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パニック症 /
パニック障害
パニック症 / パニック障害
公開日: 2024.11.18 更新日:2024.11.18
[ Index ]
「パニック」とは?
パニック症 / パニック障害の「パニック」とは?
パニック症・パニック障害と聞くと、
- 「パニックの病気って何だろう??」
- 「パニック症ってつまりどういう病気のこと?」
と疑問に思う方はいらっしゃるかもしれません。
「パニック」という言葉のもつ印象や感じ方は、「危機」・「不安」というイメージを多くの方はお持ちだと思いますが、一方で、「パニック障害」「パニック症」というのが、どんな病気を指すのかというのはなかなかイメージが浮かびづらいのではないでしょうか?
いざ、発作が起きた時。何が起きたの!?という感覚を持つ方が非常に多い
そのため、いざパニック症の症状が出てしまった時には、「まさか私がパニック障害!?」と思うよりも「何が起きたの!?」「どうしちゃったの!?」と困惑し医療機関へご相談される方も多い疾患です。
突然の不安や恐怖を感じた時に
突然の不安や恐怖を感じるとき。パニック症の可能性とは?
「突然心臓がバクバクして、息ができなくなる」「何もない場所で急に強い恐怖に襲われる」——このような症状や不調が出てしまうことが日常生活において起きてしまうことがあります。
これらは「パニック症」の症状で、あなたもそんな経験があるかもしれません。実は、パニック症は決して珍しいものではなく、世界中で多くの人が抱える悩みです。しかし、パニック症が引き起こす不安や恐怖は、適切な対処法を知ることで軽減できることがあります。
この記事では、パニック症の基本的な知識から、効果的な治療法まで、詳しく解説します。
パニック障害とは
パニック障害(パニック症)とは、強い不安や恐怖が繰り返し出現したり、突然と現れてしまう疾患です。
そのような、強い不安や恐怖というのはパニック発作と呼ばれ、感情だけの症状を指すのではありません。
- 心臓がどきどきする
- 急に汗が噴き出る
- 息が苦しい
- 体が発狂しそうになる
など、様々な強い恐怖や不安に関連する症状を指しています。
そして、予期せず症状が出現したり、外出先で起きてしまう恐怖のあまりに、外出ができない、電車や交通機関が利用できない、会社や学校に行けない。などの支障を来してしまう特徴があります
パニック症とは「不安症」のひとつ
パニック症は、不安症の一つです。
不安症には、パニック症や、全般性不安障害、社交不安症、広場恐怖症、限局性恐怖症、分離不安症、選択性緘黙が含まれています。
それぞれの不安症には、当然治療の共通点もあります。
またどの不安症も、比較的若年者に発症しやすいことも特徴であり、合併し合う不安症が多いというのも特徴です。
日常生活で現れる【パニック症のサイン】とは
- 何のきっかけもなく、急に強い呼吸の不快感を感じ、不安や恐怖を感じた
- 寝ている最中に息苦しさと呼吸のしづらさが出現した
- 仕事から帰って、自宅で過ごしていたら急に発汗と息苦しさが出現した
詳しい【パニックの症状】とは
精神面の症状
- 発狂したくなる恐怖
- 叫んだり泣いてしまうかもしれない不安
- 症状のためにどうにかなってしまうかもしれないと不安
- 死んでしまうかもしれないという恐怖
- 現実ではない感じ
- 自分自身でない感じ(離人感)
身体面の症状
- 動悸
- 心拍数の増加
- 息切れ
- 呼吸困難・苦しさ
- 胸部の違和感
- 発汗
- 震え
- 息のしづらさ・窒息
- 吐き気
- 胃部・腹部の不快感
- めまい
- 立ちくらみ・失神感
- 暑さ・ほてり
- 寒気・寒さ
- うずき・感覚の高ぶり
上記のような症状が
長引くと…
-
1 . 不安や辛い症状が出たらどうしようと、外出がおっくうになる
外出先で辛い症状が出たらどうしようと不安で外出を制限してしまう -
2 . どうしたら不安が強くならないのか、症状が繰り返さないのか心配が尽きない
辛い発作が不安で、軽減するためや繰り返さないように行動を変化させたり心配が尽きなくなってしまう -
3 . 周りに大げさだと思われてしまわないか、助けてくれる人がいなかったらと症状を気にして行動を制限してしまう
