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不安障害・不安症

不安障害・不安症

公開日: 2024.11.15 更新日:2024.11.15

不安障害や不安症は、パニック障害などの疾患を含んだ概念です

不安障害や不安症とは、DSM-5では不安症群としてとらえられており、

パニック障害・パニック症

突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達します

広場恐怖症

逃げられない、人ごみの場所、すぐに助けを求められないような状況で著明な恐怖または不安がある

限局性恐怖症

高所や飛行、動物や注射される、血を見ることへの顕著な恐怖と不安

社交不安症・社交恐怖症

他者の注視を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安

全般性不安症

多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配が継続する

選択制緘黙

話すことが期待されている特定の社会的状況、学校などにおいて話すことができない、それ以外の状況では話すことができる

分離不安症

愛着を持っている人物からの分離に関する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安

 

などの上記の疾患を不安症と不安障害は含んでいるのです。

なお、強迫性障害は、DSM-5では、不安症から別のカテゴリーとして分類をされています。

【普段の不安】と【不安症での不安】違いとは

”普段・感じる不安”と”不安障害における不安”との違いは何でしょうか?

『不安』は誰しもが感じうる感情です。

その誰しもが感じる『不安』とは、私たちが生活をする上で大変重要な感情であり、

将来に向けた危険や危機に対する、緊張や警戒、回避行動につながる、欠かせない感情でもあります。不安という感情が働くからこそ、懸念する問題に対する対策を予め講じたり、身の危険が起きうる場所避けて行動をするなどができるようになるのです。

しかし、『不安』という、このような将来に向けた危機や危険に対する感情は、時間とともに薄れたり、対処や回避によって常に持続することは通常はなく、不安という感情をうまくコントロールしながら我々は生活を送っているのです。

不安障害では、『ずっと強い不安が継続している』

しかし、不安障害における『不安』では

”不安感情が6か月以上継続的に持続”したり、

”場面に不釣り合いな不安感情の程度”

といったコントロールの効かない不安感情という側面があり、そのような継続的な不安症状が結果として次第に行動面や人格精神面を大きく変化させてしまうのが不安障害でもあるのです。

『不安』に伴う『生活への支障』があると不安障害・不安症かも

『場にそぐわない不安』『コントロールが効かない不安』があるとどうなるのか?

不安とは誰しもが感じうる感情ではありますが、不安障害・不安症で現れる『不安』とはコントロールの効かない不安でもあります。

つまり『不安障害における不安』とは、不安を強く感じるような場面ではないにも関わらず、場にそぐわないほど強い程度の不安症状が出現してしまうのです。

そうなってしまうと、体が委縮してしまい行動が制限されたり、上手く立ち回りたいところで不安に関連した身体面のブレーキがかかってしまったり、更には不安に伴う身体反応として動悸や発汗、息苦しさ、立ち眩みなど、私たちの生活に支障をきたしてしまうきっかけとなってしまいます。

『不安の症状が継続』してしまうとどうなるのか?

また、不安の症状が継続してしまうと、不安が付きまとってしまうこと、上手くいかなくなってしまった行動や生活に対する心理面への負担が重なってしまいます。

不安症では、うつ病や他の不安症である、パニック障害や全般性不安障害、社交不安症など様々な合併にもつなりやすいのです。

そしてまた、心への負担だけではなく、不眠や胃腸調子の悪さや震え・発汗などの身体へも影響が増えたり、その症状を更に強めてしまうことがあります。

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不安障害・不安症の起きやすさ。「遺伝」と「環境」とは

不安障害・不安症の起きやすさには、

  • 遺伝的背景
  • 経験的因子

が深く関係をしているとされています。

「遺伝的背景」とは疾患の家族歴なども関与しています。

一方で「経験的因子」とはストレスや失敗などが大きく関連をしており、生活上の出来事や経験から生じたこれらの体験が不安障害・不安症に強く関係していくのです。

つまりは、血縁のご家族の方に不安症の方がいる方や、成人後もストレスや失敗などの大きなきっかけは不安症へのリスクとなり得ます。

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小児期から「素因」を持っている人も実は多い

幼少期と素因との関係について

不安の傾向が強い人や神経質な面を持っていることも、不安症の素因となることがあります。

しかし、幼少期から大人になる過程で、集団生活における何らかの学びの中で上手く対処方法を身に付けていることも少なくありません。

たとえば、不安や心配をしやすい傾向の幼少期では、学校生活や集団行動の経過を経て、問題やその葛藤を経験することで、準備や自己防衛方法を学んで、小児・青年期にはうまく対処をする術を自然と身に着けていることもあります。

