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統合失調感情障害について
統合失調感情障害 / 統合失調症
公開日:2024.07.23更新日:2024.07.23
統合失調感情障害について
統合失調感情障害(schizoaffective disorder)は、統合失調症と気分障害の特徴を併せ持つ精神疾患です。ICD-10では、F25コードにて「統合失調感情障害」として、DSM-5TRにおいては「統合失調感情症」とされています。
しかしICD-10,DSM-5TRのいずれにおいても、統合失調症の経過における特定項目ではなく、統合失調症とは区別される疾患として扱っていることには注目されるべき点でもあります。
今回は、統合失調感情障害の症状、診断基準、原因、治療法について解説します。
症状
統合失調感情障害の症状は、統合失調症と気分障害の両方の特徴があります。
統合失調症の症状
統合失調症の症状には次のようなものがあります。
- 陽性症状:幻覚(幻聴・幻視)・妄想(被害妄想・誇大妄想)
- 陰性症状:感情の平板化(感情表現が乏しい)・意欲の低下・社会的な引きこもり
- 思考障害:思考の混乱・論理的思考の欠如
- 行動障害:不適切な行動や態度・運動の異常(カタトニアなど)
気分障害の症状
気分障害の症状には次のようなものがあります。
- うつ病エピソード: 気分の落ち込み、興味や喜びがない、睡眠障害、食欲の変動、自殺念慮
- 躁病エピソード: 異常な高揚感、過活動、誇大妄想、睡眠の減少、衝動的な行動
診断基準
統合失調感情障害は、統合失調症と感情障害の両方の特徴を持っています。最近では、次の6つのカテゴリーのうち1つに当てはまる場合に、統合失調感情障害と診断することができます。さらに次のような症状の持続期間などが基準となります。
- 気分症状を持つ統合失調症患者
- 統合失調症症状を持つ気分障害の患者
- 気分障害と統合失調症の両方を持つ患者
- 統合失調症とも気分障害とも異なる第3の精神病の患者
- 統合失調症ー気分障害連続体上に位置する障害を持った患者
- 上記のいずれかが組み合わさった患者
症状の持続期間について
- 統合失調症と気分障害の両方の症状が存在すること:これらの症状は同時に、または精神症の病期の一部に現れることがある
- 症状の持続期間:症状が少なくとも2週間以上持続すること
- 他の疾患ではないこと:症状が他の精神疾患や身体疾患によるものではないこと
原因
統合失調感情障害の病因は完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因、生物学的要因、環境的要因、および心理社会的要因が関係していると考えられています。これらの要因が複雑に絡み合って統合失調感情障害の発症に寄与するため、単一の原因を特定することは難しいとされています。
遺伝的要因
遺伝的な要因は、家族歴や遺伝子が挙げられています。
家族歴
統合失調感情障害を持つ人の家族には、統合失調症や気分障害を持つ人が多いことが示されています。これは遺伝的要素が影響している可能性があります。
遺伝子
特定の遺伝子変異が統合失調感情障害のリスクを高める可能性があります。ただし、特定の遺伝子が直接的な原因であるということは明確に証明されていません。
生物学的要因
生物学的な要因については、次のことが関係していると考えられています。
脳の構造と機能
統合失調感情障害を持つ人は、脳の特定の領域に異常があることが多いとされています。例えば、脳の一部の構造が異常に小さい、または神経伝達物質のバランスの問題があるなどです。
神経伝達物質
ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の異常が、統合失調感情障害の症状に関与している可能性があります。
環境的要因
環境的な要因も統合失調感情障害に影響を与えていると考えられています。
ストレス
重大なストレスや幼少期の虐待や重大な喪失などのトラウマが統合失調感情障害の発症リスクを高める可能性があります。
妊娠と出産
妊娠中の感染症や栄養不足、出産時の合併症などが、後に統合失調感情障害を発症するリスクを高めることが示されています。
心理社会的要因
心理的な要因としては、社会的支援や生活環境が影響していると考えられています。
生活環境・社会的支援の欠如
社会的な孤立や支援の欠如や社会経済的な困難は、統合失調感情障害の発症や悪化への寄与やリスクへの増加につながる可能性があります。
治療法
統合失調感情障害の治療には、薬物療法、心理療法、社会的支援が重要です。治療は個々の患者の症状やニーズに応じて決定され、医師や専門家との連携が不可欠です。また、定期的なフォローアップや治療計画の見直しも重要です。
薬物療法
薬物療法には次の薬を使用します。
抗精神病薬
向精神薬は、統合失調症の症状(幻覚、妄想など)を軽減するために使用されます。一般的にはリスペリドン、オランザピン、クエチアピンなどが処方されます。
気分安定薬
気分の波を安定させるために使用され、リチウムやバルプロ酸ナトリウムが一般的です。
抗うつ薬
うつ病の症状を緩和するために用いられます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が処方されることが多い傾向です。
心理療法
心理療法には、認知行動療法、個人療法、家族療法などがあります。
認知行動療法(CBT)
患者さんが否定的な思考パターンを認識し、それを変える手助けをする療法です。これにより、ストレスや不安を軽減します。
個人療法
患者さんが自分の感情や経験について話す場を提供し、対処方法を学ぶのをサポートします。
家族療法
家族が患者さんの症状を理解し、適切にサポートできるようにするための療法です。
社会的支援
社会的支援には、次のようなことがあります。
- 支援グループ:患者が他の同じような経験を持つ人々と交流し、支え合う場所を提供
- 生活スキルトレーニング:日常生活の中で必要なスキルを学ぶことで、患者さんの自立を促す
- リハビリテーションプログラム:社会復帰を目指すためのプログラム(職業訓練や社会適応訓練)
生活のサポート
統合失調感情障害を持つ人々は、日常生活においても多くのサポートが必要です。統合失調感情障害は複雑な病気ですが、適切な治療とサポートにより、症状のコントロールが可能です。早期の診断と治療が、より良い予後をもたらす可能性があります。
- ストレス管理::ストレスを軽減し、リラクゼーション法を学ぶ
- 規則正しい生活リズム:規則正しい睡眠、食事、運動を維持する
- 社会的サポート:家族、友人、医療従事者からのサポートを受ける
まとめ
統合失調感情障害の症状、診断基準、原因、治療法について解説しました。統合失調感情障害の症状は、統合失調症と気分障害の両方の特徴があります。原因は解明されていませんが、遺伝的要因、生物学的要因、環境的要因、心理社会的要因が関係していると考えられています。治療は薬物療法をはじめ、社会的なサポートの充実も重要です。