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パニック症 /
パニック障害
パニック症 / パニック障害
公開日: 2022.04.21 更新日:2024.10.01
[ Index ]
パニック症 / パニック障害の「パニック」とは?
パニック症・パニック障害と聞くと、「パニック??」「パニックってどういう事?」と疑問に思う方はいらっしゃるかもしれません。
「パニック」という言葉のもつ印象や感じ方は、皆さんそれぞれに違い、それ故、なかなか病気としてのイメージが浮かびづらい方も多いのだと思います。
そのため、いざ症状が出てしまった時には、「まさか私がパニック障害!?」と思うよりも「何が起きたの!?」「どうしちゃったの!?」と困惑し医療機関へご相談される方も多い疾患でございます。ここでは、パニック症・パニック障害について詳しく解説を致しております。
日常生活で現れやすいサイン
- 何のきっかけもなく、急に強い呼吸の不快感を感じ、不安や恐怖を感じた
- 寝ている最中に息苦しさと呼吸のしづらさが出現した
- 仕事から帰って、自宅で過ごしていたら急に発汗と息苦しさが出現した
症状について
精神面の症状
- 発狂したくなる恐怖
- 叫んだり泣いてしまうかもしれない不安
- 症状のためにどうにかなってしまうかもしれないと不安
- 死んでしまうかもしれないという恐怖
- 現実ではない感じ
- 自分自身でない感じ(離人感)
身体面の症状
- 動悸
- 心拍数の増加
- 息切れ
- 呼吸困難・苦しさ
- 胸部の違和感
- 発汗
- 震え
- 息のしづらさ・窒息
- 吐き気
- 胃部・腹部の不快感
- めまい
- 立ちくらみ・失神感
- 暑さ・ほてり
- 寒気・寒さ
- うずき・感覚の高ぶり
上記のような症状が
長引くと…
-
1 . 不安や辛い症状が出たらどうしようと、外出がおっくうになる
外出先で辛い症状が出たらどうしようと不安で外出を制限してしまう -
2 . どうしたら不安が強くならないのか、症状が繰り返さないのか心配が尽きない
辛い発作が不安で、軽減するためや繰り返さないように行動を変化させたり心配が尽きなくなってしまう -
3 . 周りに大げさだと思われてしまわないか、助けてくれる人がいなかったらと症状を気にして行動を制限してしまう
深刻な症状であると周りと相談しても、なかなか分かってもらえず、一人で抱え込みやすかったり迷惑が掛からないようにと必要な社会行動を変容させてしまう事も
パニック障害とは、身体の病気・薬の副作用・食事の影響などに関係なく、何のきっかけもなく突然、動悸や息切れ・苦しさ・発汗・めまいなどの強い症状ともに、不安や恐怖が高ぶってしまう疾患を指しています。
パニック障害の特徴である、発症に何のきっかけもない事、苦痛の強い身体症状であること、高まっていく不安や恐怖の影響で、生活や仕事に行く事ができなくなったりするだけではなく、落ち込んでうつ病を合併してしまったり、パニック症/パニック障害以外の不安症も発症してしまうなどの影響もあります。そのため、パニック障害・パニック症は早期の診断と治療がとても大切な疾患なのです。
パニック障害・パニック症の特徴とは
パニック障害・パニック症の特徴には、身体的または精神的な症状が「強烈」で「強く不快」な症状であるという事も特徴です。また、詳しくはパニック障害・パニック症の診断基準を後にご紹介いたしますが、予期せず・突然生じること、症状が繰り返されること、更にはその症状に対する恐怖や不安の為に、外出ができない行動を制限してしまう等の日常生活や社会生活への影響がある事も特徴であります。
予期せず突然起きるパニック症状とは
予期せず・突然起きるパニック症状とは、どのような時が例として挙げられるでしょうか?