しかし、そのような修正方法を敢えて意識することなく学び、身に付けている人もいるので、不安の傾向が比較的強いことに対して、本人ですらなかなか気づかれにくいこともあるのです。

『恥』『失敗』に繋がる状況が、”成人期の不安と緊張を高めやすい”

成人期の『不安増強のきっかけ』と『恥』・『失敗』

『恥』・『失敗』といった状況は成人期の『不安増強のきっかけ』にも繋がります。

成人になるにつれて、不安や緊張の性質も少しづつ変わってきて、とてもプレッシャーのかかりやすい感情と言える状態になってきます。

特に、成人期になると、不安症や不安障害の引き金となりやすいストレスは、『恥』・『失敗』という側面とも強く関連してしまう場合もあり、「評価が落ちたらどうしよう」といった人間関係との支障にも繋がりやすくなる状況も相まり、不安に対するプレッシャーや気負いに強く繋がり、意図せず”不安症や不安障害”を発症させてしまうこともあります。

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不安障害にかかりやすい方の特徴とは

不安障害にかかりやすい方の特徴として、神経質であったり、完璧主義、過敏症などの傾向もある

不安障害にかかりやすい方の特徴として、神経質であったり、完璧主義、過敏症などの傾向も関連があり、失敗や恥の場面を極度のプッシャーとして抱えてしまいやすくなってしまいます。

しかしメリットとしては、精度の高い仕事をこなすことができてる傾向、失敗を未然に防いだり察知する能力に長けているとも言えます。

そしてこれらの傾向を、良くも悪くも自分の当たり前の気質として考えている方も多く自覚に乏しいこともあるのです。つまり、よくよく聞いてみると、自分は不安を感じている場面や緊張を強く感じる場面でも、友人のそれの感覚とは違うという気づきとなり、自分の性格の傾向を知ることもあります。

ストレスやプレッシャーへの感受性は環境や経験にも左右される

また、ストレスやプレッシャーというのは、その人の性格だけに左右はされません。

”ストレス”・”プレッシャー”と感じられるかどうかは、そのときの状況や、その人の性質や資質だけではなく、成育歴や学校などの集団行動での関わりなどの、経験も環境も大きく関連を受けてくるからです。

つまり、ストレスやプレッシャーを強く感じやすい状況やタイミング。更には、ストレスを高めやすい気質傾向などが複雑に繋がり、不安障害に至ってしまうことがあるのです。

不安障害・不安症の原因について

不安障害や不安症の原因として、自律神経系の働きのバランスが崩れて、特に交感神経系の緊張が強く働いてしまうために身体症状を強く引き起こしていると考えられています。

また、カフェインなどの刺激物でパニック発作を起こしやすくなることも分かっており、特定の物質誘因も指摘がされています。

なお、脳内においては、ホルモンバランスの調整が崩れてしまうことで、持続的な不安の継続に繋がりやすくなっているなどの報告もなされており、その関与としてはストレスで合成・放出されるコルチゾールやセロトニンなどのホルモンだけではなくアミノ酸などとの影響との関連が不安障害や不安症には指摘されています。

不安症や不安障害の頻度や男女比について

不安症・不安障害の頻度は実は多い

アメリカで4人に1人が少なくとも1つの不安症の診断基準に合致し、女性の生涯有病率が約30%、男性の生涯有病率は約15%という報告もあり、不安症や不安障害は決して珍しい病気ではないといえます。

また不安症や不安障害の男女比は、男性よりも女性の方が多く、女性が2に対して、男性は1の比率であると報告されています。

不安症・不安障害の症状エピソードを紹介

精神面の症状

  • 不安感や緊張が持続している
  • 身体の症状を含め、何か起きてしまうのではと不安
  • 失敗や恥をかくかもしれないと、人前での発言で不安
  • 不安の症状が強く、自分がどうにかなってしまう・死んでしまうかもしれないと不安
  • 閉鎖的な場所や広場で、自分に何か異変が起きて誰も助けてくれないかもしれないという不安
  • 不吉なことや、悪い病気にかかってしまっているかもしれない、悪いことが起きるかもしれないと不安
  • 恐怖のあまりに、叫びだしたい発狂したくなるほどの不安

