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間欠性爆発性障害とは?特徴となりやすい人、ケース例を紹介

間欠性爆発性障害

公開日:2024.08.05更新日:2025.04.04

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そんなことでこんなにも怒るの?

夫が妻にだけ衝動的に怒りを爆発させてくる…

家族や近いしい関係の人にだけイライラの感情をぶつけてしまう。

怒りをぶつけられる方はつらいですよね。

もしかしたら、その攻撃性は間欠性爆発性障害(かんけつせいばくはつせいしょうがい、Intermittent Explosive Disorder:IED)が関係しているかもしれません。

間欠性爆発性障害(間欠爆発症)とは、きっかけとなるできごとに見合わないほど、衝動を制御できない攻撃的な行動をとってしまう障害です。この記事では、間欠性爆発性障害の症状や治療法について解説しています。

また、間欠性爆発性障害ケース例も紹介しているので、あなたの周囲の人が間欠性爆発性障害なのか考えるきっかけになるでしょう。

間欠性爆発性障害とは

間欠性爆発性障害(かんけつせいばくはつせいしょうがい、Intermittent Explosive Disorder:IED)は、小さなことに対して過剰な怒りを爆発させてしまう精神的な障害です。

最終的には、深刻な暴力行為や破壊行動がみられるケースもめずらしくなく、間欠性爆発性障害の方の中には、放火者も高確率で存在すると報告があるほどです。

間欠性爆発性障害は、自分でも「やりすぎた」と思うほど怒りを爆発させてしまい、そのあとで強い後悔や自己嫌悪を感じることもあります。

主な特徴

  • 突然激しく怒る(きっかけは些細なこと)
  • 物を壊す、人に暴力をふるうことがある
  • 怒りは数分から30分程度で収まる
  • 怒ったあとで自己嫌悪に陥る
  • 怒りの頻度が高く、生活に支障が出ている

その他、意外な特徴として…

  • 10代後半~20代の男性が発症することが多い
  • 発症原因には遺伝が関係していると言われている
  • 症状は通常30分以内に「自然と治まる」
  • 怒りだすきっかけとなるエピソードとエピソードの間では、攻撃性や衝動性は消失する

たとえば…

  • 車の運転中に少し割り込まれただけで激怒して叫んだり、追いかけたりする
  • 家族や友人との小さな口論で物を投げたり、壁を殴ったりする
  • 怒っている最中は自分を抑えられない感覚になる

原因は?

完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係しているとされています:

  • 脳の衝動コントロールに関わる部分(前頭葉など)の異常
  • セロトニンの働きの乱れ
  • 幼少期の虐待やトラウマ
  • 遺伝的な影響

治療法は?

  • 認知行動療法(CBT)・精神療法:怒りのコントロール方法を学ぶ
  • 薬物療法:抗うつ薬や抗てんかん薬などを使うこともある
  • カウンセリング・心理療法など:感情の背景を整理する

間欠性爆発性障害になりやすい人

間欠性爆発性障害の原因は明確にはわかっていませんが、遺伝が関係していると言われています。家族や親せきに、激しいかんしゃくや爆発症の既往歴がある方が多いのも特徴的です。

幼少期にアルコール依存、暴力、生命を脅かされる環境など、助けを求めたにもかかわらず助けてもらえない環境で育った方が多いです。

幼少期の「欲求不満」「抑圧」「敵意」が間欠性爆発性障害を誘発する要因となります。

間欠性爆発性障害の衝動的な攻撃は、自分が傷つけられるできごとに対する防衛として、相手との距離を保ち自分を守ろうとしていると考えられているのです。

間欠性爆発性障害のケース

【ケースA】

Aさんは、不動産の仕事をしています。日ごろの勤務態度や人当たりも良いタイプ。

しかし、お客さんの優柔不断な態度に、激しく怒り強い口調で罵ってしまうこともしばしば。それにより、契約できないことも生じています。会社で上司に注意され、Aさんは近くにあるものを投げたり壊したりと破壊的な行動をしてしまいます。

【ケースB】

Bさんは、普段は穏やかで子煩悩なお父さん。

ある日Bさんの奥さんが用事あり一日出かけていた。奥さんが帰宅後Bさんに「お茶碗洗っていてほしかったな…」とボソっと言ったことに対してBさんは激怒。急に大声で怒り叫びだす。近くにあったリモコンなどを奥さんに投げつけ、今にもつかみかかりそうな勢いで怒りだした。10分ほどでBさんの怒りは治まり、その後、後悔したように落ち込んでいる。

ケースA・Bのように、間欠性爆発性障害の方は、瞬間湯沸かし器のように衝動的な攻撃性があり、その衝動的な攻撃行動に対するきっかけとなるエピソードがあまりにも不釣り合いである特徴があります。

間欠性爆発性障害の診断

間欠性爆発性障害の診断は、DSM-5の間欠性爆発症/間欠性爆発性障害の診断基準をもとに診断されます。

誰にでもイラっとして怒りすぎてしまうことはあります。そのため、1回の爆発的な攻撃性だけでは診断はできません。また、周囲の人に攻撃性が高くなる精神疾患は他にも多くあります。

以下のような他の精神疾患に診断される場合は、間欠性爆発性障害と診断されないケースもあります。

しかし、もともと発症していた疾患の合併症として、間欠性爆発性障害を発症する可能性はあります。たとえば以下のようなときです。

『Aさんは、8歳のときから注意欠如・多動症(ADHD)でした。Aさんが21歳のとき、些細なエピソードで衝動的に他人を攻撃する言動が多くなりました。Aさんは周囲の方から距離を置かれるようになり、自分はなにか病気なのではないかと主治医に相談したところ「間欠性爆発性障害」を発症していることがわかった。』

間欠性爆発性障害の治し方

間欠性爆発性障害の明確な治療法はまだ確立されていません。しかし、薬物療法と精神療法をあわせた治療法が有効さとされています。

薬物療法

間欠性爆発性障害の治療薬には、抗てんかん薬のリチウム(リーマス)が攻撃的行動を抑制するのに有効です。

他にも、バマゼピン(デクレトール)、バルプロ酸(デパケン)、ジバルブレックス、フェニトイン(アレビアチン)も有効と報告されています。

精神療法・心理療法

精神療法・心理療法もありますが、短期間ではなく、根気強い取り組みが必要な場合が比較的多いです。感情コントロールが上手くいかない段階で、時に治療者に対して怒りを爆発させてしまったりと、時に感情が強くなりすぎて上手く治療的な対話が難しいことも少なくないのと、また感情を爆発させてしまった事への後悔に対するケアも重要だからです。思春期や青年期の場合は、家族療法が有効と言われています。

間欠性爆発性障害の治療の目的は、衝動性がどのようにして爆発するのか、そうなるまでの考え方や感情を本人が理解し、行動を起こすかわに言葉で表せるようになることです。

本人が怒りのタイミングに気づけるようになることが大切になります。

まとめ

間欠性爆発性障害の方は、衝動的な攻撃性があり、ときには暴力や物を破壊する行動もみられます。症状の多くは30分以内に治まり、その後、本人は落ち込むことが多いです。

周囲から「瞬間湯沸かし器のように怒る人」と思われるため、心理的距離をとられ仕事や交友関係に大きく影響するでしょう。

もし、あなた自身や身近に思い当たる方がいる場合は、1人で悩まずに精神科や心療内科,メンタルクリニックにお気軽にご相談ください。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など