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「気分の波が激しいのは性格だから」と思っていませんか?
大人の発達障害 / ADHD・注意欠陥多動性障害 / メンタルケア / 双極性障害 / 心理面・思考 / うつ病
公開日:2025.06.16更新日:2025.06.26
[ Index ]
「気分の波が激しいのは性格だから」と思っていませんか?
- 「さっきまで笑っていたのに、急に落ち込んで何も手につかなくなる」
- 「小さなことでイライラしてしまい、あとから後悔する」
こうした“気分の波”の大きさに悩む方は少なくありません。
「自分は感情の起伏が激しい性格なんだ」と納得している方もいますが、実際には心の病気や神経系の問題が関与している可能性もあります。単なる性格の問題では片付けられないケースも多く、早期に原因を見極めることも大切です。
「気分の波」の正体とは?
感情の変化は誰にでもあるものです。しかし、その波が極端だったり、日常生活に支障が出ている場合、以下のような要因が背景にある可能性があります
- 脳内の神経伝達物質のアンバランス
- 睡眠やホルモンバランスの乱れ
- 発達特性(ADHDやASDなど)
- 強いストレスや過去のトラウマ
- 疾患による感情の制御力低下
こうした原因があると、感情が「自動反応」のように出てしまい、本人の意思では抑えきれなくなってしまうことがあります。
「気分の波」が目立つ主な精神疾患
“感情が安定しない”という症状は、さまざまな心の病気に共通してみられます。以下に代表的な例を紹介します。
双極性障害(躁うつ病)
気分が異常に高揚する「躁状態」と、落ち込んで無気力になる「うつ状態」を繰り返す病気です。症状の周期や程度は個人差があり、軽度の場合は「気分の波が激しい性格」と誤解されやすいのが特徴です。
境界性パーソナリティ障害(BPD)
感情の起伏が激しく、人間関係が不安定になりやすい病気です。自己イメージが安定せず、「相手のちょっとした反応」で強く反応してしまうことも多いです。衝動的な言動や自己否定感が伴うこともあります。
PMDD(月経前不快気分障害)
女性の月経周期に伴って、強い気分の落ち込みやイライラ、不安定な感情が生じる状態です。月経前に決まって「気分の波」が強くなる場合は、ホルモンの影響を考える必要があります。
ADHD(注意欠如・多動症)
感情のコントロールが苦手で、衝動的な怒りや不安をうまく処理できないことがあります。日常のささいなストレスで、感情の波が大きくなる傾向があります。
性格と精神症状の違いはどう見分ける?
「性格」と「病的な気分の変動」は、明確な線引きが難しいこともありますが、以下の視点で整理するとヒントになります。
観点 | 性格の範囲 | 医学的に注意が必要なサイン |
---|---|---|
波の強さ | 落ち込んでも数時間~1日で回復 | 数日以上続く、コントロール不能 |
周囲への影響 | 周囲と関係が安定している | 人間関係がよく破綻する |
本人の困り感 | 特に困っていない | 自分で感情が扱えず困っている |
再現性 | 特定の状況でのみ反応 | 生活全般で繰り返し起きる |
「気分の波があるけれど、仕事や家庭では特に問題がない」という場合は、性格傾向であることも多いです。一方で「同じようなトラブルを家庭などの人間関係や職場でも何度も繰り返している」「他人から“対応が大変”と思われる」といった状況があれば、医学的に評価する意義が出てきます。
気分の波に振り回される背景:脳の処理の限界
感情の安定には、脳の前頭葉を中心とした「感情制御ネットワーク」が機能しています。しかし、以下のような要因でこのネットワークの働きが低下すると、感情をうまく整えることが難しくなります。
- 睡眠不足
- 慢性的なストレス
- 社会的孤立
- スマホや情報の過剰刺激
- 過去のトラウマ体験
つまり、“気分の波”は脳からの「もう限界です」というサインである可能性もあるのです。
心療内科・精神科でできること
気分の波がつらいと感じたとき、心療内科や精神科での診療は、原因の特定と対処の第一歩にも繋がります。
アプローチ | 内容 |
---|---|
精神状態の評価 | 状況や期間、周囲への影響を整理 |
心理検査の実施 | 発達特性・認知傾向の把握 |
薬物療法 | 気分安定薬や抗不安薬などの提案 |
精神療法など | 感情の背景にある思考パターンの見直し |
睡眠・生活改善の支援 | 睡眠障害や疲労のコントロール |
大切なのは、「気分の波をなくすこと」ではなく、波に振り回されない工夫を一緒に考えることです。
「気分の波=性格」だけではない視点とは
「気分の波があるのは性格だから仕方ない」「周りに迷惑をかけてばかり…自分が悪い」と思い込んでいる方も多くいらっしゃるかもしれませんが、感情の揺れや波の大きさは、本人の努力不足ではなく、脳や神経の働き方による違いであることが多く、、医療的な視点での再評価が重要でもあり、症状や治療の経過によっては改善可能なケースも少なくありません。
生活に支障を感じ始めたときこそ、ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りることが、回復への第一歩です。
名古屋ひだまりこころクリニック名駅地下街サンロード院は名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックです。お気軽にご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など