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身体面の症状

  • めまい・耳鳴り
  • 動悸・胸部不快感
  • 発汗・赤面
  • 震え・しびれ
  • 冷え・ほてり
  • 胃部の不快感
  • 下痢・嘔吐
  • 頻尿・排尿促拍
  • 頭痛
  • ふらつき・失神

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不安症や不安障害の症状が、生活へ影響を与える結果とは・・・・

上記のような症状が
長引くと…

  • 1 . また起きるのではないかという心配で「不安」がもっと強くなってしまう

    不安や緊張してしまう場面が、再び起きてしまう事が不安で、そのような状況を避けて生活をしようとしてしまう
  • 2 . どうして、上手に振舞えないんだろうと自分を責めてしまう

    緊張や不安が出てしまう事を自ら強く否定をしてしまったり強く後悔してしまうために、結果として落ち込みや自分の自信の低下につながってしまう。うつ病や不眠症の併発を伴ってしまう事も
  • 3 . 人と合ったり、外出することが辛くなったりしんどくなる

    不安や緊張が強く出たりする状況を避けて自宅に引きこもってしまう傾向が出ることも。また不安や緊張には身体症状を伴うことが多く、倦怠感や体調不良と相まって更に生活が辛くなってしまう事も
  • 4 . 不安と感じるシーンが多くなってしまう

    過去の自分と比較して自信を失ってしまう

不安障害・不安症の治療とは

不安障害・不安症の治療には、薬物療法や精神療法などがあります

精神療法について

医療者と共に振り返ることで得られる気づきや冷静な整理も

不安症状が強く出現してしまっているその状況や背景というのは、お一人お一人異なります。

精神療法の一つとして、病状や状況を確認しながら、「不安」という感情、そしてその関連した身体症状についてのとらえ方やその時の変化を伺うことで、医療者と共に冷静にその時の振り返りを経ることが可能となります。

精神療法は特に認知面に注目をすることも

その取り組みを慎重に少しづつ重ねていくことで、「その時はこういう症状だった、だけど今は状況が変われば少し違ってくる」、「強烈な不安という感情であっても、一定の時間が経過すると少しづつではあるものの、落ち着きの傾向を見せる」といった体験との変化の確認を一つづつ進めていくことによる、「認知面への働きかけ」「症状の時の気づきと対処法」を組み立てていくこともあります。

もちろんこれらの取り組みは、不安症状が”まさに強い段階”で取り組むのではなく、少しづつ通院や治療が慣れてきたタイミングで自然に取り組むことも多い傾向にもあります。

また”こうするべき・こうあるべき・考え方を変えるべき。”という意気込みではなく、気付きを増やしていくために、敢えて区切った捉え方をしないというのも大切でもあります。

精神療法は認知面だけに注目するのではない

疾患の治療に於いて成功体験というのはときに大切でもあります。

比較的に身体症状が弱い不安状況に限定をしてからではありますが、”不安症状と身体症状が必ずしも永続するものではない事”から”乗り越えられるようになる感情であること”、といったように少しづつ成功体験を重ねられていけるように、日々の通院・治療との並行はとても大切です。

しかし先にも繰り返していますように、あくまでも型にはめ込みすぎずに、ご体調に応じて精神療法のひとつである支持療法やそのほかの精神療法を併用しながら治療をすることが一番大切であるように思います。

薬物療法について

抗うつ薬は不安症や不安障害の薬物療法でも効果が有効であるとされており、中心的な治療薬でもあります。

特にセロトニン作動性抗うつ薬であるSSRIなども適応があります。

セロトニン作動性抗うつ薬であるSSRIなどが治療薬として選択されることが多いです。

しかし、これらの抗うつ薬は治療の効果が表れるのに2週間程度の期間を要することが多く、時として即効性のある抗不安薬を併用しながら薬物療法を組み立てていくことも少なくありません。

なお、即効性のある抗不安薬であるベンゾジアゼピン系のお薬は耐性や依存の面からできうる限り減量できるときには減薬することが望ましいお薬であるので、症状の経過や抗うつ薬の効果をみながら適宜使用回数や用量を調整していくことが大切です。

