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オセロ症候群とは?嫉妬妄想の原因・症状・治療法を解説
認知症 / オセロ症候群 / 易怒性・易刺激性 / 統合失調症
公開日:2025.03.29更新日:2025.03.29
オセロ症候群とは?
オセロ症候群(Othello Syndrome)は、病的嫉妬(delusional jealousy)とも呼ばれ、根拠のない浮気の疑念に取りつかれ、極端な束縛や監視を行う精神障害です。名前の由来は、シェイクスピアの戯曲『オセロ』で、主人公が根拠のない嫉妬心により妻を殺してしまう悲劇からきています。
この症候群は、単なる「束縛が強い恋人」のレベルを超え、妄想性障害や統合失調症、認知症などの精神疾患と関連が深いことが分かっています。精神科や心療内科での専門的な治療が必要なケースも多く、放置すると暴力やストーカー行為に発展する可能性があるため注意が必要です。
オセロ症候群の特徴
1. 根拠のない嫉妬と妄想
オセロ症候群の患者は、些細な出来事を「浮気の証拠」と思い込んでしまいます。
- スマートフォンを頻繁にチェックするのを見て「浮気相手と連絡している」と疑う
- 帰宅時間が少し遅れると「他の異性と会っていたのでは?」と問い詰める
- 服装の変化や香水の使用を「浮気のサイン」として執拗に追及する
2. 過度な束縛と監視
嫉妬妄想が強まると、相手を監視し束縛する行動が増えます。
- GPSアプリや監視カメラを使って行動を監視
- スマホやSNSの履歴を何度もチェック
- 外出を制限し、交友関係をコントロールしようとする
3. 感情の爆発と攻撃性
嫉妬心がエスカレートすると、怒りや不安が抑えられなくなります。
- パートナーに対し暴言や暴力を振るう
- 自傷行為や自殺をほのめかし、相手の行動を制限しようとする
- 破局後にストーカー化するケースもある
▶「イライラするのは性格?それとも病気?ストレスと脳のメカニズム」についての記事の紹介はこちら
オセロ症候群の原因
1. 精神疾患との関連
オセロ症候群は、以下の精神疾患と深く関係しています。
- 妄想性障害➡根拠のない妄想を長期間持ち続ける
- 統合失調症➡幻覚や妄想を伴い、思考が歪む
- アルコール依存症➡飲酒後に嫉妬妄想が強まることがある
- レビー小体型認知症➡高齢者にみられる認知症の一種で、嫉妬妄想が特徴的
2. 性格や過去の経験
オセロ症候群は、以下のような性格傾向や過去の経験が関係することもあります。
- 自己肯定感が低い➡パートナーが離れていくのではという強い不安
- 過去に浮気された経験➡トラウマから疑い深くなる
- 愛着障害➡幼少期に親との関係が不安定だった場合、大人になっても強い執着を示すことがある
オセロ症候群の治療法
1. 精神科・心療内科での治療
オセロ症候群は精神疾患の一部であり、適切な治療が必要です。
① 薬物療法
- 抗精神病薬(妄想を抑える)
- 抗うつ薬・抗不安薬(不安や抑うつ症状を軽減)
② 精神療法や認知行動療法(CBT)
- 嫉妬妄想の歪みを修正し、現実的な思考へ導く
- パートナーとの健全な関係構築の支援など
2. パートナーや周囲の対応
- 無理に否定しない(頭ごなしに「そんなことない」と言うと逆効果)
- 冷静に対応する(感情的にならず、専門家の助けを借りる)
- 関係が危険な場合は離れる決断も必要(暴力やストーカー行為がある場合)
まとめ
オセロ症候群は、単なる嫉妬ではなく病的な妄想が関与する精神疾患の可能性が高いです。放置すると関係悪化だけでなく、DVやストーカー行為、犯罪行為に発展する危険性もあります。疑わしい場合は、精神科や心療内科に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
参考文献
- Enoch, M. D., & Trethowan, W. H. (1979). “Uncommon Psychiatric Syndromes”. Butterworth-Heinemann.
- Silva, J. A., Ferrari, M. M., & Leong, G. B. (1998). “Pathological jealousy: An integrative psychiatric approach”. Journal of Forensic Sciences.
- 日本精神神経学会 (2023). “精神疾患と妄想性障害に関するガイドライン”.
- 厚生労働省 (2024). “精神疾患の診断と治療に関する指針”.
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など