名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院が不眠症に対する認知行動療法/CBT-iについて解説

地下鉄名古屋駅 徒歩1分

大人のためのメンタルクリニック

クリニックブログ

Hidamari Kokoro Clinic Hidamari Kokoro Clinic

不眠症に対する認知行動療法/CBT-i

行動療法 / 睡眠障害・不眠症

公開日:2024.10.03更新日:2025.01.23

◆不眠症とは

厚生労働省の「生活習慣予防のための健康情報サイト」によると、不眠症とは「入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)、早朝覚醒(早朝に目が覚めて二度寝ができない)などの睡眠に問題があり、それによって日中の倦怠感、意欲低下、食欲低下などの不調が出現する病気」です。

誰しも一度や二度は眠れない夜を経験したことがあると思います。また海外旅行に行ったときには時差の影響で現地は夜なのに眠れないということはよくあります。このように、たまにある「眠れない」ことや環境の変化の影響を大きく受けて「眠れない」ことは病気としての不眠ではなく、誰しもが経験しうることであると言えます。

不眠症の種類は大きく分けると2種類あります

不眠症は大きく二つに分けることができます。一つ目は「慢性不眠症」と言い、不眠と日中の不調が週3日以上あり、かつそれが3か月以上続く場合を指します。

もう一つは、「短期不眠症」と言い、症状が3か月未満の場合を指します。日本では、成人の約30%以上がなんらかの不眠症状を有していると言われており、不眠症は現代では決して珍しいものではなくなっています。

名古屋の心療内科,精神科,メンタルクリニック

◆認知行動療法の不眠症への適用

従来、不眠症に対する治療は主に薬物療法が用いられてきました。しかし近年は不眠症に対して認知行動療法が有効であるということが論文などでも示され、注目されるようになってきました。

もともと不眠症に対する認知行動療法の始まりは、1930年代まで遡ります。

初めはリラクセーション法のうちのひとつである『漸次的筋弛緩法』 が不眠症の治療に用いられるようになりました。そして1970年代頃からリラクセーション法の不眠症に対する治療効果が本格的に報告され始めました。

1970~80年代にかけて、刺激制御療法や睡眠制限療法などが提案され、1970年代後半~90年代前半にかけてその治療法の効果が高いことが示されていきました。そして同じ頃から睡眠衛生教育も取り入れられていきました。1980年代後半からは、認知が不眠症の症状を維持したり憎悪させたりするということが報告されるようになり、睡眠に関する考え方の偏りに焦点を当てた認知療法(認知再構成法)が取り入れられるようになり、CBT-Iが不眠症に対して効果的な治療であるということが証明されることとなりました。

その後1990年代に『治療技法マニュアル』が発行され、2006年にはAmerica Academy of Sleep Medicineより最もエビデンスモデルが高い治療法として推奨されました。またこの頃から日本でもCBT-Iが普及し始めました。

現在、米国内科学会や欧州睡眠学会の発行する治療ガイドラインではCBT-Iが第一選択として、日本では薬物療法で効果がなかったもしくは不十分だった場合、旧薬の際の併用療法として推奨されています。アメリカでは慢性不眠症の標準的な治療として用いられていますが、日本では社会全体での普及は不十分な状態です。そのため今後もより多くの研究や認識の向上が期待され、求められています。

名古屋の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院

◆不眠症に対する認知行動療法/CBT-iとは

では、不眠症に対する認知行動療法について具体的にご紹介していきたいと思います。

不眠症に対する認知行動療法(以下、CBT-I)とは、「不眠症の経過中に認められる要因、言い換えれば発症・維持要因を行動理論と認知理論に基づいて解消することを目的とした治療法」(『不眠症に対する認知行動療法マニュアル 日本睡眠学会教育委員会編』より)と定義されています。

つまり、不眠症を引き起こしている要因や不眠という状態をキープさせるもとになっている事柄(特に生活習慣や睡眠習慣)を修正することによって、不眠の改善を図ることを目指す、という治療方法です。

CBT-Iの基本構造は1回50分×6回が目安となっていますが、実施する機関や個々の患者さんの事情(症状など)に合わせて変更されることもあります。

名古屋駅の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院

【CBT-Iの流れ】

[セッション①]

現在の睡眠の問題について、その維持要因(不眠が続いている原因・きっかけ・理由など)を明らかにします。

はじめは、まず現在困っている不眠の症状について詳細におうかがいすることから開始します。寝つきが悪い、夜中に何回も目が覚めてしまう、朝早すぎる時間に起きてしまう、など一言で不眠症状といっても様々です。そのため、睡眠のどの点に困りごとがあるのかということはそれぞれ違うため個人に合わせた治療を行うために大切な情報となります。

さらに、いつ頃から症状があるのか、睡眠を妨げる行動や環境がないか、持病や既往歴の有無や服薬状況、不眠の日常生活への支障の具合など、様々な角度からお話をお聞きし不眠症状の維持要因を特定していきます。加えて、治療に期待すること(単に不眠の解消だけではなく、具体的にどうなっていったら良いと思うか)も共有します。

そしてCBT-Iの重要なポイントは、最終的に患者さん自身が日常生活の中で継続して行えるかどうか、です。その導入として毎回ホームワーク(以下、HW)を設定して次回のセッションまでに実践していただくことになります。そして次回のセッションではそのHWをもとに話合いを進めていきます。

名古屋の心療内科,精神科,メンタルクリニック

❖セッション①のHW;睡眠ダイアリー(睡眠日誌)