深刻な症状であると周りと相談しても、なかなか分かってもらえず、一人で抱え込みやすかったり迷惑が掛からないようにと必要な社会行動を変容させてしまう事も
パニック障害とは、身体の病気・薬の副作用・食事の影響などに関係なく、何のきっかけもなく突然、動悸や息切れ・苦しさ・発汗・めまいなどの強い症状ともに、不安や恐怖が高ぶってしまう疾患を指しています。
パニック障害の特徴である、発症に何のきっかけもない事、苦痛の強い身体症状であること、高まっていく不安や恐怖の影響で、生活や仕事に行く事ができなくなったりするだけではなく、落ち込んでうつ病を合併してしまったり、パニック症/パニック障害以外の不安症も発症してしまうなどの影響もあります。そのため、パニック障害・パニック症は早期の診断と治療がとても大切な疾患なのです。
パニック障害・パニック症の特徴とは
パニック障害・パニック症の特徴には、身体的または精神的な症状が「強烈」で「強く不快」な症状であるという事も特徴です。また、詳しくはパニック障害・パニック症の診断基準を後にご紹介いたしますが、予期せず・突然生じること、症状が繰り返されること、更にはその症状に対する恐怖や不安の為に、外出ができない行動を制限してしまう等の日常生活や社会生活への影響がある事も特徴であります。
予期せず突然起きるパニック症状とは
予期せず・突然起きるパニック症状とは、どのような時が例として挙げられるでしょうか?
仕事中、家事の最中、あるいは仕事から帰って自宅でホッとした瞬間、就寝前に就寝中などなど、ありとあらゆる場面で起きえます。そして突然発症し、数分間でピークに達する強い症状である為に、恐怖・不安は大きく、発作が遠のいたとしても漠然とした不安緊張感が継続してしまいやすいことも特徴です。
パニック障害の頻度と、発症しやすい年代と男女差は
パニック障害の生涯有病率は1~4%と言われており、青年期から成人期ごろに発症のピークを迎えますが、50代以降では極端に初発率が下がる傾向にあります。しかしそうは言っても、幼少期の児童から高齢者まで幅広く発症すると言われています。
また、女性の方が男性よりも2~3倍かかりやすいと言われておりますが、男性に関しては診断に至っていないケースも多いのではないかと考えられています。
つまり、学生から社会人・主婦の年代に発症率が高い事と、パニック障害に関連した、この年代の方達の社会的活動への影響を考慮すると、少しでも症状の悪化や継続が最小限にとどめられるように医療機関と連携をしながら治療に取り組むことも大切なのです。
パニック発作について
パニック発作とは、10分くらいで急速に症状が悪化していく不快な発作です。その後少しづつ和らいでゆきますが、数十分から長くても数時間かけて落ち着いていきます。
パニック発作とは、パニック障害だけに見られる症状ではありません。社交恐怖症・限局性恐怖症・広場恐怖症など、あらゆる不安症で見られます。特に、パニック障害は「予期しないパニック発作」ということが診断にも重要ですが、「予期しないパニック発作」に加えて、閉所や高所などパニック発作の引き金となる状況や特定の刺激で誘発される「状況依存的パニック発作」が混ざっていたからといって、パニック障害という診断が否定されるわけではありません。
パニック障害の経過とともに、最初のパニック発作は「予期しないパニック発作」であったにも関わらず、次第に状況に関連して出現するという変化をたどる方も多いのが事実だからです。
また、パニック障害の初期には、「予期しないパニック発作」が状況に依存せず自然に発生するものの、時として初期から”簡単な運動”や”軽い負荷”がかかった後にパニック発作が生じている方もいる点には、注意が必要です。
パニック障害のエピソードとは
パニック障害のエピソードの例を参考に記載いたしましたので、ご覧頂けましたら幸いです。
【パニック障害エピソード例①】
仕事を終えて家に帰り、自宅でご飯の準備と食事を済ませました。食後、のんびりとテレビを見ている最中、特にホラーや映画などではないいつものテレビ番組であるにも関わらず、突然心臓の鼓動が早くなり、息が苦しく、気が遠のく感じがしてしまいました。約10分くらいで落ちつき始めましたが、あの辛い症状は何だったのだろうと不安で、しばらくは眠れませんでした。またその後、睡眠中に突然苦しくて目が覚めるという事が起きたり、あの辛い症状は何だったのだろう、また繰り返すのではと思うと不安で、眠れなくなるだけではなく、自宅に1人でいることが怖くて自宅に帰宅することがおっくうになってしまいました。