薬物療法と精神療法だけではなく、日常生活のリズムを整えることも大切

不安症や不安障害の治療においては、睡眠や食事のリズムを整えることも大切です。

1日3食バランスの取れた食事は、睡眠や覚醒のリズムを整えることに繋がりますし、体調が許せば、軽い運動やウォーキングも有効です。日中に体を動かすことは、代謝を上げ体の調子を整えることにもつながります。

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不安症の対処方法とは

不安症かもと思った時には、

ご自身で判断なさりすぎず、心療内科,精神科,メンタルクリニックなどの医療機関へ相談されることをお勧めいたします。

不安症というのは、上手く感情がコントロールできないことや、不安や恐怖のために生活への制限が出てしまうなどの、支障や影響が出てしまうと、上手くできないことへの落ち込みに繋がったり、不安や恐怖に対する感情の悪化へと進行してしまうことがあるからです。

本人の困っている、不安や恐怖の程度というのは、周囲にもなかなか分かってもらいづらいことも多く、自分で我慢しすぎてしまうことで病状が進行してしまうことも少なくないからです。

周囲の対応はどうしたらよいのか

不安症や不安障害に身近な人がかかってしまったらどうしたらよいのでしょうか?

不安症や不安障害は、身体症状や持続的な不安感情が影響している疾患です。

そして大切なことは、「その人の勘違い」や「単なる不安症状の過大評価」ではなく、身体症状や不安感情の持続といった、心身や社会生活へ支障が出てしまっているという点は重要です。

他のメンタルの合併も多いということには注意が必要

また、特徴的な病状のために、思うように生活を送ることができず、よりもっと自信を落としてしまうなど、他にも別の不安症の併発やうつ病や不眠症をも合併してしまうこともあります。

本人も相談することを遠慮しがちであるという傾向も

「恥ずかしい」「馬鹿にされたらどうしよう」といった感情のために、なかなか周囲に相談できずにいる方も多く、相談できない環境も相まり、余計に不安や緊張を高めてサイクル化してしまっていることもあります。

そのためにも周囲の人から本人へ、「それは気にしすぎ」や「不安感情の否定」といった説得をすることが逆効果となってしまうこともあるという認識も大切です。また心療内科・精神科・メンタルクリニックなどの医療機関に相談されるよう助言することは、大切なアドバイスの一つとなり得ます。

よくあるご質問

FAQ

広場恐怖症とパニック症の関係について

広場恐怖症パニック症の関係は深く、パニック症にかかっている方の大多数が、広場恐怖症を含めた何らかの不安の症状を呈するとされています。

また広場恐怖症の方の3割程度の方が、発症の前後でパニック症あるいはパニック発作を呈していることも報告されています。

広場恐怖症の頻度について教えてください

広場恐怖症では、毎年、成人の約1~2%の人が広場恐怖症と診断されており、女性の方が男性よりも2倍広場恐怖症を経験しているとされています。

広場恐怖症の身体症状の特徴を教えてください

広場恐怖症の身体症状の特徴には、パニック発作と重複・あるいは類似する症状を呈することがあります。

例えば、めまいや失神・死んでしまうかもしれない感覚、吐き気や倒れてしまう感じ、非現実感などがあります。

ただし、パニック障害と異なり、広場恐怖症では予期されるパニック発作であることが特徴的であり、恐怖や恐れていることが起きてしまうかもしれない状況予期されたり、接する場面でいつも症状が誘発されるという点が特徴です。

ですが、パニック症や広場恐怖長が合併して長期化すると、予期されるか否かが判別が容易ではないこともしばしばです。

広場恐怖症の特徴とは何ですか?

広場恐怖症の特徴は、様々な状況にさらされたり、暴露されたりあるいはその可能性がある状況で、”逃げられないかもしれない”・”助けをすぐに得られないかもしれない”、という不安や恐怖が著しく高まってしまうことです。

駐車場や公園・駅・バス・タクシー・電車、映画館、列に並ぶこと、人ごみの中など出現しやすい状況については人それぞれです。

社交不安障害・社交不安症は遺伝をしますか?

社交不安障害・社交不安症は、遺伝要因と環境要因がそれぞれどのように関わっているのかはまだはっきりとはしていません。

しかし、両親などの近親者に社交不安障害や社交不安症にかかっている人は、そうでない人よりも3倍程度、社交不安障害にかかりやすいという、ある一定程度の家族歴の関連性についての報告があります。

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