仕事中、家事の最中、あるいは仕事から帰って自宅でホッとした瞬間、就寝前に就寝中などなど、ありとあらゆる場面で起きえます。そして突然発症し、数分間でピークに達する強い症状である為に、恐怖・不安は大きく、発作が遠のいたとしても漠然とした不安緊張感が継続してしまいやすいことも特徴です。
パニック障害の頻度と、発症しやすい年代と男女差は
パニック障害の生涯有病率は1~4%と言われており、青年期から成人期ごろに発症のピークを迎えますが、50代以降では極端に初発率が下がる傾向にあります。しかしそうは言っても、幼少期の児童から高齢者まで幅広く発症すると言われています。
また、女性の方が男性よりも2~3倍かかりやすいと言われておりますが、男性に関しては診断に至っていないケースも多いのではないかと考えられています。
つまり、学生から社会人・主婦の年代に発症率が高い事と、パニック障害に関連した、この年代の方達の社会的活動への影響を考慮すると、少しでも症状の悪化や継続が最小限にとどめられるように医療機関と連携をしながら治療に取り組むことも大切なのです。
パニック発作とは
パニック発作とは、10分くらいで急速に症状が悪化していく不快な発作です。その後少しづつ和らいでゆきますが、数十分から長くても数時間かけて落ち着いていきます。
パニック発作とは、パニック障害だけに見られる症状ではありません。社交恐怖症・限局性恐怖症・広場恐怖症など、あらゆる不安症で見られます。特に、パニック障害は「予期しないパニック発作」ということが診断にも重要ですが、「予期しないパニック発作」に加えて、閉所や高所などパニック発作の引き金となる状況や特定の刺激で誘発される「状況依存的パニック発作」が混ざっていたからといって、パニック障害という診断が否定されるわけではありません。
パニック障害の経過とともに、最初のパニック発作は「予期しないパニック発作」であったにも関わらず、次第に状況に関連して出現するという変化をたどる方も多いのが事実だからです。
また、パニック障害の初期には、「予期しないパニック発作」が状況に依存せず自然に発生するものの、時として初期から”簡単な運動”や”軽い負荷”がかかった後にパニック発作が生じている方もいる点には、注意が必要です。
パニック障害のエピソードとは
パニック障害のエピソードの例を参考に記載いたしましたので、ご覧頂けましたら幸いです。
【パニック障害エピソード例①】仕事を終えて家に帰り、自宅でご飯の準備と食事を済ませました。食後、のんびりとテレビを見ている最中、特にホラーや映画などではないいつものテレビ番組であるにも関わらず、突然心臓の鼓動が早くなり、息が苦しく、気が遠のく感じがしてしまいました。約10分くらいで落ちつき始めましたが、あの辛い症状は何だったのだろうと不安で、しばらくは眠れませんでした。またその後、睡眠中に突然苦しくて目が覚めるという事が起きたり、あの辛い症状は何だったのだろう、また繰り返すのではと思うと不安で、眠れなくなるだけではなく、自宅に1人でいることが怖くて自宅に帰宅することがおっくうになってしまいました。
【パニック障害エピソード例②】友達と食事をしている最中に、突然苦しくて吐きそうになる症状が出てしまいました。苦しさは急激に悪化して、15分くらいでようやく落ち着きましたが、たびたび電車や学校の授業中に症状が出てしまうなどの繰り返しの症状がありました。また出たらどうしようと思うと、外出が困難になり、結果学業にも支障を来してしまう様になりました。
【パニック障害エピソード例③】会社でパソコンの仕事途中に、急に動悸とめまい、発汗が出現してしまいました。つらい症状はしばらくして落ち着きましたが、その後トイレや会議中など突然の症状は繰り返し起きてしまい、また次出たらどうしようと、怖くてついには仕事に行けなくなってしまいました。
【パニック障害エピソード例④】体育の授業で、ランニングがありました。ランニングを終えて間もなく、突然息が止まってしまったかのような苦しさや動悸が起きてしまいました。また、お風呂上りにしばらくして動悸と発汗が出てしまう等の症状が繰り返されるなど、死を強く意識してしまう位の発作であったために、走る事をはじめ、身体を動かす運動などを極力控えて行動を選択するようになってしまった。
あくまでもパニック障害を理解する上での参考となるようなエピソードの例を作成いたしました。
パニック症の心理的な誘発エピソードとは
パニック障害には、心理的な変化や影響が関係して発症を誘因すると考えられています。
これらの誘発・誘因エピソードは、エピソードに該当する人がパニック障害に絶対に罹るという訳ではなく、後に述べる遺伝や物質による多くの病因などと関連して発症すると考えられています。
ここでは心理的な誘発エピソードについて例を挙げました。
- 少しのことで、イライラや怒りが湧いてしまう
- 大切な人との別れがあった