【パニック障害エピソード例②】
友達と食事をしている最中に、突然苦しくて吐きそうになる症状が出てしまいました。苦しさは急激に悪化して、15分くらいでようやく落ち着きましたが、たびたび電車や学校の授業中に症状が出てしまうなどの繰り返しの症状がありました。また出たらどうしようと思うと、外出が困難になり、結果学業にも支障を来してしまう様になりました。
【パニック障害エピソード例③】
会社でパソコンの仕事途中に、急に動悸とめまい、発汗が出現してしまいました。つらい症状はしばらくして落ち着きましたが、その後トイレや会議中など突然の症状は繰り返し起きてしまい、また次出たらどうしようと、怖くてついには仕事に行けなくなってしまいました。
【パニック障害エピソード例④】
体育の授業で、ランニングがありました。ランニングを終えて間もなく、突然息が止まってしまったかのような苦しさや動悸が起きてしまいました。また、お風呂上りにしばらくして動悸と発汗が出てしまう等の症状が繰り返されるなど、死を強く意識してしまう位の発作であったために、走る事をはじめ、身体を動かす運動などを極力控えて行動を選択するようになってしまった。
あくまでもパニック障害を理解する上での参考となるようなエピソードの例を作成いたしました。
パニック症の心理的な誘発エピソードとは
パニック障害には、心理的な変化や影響が関係して発症を誘因すると考えられています。
これらの誘発・誘因エピソードは、エピソードに該当する人がパニック障害に絶対に罹るという訳ではなく、後に述べる遺伝や物質による多くの病因などと関連して発症すると考えられています。
ここでは心理的な誘発エピソードについて例を挙げました。
- 少しのことで、イライラや怒りが湧いてしまう
- 大切な人との別れがあった
- 責任や業務量が増えた
- 苦しい立場に追いやられているという想いが継続している
- 親が支配的で批判的であることに気が付いた
などあります。これらのきっかけや心理的変化は、最初は自覚されていないことも多いのですが、その後の経過や治療を進めていく上で、できれば把握すべき大切なエピソードである場合もあるのです。
パニック発作を誘発させやすい物質や生活習慣は
息苦しさなど呼吸系へのパニック症状を誘発させやすい物質として、二酸化炭素の濃度の上昇や乳酸ナトリウム、重炭酸塩などがあります。そのほかにもカフェインやアルコールの摂取が誘発させやすい因子となったり、睡眠不足や照明が強すぎるなどの影響も関与することがあるとされています。
パニック障害の原因について
脳の変化として、海馬・扁桃体・中脳・視床下部・大脳辺縁系、青斑核の機能や構造的な変化が、不安感情への調整の変化やパニック様行動への刺激へとつなっていると考えられています。これらの機能の変化は、脳細胞や、脳細胞のシナプス間で作用する、神経伝達物質であるノルエピネフリン系・セロトニン系が関係していると考えらえ、パニック障害では特にセロトニン系の働きの調整や機能の変化が影響して、脳細胞や脳への機能の変化をもたらしていると考えられています。しかし、まだ詳細なメカニズムはまだはっきりと分かっていない部分も多いのです。
遺伝要因とパニック患者への影響は示されております。パニック症患者が、第一度近親者にいる場合にはパニック症の発症率が、そうでない精神科近親者を持つ人と比べて4~8倍に上昇すると言われているのです。
パニック障害の合併症について
パニック障害の患者さんの多くは別のメンタルの不調や精神疾患を持っているとされています。ある報告によると、9割のパニック障害の患者さんは別の精神疾患を持っていると言われています。
また、特にうつ病との合併率は高く、パニック障害の2人に1人はうつ病にかかっているとも報告されており、不安症の一つである、広場恐怖症も合併率は高く、社交不安症や限局性恐怖症、全般性不安症、強迫性障害など様々な疾患とも合併すると考えられています。
【ICD-10】パニック障害の診断基準とは
