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ダウン症候群について

知的発達症群

公開日:2024.05.31更新日:2024.11.14

知的能力障害の原因となる疾患について

ダウン症候群は染色体疾患の中でも最も多く、知的能力障害の原因としても最多といわれています。500人に1人の割合で生まれ、年間約2000人の出生が報告されています。現在では、医療技術の進歩によって、ダウン症候群の平均寿命は60歳を超えるほど長くなりました。今回は、ダウン症候群について原因、特徴、診断、健康課題、治療とサポートについて解説します。

ダウン症候群とは

ダウン症候群は、19世紀後半にジョン・ラングドン・ダウン医師が報告したことから名付けられました。知的能力障害のうち遺伝的な因子が影響するものに、「トリソミー21(ダウン症候群)」があります。ダウン症候群は、21番染色体が3つ存在することによって起こる染色体疾患です。細胞遺伝学的な異常が原因である知的能力障害は、全体の15%を占めています。そのうちの3分の2がダウン症候群によるものです。

原因

ダウン症候群の主要な原因は、21番染色体が3つあることです。通常は人間の細胞には21対の染色体があります。受精卵の段階で染色体の数の変化が起こり、胎児の細胞が21番目の染色体を3つ持つことによってダウン症候群となります。ダウン症候群には、染色体の構造によって標準型、転座型、モザイク型などのタイプがあります。

標準型

全体の約95%を占めています。父親の染色体と母親の染色体の分離が上手くいかずに21番目の染色体が増えることが原因です。標準型の場合、両親の染色体には問題がないことがほとんどです。

転座型

全体の約3%で、標準型とは異なり、両親のどちらかの21番目の染色体の一部が他の染色体に付着する(転座)状態です。両親のどちらかが転座染色体を持っていることで起こると考えられています。

モザイク型

約2%の発症率です。染色体異常がある細胞と正常な細胞が入り混じっている状態です。正常細胞の比率が高い場合には、症状が軽いことがあります。

特徴

ダウン症候群の症状は、幅広く個人差がありますが、一般的に以下のような特徴があります。

  • 顔貌の特徴:特に小さな耳・顔の中央のくぼみ・つりあがった目・大きな舌・
  • 低く幅のある鼻稜
  • 成長の遅れ:身体の成長や発達が通常よりも遅れることがある
  • 筋緊張低下:筋肉の緊張が弱く、運動能力が低下することがある
  • 心臓異常:先天性心疾患や心臓の構造異常が見られることがある
  • 知的能力障害:軽度から中度の知的能力障害が一般的だが、個人差がある
  • その他の特徴:低身長・単一の手掌屈曲線・愛想が良い・小児期の多動 など

出生から生後6か月までは、認知機能は正常に発達しているように見えますが、1歳になる頃には、ほぼ正常だったIQは約30〜50までに次第に低下します。しかし、知的機能の低下ははっきりしないこともあります。乳幼児に対する検査では、能力低下を完全にとらえきれない可能性があるからです。

事例報告では、ダウン症候群の子どもは典型的には穏やかで朗らか、協力的で家庭でも容易に適応して生活できるといわれています。しかし、青年期になると様子は変化し、ダウン症候群の若者は社会的な問題や情緒的問題、行動上の問題を抱え、精神病性障害を発症するリスクが高まることもあります。

一般にダウン症候群のある人たちは、その他の原因による知的能力障害のある人たちに比べて問題行動が少ない傾向です。また、表出言語と理解言語に差があり、発語がなくても日常生活の状況は理解していることも多いとされています。

診断

ダウン症候群は、出生時や胎児期における特徴的な身体的特徴や発達の遅れ、遺伝子検査によって診断されます。特に、21番染色体が3本あること(三体性)を確認することで確定診断が行われます。

健康課題

ダウン症候群の人はダウン症候群でない人に比べて、かかりやすい病気とかかりにくい病気があります。また、かつては平均余命は約40歳と大変短かったのですが、現在では、60歳を超え劇的に長くなっています。しかし、知的能力障害がない者と同じくらい長く生きることは難しいのが現状です。

18歳までの医療ケア

米国小児科学会では、ダウン症候群の子どもの健康については、次のような診察や検査が奨励しています。これに加えて、月経などの個人衛生のスキル・妊娠や避妊についての理解も重要です。

  • 貧血検査
  • 甲状腺機能検査
  • 聴力検査
  • 視力検査
  • 頸椎病変の評価
  • 歯科疾患の検査

19-40歳の医療ケア

一般的な健康診断と共に、行動変化についてもチェックしていきます。比較的若い時期には、抑うつなどの精神疾患が多く。メンタルヘルスケアが重要な課題といえます。

41歳以上の医療ケア

成人期の健康課題に加えて、認知症や骨粗しょう症、変形性関節症などの老年期の合併症が課題となります。一般的に、成人期のダウン症候群の人には、次のような合併症があります。

  • 内分泌・代謝系疾患:甲状腺機能異常症・⾼尿酸⾎症
  • 循環器系患:成⼈先天性⼼疾患・僧帽弁閉鎖不全症
  • 呼吸器系疾患:睡眠時無呼吸症候群
  • ⽣活習慣病:肥満症・⾼脂⾎症
  • 消化器系患:胃⾷道逆流症・便秘症
  • 神経系疾患:てんかん・アルツハイマー病・もやもや病
  • 精神疾患:⾃閉スペクトラム症・強迫性障害・うつ病/抑うつ状態
  • 婦⼈科系疾患:早発閉経
  • ⻭科疾患:う蝕・⻭列不正・⻭周病

治療とサポート

ダウン症候群の特徴は、言語能力、記憶能力、セ ルフケア能力、問題解決能力が 30歳までに悪化してしまうことです。 ダウン症候群の治療や支援は、個々の症状やニーズに応じて行われます。

治療プログラム

早期からの幼児教育プログラムや理学療法、言語療法などが重要です。また、心臓異常やその他の合併症に対する医療ケアも重要です。具体的には、肥満の予防、バランスの良い食習慣、運動習慣、ストレスマネジメントなどを確立することが大切です。

各種福祉サービス

ダウン症候群は一生涯にわたって支援が必要な状態であり、家族や医療専門家との協力が重要です。適切な支援と治療を受けることで、ダウン症候群の方々も充実した生活を送ることができます。次に、ダウン症候群に関連する各種福祉サービスについて挙げました。

  • 療育手帳
  • 就労支援
  • 障害福祉サービスの利用(介護給付・訓練給付・相談支援)
  • 害基礎年金の申請
  • 成年後見制度の利用
  • 介護保険制度の利用

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まとめ

ダウン症候群について原因、特徴、診断、健康課題、治療とサポートについて解説しました。ダウン症候群は、21番染色体が3つ存在することによって起こり、特徴的な顔貌、軽度から中度の知的能力障害などがあります。心疾患や消化管疾患などの合併症がありますが、適切な支援と治療を受けることで、ダウン症候群の方々も充実した生活を送ることができます。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など