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安全配慮義務
安全配慮義務
公開日:2024.05.09更新日:2024.10.30
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安全配慮義務
ストレスやうつ病などをはじめとするメンタルヘルスの問題は、いまや全ての企業が関心を寄せるところです。その理由のひとつは、企業は従業員に対して体の健康だけではなく心の健康についても配慮しなければならないからです。
この記事では安全配慮義務について解説します。
安全配慮義務とは
企業と従業員の間には労働契約が結ばれています。労働契約とは、従業員は企業のために働くから、その働きに対して企業は賃金を払うという約束事のようなものです。
従業員がしっかり働けるように、仕事をするうえでの従業員の安全や健康に企業は配慮しなければなりません。これが、安全配慮義務です。正社員はもちろんのこと、パートやアルバイトなどの非正規雇用者も安全配慮義務の対象に入ります。
安全配慮義務で配慮すべきことには色々ありますが、主には以下の4つです。
①労災事故関連
例えば2階建て以上の建築現場で作業を行う場合、資材が落下したり、転落事故が起きたりする恐れがあります。
こういった事態を防げるように、従業員の安全を確保するための備品を定期的に手入れしたり、安全教育を徹底したりするなどの対応が企業は行わなければなりません。労災事故は建築分野以外でも起こり得ます。自社の状況に合わせて従業員が働きやすい職場づくりをすることが望まれます。
②過重労働関連
多くの方がご存じの通り、過重労働は心身に重大な悪影響を及ぼします。特に長時間労働は睡眠時間を削るため、うつ病をはじめとする精神疾患のリスクです。
なお過重労働であるか判断する基準は、労働時間だけではありません。交代制勤務や深夜勤務といった不規則な勤務や、温度・騒音・時差などの作業環境などのほか、身体的な負荷や精神的な負荷から総合的に判断されます。
③ハラスメント関連
パワハラやセクハラといった同じ企業で働く従業員同士のハラスメントは当然のこと、昨今ではカスハラ(カスタマーハラスメント)対策も大切です。
カスハラへの対応マニュアルを作成するだけではなく、顧客に適切な情報(例えばコロナ渦でマスクの需要が過度に高まったときには、マスクの欠品情報やいつ入荷するかなど)を提供することでカスハラを未然に防ぐことも安全配慮義務に基づいた行動と言えるでしょう。
④下請け業者関連
時には下請け業者の従業員や派遣社員が自社で働くことがあります。こういった自社以外の従業員も安全配慮義務の対象者となります。
安全配慮義務と個人情報保護
企業は安全配慮義務があるため、仕事をするうえで配慮が必要な従業員の健康面の情報を知っておかなければなりません。
このように書くとあまり気に留めないかもしれませんが、実際のところは一緒に働く上司や管理職者が自分の健康面の情報を知るということです。しかし何らかの病気を抱えていることを知られるということは、昇進や給与に影響を及ぼさないか心配になるものです。また、例えばPMS(月経前症候群)のように相手に理解してもらいにくいことから伝えにくい、伝えたくないこともあるでしょう。上司との関係性によっては、自分のことをあまり知られたくないと思う人もいると思います。
プライバシーの権利から個人情報は守られるべきものです。
しかし、仕事するうえでの安全配慮に関する義務は、雇用者だけではなく従業員にも課せられています。
従業員に課せられる義務は自己保健義務と呼ばれます。これは、従業員は自分が問題なく仕事できるようにするため、健康上の問題があれば企業に申告したり、健康診断の受診などの健康管理に協力したりしなければならないという義務です。そのため、もし業務に支障が出るようならば、健康面の情報を従業員は企業に伝えなければなりません。
とはいえ、あくまでも大事なことは「仕事をするうえで病気が支障となっているか否か」です。
仮にPMSでしんどいとしても、業務の支障となっていなかったり、一番しんどい日だけ有給休暇を取ったり、時短勤務にできる勤務体制であったりすれば、企業に伝えなくても問題ないでしょう。大事なことは、病名を伝えることではありません。症状に関連して配慮してほしいこと・あるいは伝えておかないといけないことや、症状の状況などを具体的に伝えることが大事です。
また、伝える相手は直属の上司でなければならないわけでもありません。一緒に勤務する間柄ではないほうが話しやすいならば、人事部に相談するのもひとつの手でしょう。多くの職場にいるわけではありませんが、産業医や産業保健師などの専門家も良い相談相手です。