない」という特徴を持っています。特に、強迫症と同様に「やめようと思ってもやめられない」状態が続く点が共通しており、脳の神経回路や神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)の異常が関与していると考えられています。
皮膚むしり症の症状と特徴
皮膚むしり症の主な症状は以下の通りです。
✅ 皮膚をむしる行動が制御できない
– 傷やかさぶた、にきびなどを無意識にいじる
– ストレスが高まると悪化しやすい
✅ 繰り返すことで皮膚損傷が生じる
– 炎症や色素沈着、瘢痕(はんこん)形成
– 感染症リスクの上昇
✅ 「やめたいのにやめられない」強迫的行動
– 一時的な快感や安心感を得るが、後で後悔する
– 無意識に行う場合もあり、気づくと傷だらけになっている
✅ 社会生活への影響
– 自己肯定感の低下、抑うつ状態
– 皮膚を隠すための過剰な化粧や服装選択
皮膚むしり症と強迫症の共通点・相違点
項目 | 皮膚むしり症 | 強迫症(OCD) |
---|---|---|
共通点 | 「やめようと思ってもやめられない」強迫的な行動 | 「強迫観念」に基づいた強迫行為 |
行動の特徴 | 皮膚をむしる行動が繰り返される | 手洗いや確認行為が繰り返される |
脳の関与 | 衝動制御の障害(前頭前野・大脳基底核の異常) | セロトニン機能異常が関与 |
治療法 | 認知行動療法(CBT)、SSRI、習慣逆転法(HRT) | 認知行動療法(CBT)、SSRI、暴露反応妨害法(ERP) |
皮膚むしり症の患者の多くは、OCDの診断基準を部分的に満たすことがあり、特に「何か気になる」「不安を減らすためにむしる」というパターンが見られます。
しかし、OCDのように「不合理な強迫観念」が先行するケースは少なく、どちらかというと「チック症」や「抜毛症」に近い側面を持つと考えられています。
皮膚むしり症の原因
皮膚むしり症の原因には、心理的・神経生物学的・遺伝的要因が絡み合っています。
心理的要因
- ストレス、不安、抑うつ状態がトリガー
- トラウマや過去の虐待経験
神経生物学的要因
- セロトニン機能の異常(OCDと共通)
- 衝動制御を担う脳領域(前頭前野・大脳基底核)の異常
遺伝的要因
- 家族に強迫症、抜毛症、チック症の患者がいるとリスク増加
皮膚むしり症の診断と治療
診断基準(DSM-5)
1️⃣ 皮膚をむしる行動を繰り返し、皮膚損傷が生じる
2️⃣ 何度もやめようと試みるが、抑えられない
3️⃣ 生活に支障をきたす
4️⃣ 他の疾患(皮膚疾患、薬の副作用)では説明できない
治療法
✅ 精神療法・認知行動療法(CBT)
- 習慣逆転法(HRT):皮膚をむしる衝動が出たときに別の行動に置き換える
- 曝露反応妨害法(ERP):衝動を抑えるトレーニング
- 疾患の特徴や、社会生活上のケアや対処法に対するアドバイスや助言
✅ 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):フルオキセチン、パロキセチン
- ドーパミン調整薬:オランザピンなど
✅ 生活習慣の見直し
- ストレスマネジメント(マインドフルネス、ヨガ)
- 爪を短くする、手袋をつける
まとめ
皮膚むしり症は、強迫症の関連疾患として位置づけられ、強迫性障害(OCD)や抜毛症と共通点が多い病気です。
✅ 衝動を抑えられない行動が特徴
✅ 強迫症やチック症と関連が深い
✅ 早期治療が生活の質を向上させる
症状が気になる場合は、無理をせず、精神科や心療内科,メンタルクリニックなどの医療機関に相談することが大切です。
参考文献・公的機関の情報
- American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5).
- National Institute of Mental Health. (2021). Excoriation Disorder (Skin-Picking Disorder). Retrieved from https://www.nimh.nih.gov
- World Health Organization. (2022). International Classification of Diseases (ICD-11).
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など