毎日の睡眠記録をつけてもらいます。布団に入った時間や起きた時間、トータルの睡眠時間や熟眠感、日中への支障の程度などを記録します。ポイントは正確につけようとし過ぎないことです。正確につけようとし過ぎると余計に眠れなくなってしまいますので、あくまでも朝起きたときに思い出して書いてもらうことをお願いしています。

[セッション②]

不眠症を理解するために、心理教育や睡眠衛生教育を行います。

まずはセッション①の後に記録してもらった睡眠ダイアリーを見ながらその内容について感想をお聞きしたり話合いをしたりします。ご自身の睡眠状況を振り返ったうえで、不眠症について正しく理解してもらうために「不眠症とは何か」という心理教育を行います。そもそも不眠症とは「眠れない」ことだと思っている方が多くいらっしゃいます。しかし、仮に夜眠れなくても日中元気に仕事や家事、勉強などの活動が元気にできれば「眠れない」こと自体は問題になりません。「夜間の睡眠の問題によって日中眠気が強い、集中力が低下する、倦怠感や意欲の低下がある、など日中の活動に支障が出ている」ときはじめて「不眠症」となります。そして、睡眠がとりやすくなる環境を整えるために、今何ができていて何が足りていないのかを話合い、その中でできそうなことを次回のセッションまでに実践してもらいます。

❖セッション②のHW;睡眠がとりやすい環境を整える、睡眠ダイアリーの継続

名古屋の心療内科,精神科,メンタルクリニック

[セッション③]

慢性的な不眠症状は、日中・夜間問わず覚醒した状態が続いていることが多くあります。そのため「筋弛緩法」を行って意識的に身体をリラックスさせていきます。この筋弛緩法とは「身体のさまざまな部位に力を入れて抜くことを繰り返し、力の抜き方を習得する技法」です。これを取り入れることで身体がリラックスした状態になり、その状態で布団に入ることによって睡眠中に覚醒状態になることをおさえていくことを目指します。また、それだけではなく、血圧が下がったり不安感が軽減されたりするなどさまざまな効果があると報告されています。

❖セッション③のHW;就寝前の筋弛緩法の導入、睡眠ダイアリーの継続

名古屋駅のひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院

[セッション④]

セッション④では、睡眠スケジュール法の導入をします。この睡眠スケジュール法の目的は、規則的な睡眠のスケジュールを取り戻すこと、実際に寝ている時間と布団の中で横になっている時間のズレを修正すること、にあります。

そもそも、寝ようと思って布団に入ってもなかなか寝られない、というのは人間にとってストレスが大きいものです。そのため、布団に入っている時間と実際の睡眠時間にズレがあればあるほど睡眠の質が低下していると言えます。そのズレは30分が目安といわれており、30分以上のズレがある場合はかなり睡眠の質が低下しているという判断になります。

実際の患者さんの布団に入っている時間と睡眠時間のズレを確認し、そのズレの程度に合わせて睡眠スケジュールを決定します。また、日中の活動や夜眠るまでの活動、眠れないときの対処についても検討します。

❖セッション④のHW;布団に入る時間、起きる時間、眠れないときや日中の過ごし方(セッション内で確認したこと)の実践と睡眠ダイアリーの継続

[セッション⑤]

睡眠ダイアリーを確認し、睡眠状況を振り返ります。また、睡眠状況がどれくらい改善しているのか、布団に入った時間と実際の睡眠時間のズレがどのくらいになっているか、なども確認します。十分改善している場合は、セッション④で設定した時間で睡眠をとることを継続します。改善が不十分だった場合はうまくいったこと・いかなかったことを話合い、布団に入る時間や起きる時間などの再設定を行います。

❖セッション⑤のHW;睡眠スケジュール法の再設定と睡眠ダイアリーの継続

名古屋の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院

[セッション⑥]

セッション⑥はCBT-Iの基本設定では最終回になります。CBT-Iのセッションが終了しても効果が持続し、再発しないために治療の振り返りなどを行います。

まずは睡眠ダイアリーを振り返り、CBT-Iのセッション終了後の目標と、セッション終了後にどのようなことが問題になるかということを予想してみます。多くの場合は睡眠の状態はよくなったり悪くなったりします。もしも状態が悪化してとしても、これまでのセッションやHWで学んだり実践したりした方法を活用しながらご自身で対応できるようになっていくことがとても大切です。セッション⑥ではこれまでに習得した方法は今後さまざまな場面で役立つことを共有しながら、今後どのような場面で活用できそうか、どのような工夫ができそうかなどについても話し合っていきます。

名古屋駅の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院

◆まとめ

ここまででご紹介した通りCBT-Iはおおよそ計6回のセッションを通して不眠について正しく理解し、睡眠状況を改善するためのさまざまな方策をセラピストともに身につけていく、そしてセッション終了後に仮に症状が悪化するようなことがあっても自分自身で対処できるようになることを目指していきます。

冒頭でもお伝えしたとおり眠れないことは誰しも一度や二度は経験することがあります。しかしそれが慢性化し日々の生活に影響が出ないことが重要です。もし不眠に悩まれている方や他の治療法を試してみたけど十分に改善しなかった方など、ご興味をもっていただけましたら一度CBT-Iを試してみていただくのも良いのではないかと思います。

<参考文献・資料>

『不眠に対する認知行動療法マニュアル』日本睡眠学会教育委員会(編)

『CBT-Iの理論と実践』岡島義 著

ひだまりこころクリニック名駅エスカ院名古屋市栄の心療内科メンタルクリニックのひだまりこころクリニック栄院名古屋市金山の心療内科メンタルクリニックのひだまりこころクリニック金山院あま市の心療内科メンタルクリニック,精神科のひだまりこころクリニック名古屋駅の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院