- 責任や業務量が増えた
- 苦しい立場に追いやられているという想いが継続している
- 親が支配的で批判的であることに気が付いた
などあります。これらのきっかけや心理的変化は、最初は自覚されていないことも多いのですが、その後の経過や治療を進めていく上で、できれば把握すべき大切なエピソードである場合もあるのです。
パニック発作を誘発させやすい物質や生活習慣は
息苦しさなど呼吸系へのパニック症状を誘発させやすい物質として、二酸化炭素の濃度の上昇や乳酸ナトリウム、重炭酸塩などがあります。そのほかにもカフェインやアルコールの摂取が誘発させやすい因子となったり、睡眠不足や照明が強すぎるなどの影響も関与することがあるとされています。
パニック障害の原因について
脳の変化として、海馬・扁桃体・中脳・視床下部・大脳辺縁系、青斑核の機能や構造的な変化が、不安感情への調整の変化やパニック様行動への刺激へとつなっていると考えられています。これらの機能の変化は、脳細胞や、脳細胞のシナプス間で作用する、神経伝達物質であるノルエピネフリン系・セロトニン系が関係していると考えらえ、パニック障害では特にセロトニン系の働きの調整や機能の変化が影響して、脳細胞や脳への機能の変化をもたらしていると考えられています。しかし、まだ詳細なメカニズムはまだはっきりと分かっていない部分も多いのです。
遺伝要因とパニック患者への影響は示されております。パニック症患者が、第一度近親者にいる場合にはパニック症の発症率が、そうでない精神科近親者を持つ人と比べて4~8倍に上昇すると言われているのです。
パニック障害の合併症について
パニック障害の患者さんの多くは別のメンタルの不調や精神疾患を持っているとされています。ある報告によると、9割のパニック障害の患者さんは別の精神疾患を持っていると言われています。
また、特にうつ病との合併率は高く、パニック障害の2人に1人はうつ病にかかっているとも報告されており、不安症の一つである、広場恐怖症も合併率は高く、社交不安症や限局性恐怖症、全般性不安症、強迫性障害など様々な疾患とも合併すると考えられています。
【ICD-10】パニック障害の診断基準とは
ICD-10 に記載のあるパニック障害の診断基準(DCR-10)について、簡潔にまとめさせていただきました。
ICD-10は疾患の世界的な疾病分類で、特にDCR-10 はICD-10に基づいた精神科の一般臨床上で診断のための基準について記載されています。
診断基準A
パニック発作が反復性におき、特別・特定の状況下に限って発作が起こるのではなく、”予期せず”・”自然に”起きることが多い。またその状況は、生命や身体の危険・危機にさらされる状況や懸命な努力の必要な状況ではない。
診断基準B
パニック発作は以下の(1)~(4)のすべてを特徴としています
(1)激しい恐怖や不安とは、明らかに異なるエピソードでの出現
(2)突発的・突然の開始
(3)数分程度でピークに達し、継続する症状
(4)以下の症状のどれか4つを満たす。しかし、(a)~(d)の自律神経の症状をどれか1つ以上は含んでいること
- 動悸、脈が速くなる、強く脈打つ
- 発汗
- 震えや振戦
- 口渇
- 呼吸困難・苦しさ
- 窒息感・息が詰まる感じ
- 胸部の不快感や胸部の疼痛
- 悪心や腹部の苦悶や違和感
- めまい・ふらつき・気が遠くなる、倒れてしまう感じ
- 現実的ではない感じ、離人感
- 自制ができない、我慢できない、気が狂いそう・発狂しそう、気を失ったしまうかもしれない感じ
- 死ぬのではないかという恐怖
- 寒気・ほてり・紅潮
- しびれ・チクチクする痛み・感覚
a~dは、自律神経性の刺激による症状
e~hは、胸部・腹部に関する症状
i~lは、精神状態に関する症状
m、nは全身的な症状
として項目を列挙しています
診断基準C
除外基準としてこれらパニック発作が身体的な障害や器質因、更には統合失調症や気分障害、身体表現性障害のような他の精神障害ではないことが診断には必要です。
中等度のパニック障害と重度のパニック障害の違いとは
中等度は、4週間の間に、4回以上のパニック発作が出現することであり、
重度とは、4週間以上の間、各週4回以上のパニック発作が出現することです。
パニック発作とは、先に述べた診断基準Bの(1)~(4)を満たす症状を指します。
【DSM-5】のパニック障害の診断基準とは
米国診療でも用いられる診断基準、DSM-5 もご紹介を致します。
DSM-5:診断基準A
予期しない繰り返される発作(以下の症状の4つ以上が該当する発作)が、数分内でピークに達して恐怖や強烈な不快感を伴う。
- 動悸・ドキドキ・心拍数の増加
- 発汗・汗が出る
- 震え・新鮮
- 息切れ・息苦しさ
- 窒息感・息が詰まる感じ
- 胸痛・胸部の不快感
- 吐き気・腹部の不快感
- めまい・ふらつく感じ・気が遠くなる感じ