ICD-10 に記載のあるパニック障害の診断基準(DCR-10)について、簡潔にまとめさせていただきました。
ICD-10は疾患の世界的な疾病分類で、特にDCR-10 はICD-10に基づいた精神科の一般臨床上で診断のための基準について記載されています。
診断基準A
パニック発作が反復性におき、特別・特定の状況下に限って発作が起こるのではなく、”予期せず”・”自然に”起きることが多い。またその状況は、生命や身体の危険・危機にさらされる状況や懸命な努力の必要な状況ではない。
診断基準B
パニック発作は以下の(1)~(4)のすべてを特徴としています
(1)激しい恐怖や不安とは、明らかに異なるエピソードでの出現
(2)突発的・突然の開始
(3)数分程度でピークに達し、継続する症状
(4)以下の症状のどれか4つを満たす。しかし、(a)~(d)の自律神経の症状をどれか1つ以上は含んでいること
- 動悸、脈が速くなる、強く脈打つ
- 発汗
- 震えや振戦
- 口渇
- 呼吸困難・苦しさ
- 窒息感・息が詰まる感じ
- 胸部の不快感や胸部の疼痛
- 悪心や腹部の苦悶や違和感
- めまい・ふらつき・気が遠くなる、倒れてしまう感じ
- 現実的ではない感じ、離人感
- 自制ができない、我慢できない、気が狂いそう・発狂しそう、気を失ったしまうかもしれない感じ
- 死ぬのではないかという恐怖
- 寒気・ほてり・紅潮
- しびれ・チクチクする痛み・感覚
a~dは、自律神経性の刺激による症状
e~hは、胸部・腹部に関する症状
i~lは、精神状態に関する症状
m、nは全身的な症状
として項目を列挙しています
診断基準C
除外基準としてこれらパニック発作が身体的な障害や器質因、更には統合失調症や気分障害、身体表現性障害のような他の精神障害ではないことが診断には必要です。
中等度のパニック障害と重度のパニック障害の違いとは
中等度は、4週間の間に、4回以上のパニック発作が出現することであり、
重度とは、4週間以上の間、各週4回以上のパニック発作が出現することです。
パニック発作とは、先に述べた診断基準Bの(1)~(4)を満たす症状を指します。
【DSM-5】のパニック障害の診断基準とは
米国診療でも用いられる診断基準、DSM-5 もご紹介を致します。
DSM-5:診断基準A
予期しない繰り返される発作(以下の症状の4つ以上が該当する発作)が、数分内でピークに達して恐怖や強烈な不快感を伴う。
- 動悸・ドキドキ・心拍数の増加
- 発汗・汗が出る
- 震え・新鮮
- 息切れ・息苦しさ
- 窒息感・息が詰まる感じ
- 胸痛・胸部の不快感
- 吐き気・腹部の不快感
- めまい・ふらつく感じ・気が遠くなる感じ
- 寒気・熱感
- うずく感じ・異常感覚
- 離人感・現実消失の感覚
- 抑制力が無くなる・どうかなってしまうかもしれない恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
DSM-5:診断基準B
以下のどれかが、1か月以上継続している
またパニック発作が起きてしまうのではないかという心配や恐怖が持続している
パニック発作を避けるために回避行動があるなど、発作に関連した不適切な行動変化ががある
DSM-5:診断基準C
薬物や物質の作用による症状や原因ではない、またはその他の器質的疾患による影響ではない。
DSM-5:診断基準D
他の精神障害・精神疾患によって説明される症状ではない
ICD-10の診断基準と、DSM-5 の診断基準との比較とは
パニック障害に関しては、ICD-10もDSM-5の診断基準も、パニック発作に関して明確に定義していることが特徴でもあります。
予期しないことや、その反応性の症状が出るにふさわしくない場面での出現であることなどを特に重視しています。
また、その症状のピークが数分程度といった短時間である事も言及している事は、その他の精神疾患との鑑別にも大きく繋がりますし、そして何よりも器質的な疾患が原因でないことを除外する必要性がパニック障害・パニック症に関しては特に重要であると言えます。
また、ICD-10のように、特に重度・中等度という明確な発作回数での区別をしている点には大変興味深く、パニック発作という回数や、症状のコントロールの重要性が治療の面でも大切な指標であるかを示していると言えると思います。