- 寒気・熱感
- うずく感じ・異常感覚
- 離人感・現実消失の感覚
- 抑制力が無くなる・どうかなってしまうかもしれない恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
DSM-5:診断基準B
以下のどれかが、1か月以上継続している
またパニック発作が起きてしまうのではないかという心配や恐怖が持続している
パニック発作を避けるために回避行動があるなど、発作に関連した不適切な行動変化ががある
DSM-5:診断基準C
薬物や物質の作用による症状や原因ではない、またはその他の器質的疾患による影響ではない。
DSM-5:診断基準D
他の精神障害・精神疾患によって説明される症状ではない
ICD-10の診断基準と、DSM-5 の診断基準との比較
パニック障害に関しては、ICD-10もDSM-5の診断基準も、パニック発作に関して明確に定義していることが特徴でもあります。
予期しないことや、その反応性の症状が出るにふさわしくない場面での出現であることなどを特に重視しています。
また、その症状のピークが数分程度といった短時間である事も言及している事は、その他の精神疾患との鑑別にも大きく繋がりますし、そして何よりも器質的な疾患が原因でないことを除外する必要性がパニック障害・パニック症に関しては特に重要であると言えます。
また、ICD-10のように、特に重度・中等度という明確な発作回数での区別をしている点には大変興味深く、パニック発作という回数や、症状のコントロールの重要性が治療の面でも大切な指標であるかを示していると言えると思います。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
パニック障害の治療に関して
パニック障害・パニック症では、合併症の有無にもよりますが、治療によっては症状の著しい改善を望むことが可能です。
ここでは、薬物療法や認知行動療法などのパニック障害・パニック症の治療について解説を行います。
治療法1 : 適切な休養
うつ病では適切な休養も重要です。特に十分な睡眠や体力の回復は、メンタル面への安定化も促す効果があるのです。 疲れている・倦怠感が強いからしっかりと休むという事は肉体を休めて体力を回復させるだけではなく、次第に不安定な精神面や落ち込みの強さを緩和してくれるのです。 もちろん会社勤めや家事を休むためにはいかないという状況の方も多いと思いますし、お一人お一人のうつ病の症状に応じて提案される治療となります。
治療法2 : 薬物療法
抗うつ薬と呼ばれるお薬治療が一般的ですが、不安症状や睡眠症状に応じて、抗不安薬や睡眠薬が併用されることがあります。 特に抗うつ薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)だけでななく、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)やS-RIM(セロトニン再取り込み阻害作用ならびにセロトニン受容体調節作用)、TCA(三環系抗うつ薬)、四環系抗うつ薬、5-HT2Aがあります。内服後効果が出るのに2週間から4週間程度かかりますが、脳神経や伝達物質の調整に働きかけて抑うつ症状や不安症状の改善緩和を図る治療薬となります。また、良い状態を保つ効果もありますので、うつ病の症状が良くなってもすぐに中止するのではなく、ゆっくりと減薬をしてから減らすという事もうつ病を繰り返させないという点でも大切です。 また、睡眠薬や抗不安薬も抗うつ薬の効果がきちんと現れるまでに併用したりするなどの方法で症状をコントロールしながら治療に取り組んでいく事もあります。
治療法3 : 精神療法
うつ病にかかってしまうと、自分の自信の低さや無価値観などの強いネガティブな考え方が、不適切な程強く身についてしまっていることもあるのです。 必要以上に自分を卑下したり、自分を否定したりなどの影響のために、より社会性が損なわれてしまったり、新たなストレスへの対応力の低下にも大きく影響してしまっているのです。うつ病の治療や症状が回復し始めたタイミングで、極端な自己の考え方の見直しがあれば通院を通しながら見つめなおしたり、社会性やストレス適応力、生活への助言を行う事があります。
対応の仕方
うつ病にかかってしまった急性期には休養や治療が大切
うつ病にかかってしまった時には、本人すら焦ったり、否定してネガティブに考えすぎてしまったりなどの状況があるかもしれません。 そのような時には、ゆっくりと休むことや治療に集中することに対して強く抵抗を感じてしまう事も多いと思います。 周囲から、しっかりと治療をすることの大切さや、今はしっかりと休んで体調を整えることの必要性などのアドバイスは、本人にとって、より落ち着ついて治療に取り組むことができる安心感にも繋がります。