パニック症は広場恐怖症とも合併しやすい
パニック症の特徴的な症状である、パニック発作は、強い不安や恐怖を伴う身体的にも精神的にも苦痛の強い症状であるために、「また起きるのではないか?」「出かけ先で発作が起きたらどうしよう…」といった「予期不安」が生じてしまいます。
その結果として、【すぐに逃げ出せない場所】・【自分の事をすぐに助けてくれないかもしれない場所】やそのような環境について強い不安や緊張を感じてしまったり、パニック発作を起こしてしまい、広場恐怖症を合併してしまうのです。
- 駅
- 電車
- バス
- 飛行機
- 人ごみの多いデパートなどの空間
- エレベーター
- トンネル
- 映画館
等などがあります
予期不安と回避行動が生活を制限してしまう
予期不安
パニック障害では、パニック症の特徴的な症状である、パニック発作は、強い不安や恐怖を伴う身体的にも精神的にも苦痛の強い症状であるために、「また起きるのではないか?」「出かけ先で発作が起きたらどうしよう…」といった「予期不安」が生じてしまうことは先にも紹介をしました。
ですが、この予期不安というのは、不安症やパニック障害にかかってしまうと、ずっといつも頭の中をぐるぐると駆け巡ることもあったり、なかなか不安感情が解消されない傾向に陥ってしまいます。
回避行動
パニック発作は苦痛が強い症状であるために、パニック発作が起きてしまった場所や、状況を極端に避けるようになってしまい、会社に行けない、通勤ができないなどの状況になってしまうことがあります。
また、不安が少しでも軽くなるように、外出を避けてしまうようになってしまうことも少なくありません。
これらをパニック症に伴う、回避行動となりますが、パニック発作に伴う支障とも言えます。
実はうつ病あるいはうつ状態を合併していることも
パニック症には、うつ病やうつ状態の合併も多く、パニック症でお困りの方の半分程度の方に認められると言われています。
- 不安や恐怖が強いこと
- 身体的にも苦痛のあるパニック発作があること
- 不安や恐怖に対して常に気にしながら生活をすることが増えてしまった事
- パニック症のために生活に支障が出ている事
などの影響もあり、抑うつや落ち込みの感情が強く、場合によってはうつ病の合併となってしまうのです。
パニック障害やパニック症の治療とは
パニック障害・パニック症では、合併症の有無にもよりますが、治療によっては症状の著しい改善を望むことが可能です。
ここでは、薬物療法や認知行動療法などのパニック障害・パニック症の治療について解説を行います。
治療法1 : 適切な休養
パニック症では適切な休養も重要です。というのもパニック症では不眠症状を合併していることも少なくありません。
また特に十分な睡眠や体力の回復は、メンタル面への安定化も促す効果があるのです。 疲れている・倦怠感が強いからしっかりと休むという事は肉体を休めて体力を回復させるだけではなく、次第に不安定な精神面や落ち込みの強さを緩和してくれるのです。 もちろん会社勤めや家事を休むためにはいかないという状況の方も多いと思いますし、お一人お一人のうつ病の症状に応じて提案される治療となります。
治療法2 : 薬物療法
パニック症や不安症の薬物治療のとしては抗うつ薬が有効です。抗うつ薬はうつ病の治療薬としても中心的な薬物です。
特に抗うつ薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)だけでななく、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)やS-RIM(セロトニン再取り込み阻害作用ならびにセロトニン受容体調節作用)、TCA(三環系抗うつ薬)、四環系抗うつ薬、5-HT2Aがあります。
内服後効果が出るのに2週間から4週間程度かかりますが、脳神経や伝達物質の調整に働きかけて不安症状や抑うつ症状の改善緩和を図る治療薬となります。
また、不安症状や睡眠症状の病状に応じて、抗うつ薬に加えて抗不安薬や睡眠薬が併用されることもあります。またパニック発作を軽減する目的で、短時間作用型の抗不安薬を頓服で併用することもあります。
抗不安薬は比較的即効性が得られる薬剤が多い一方で、依存・耐性という抗不安薬の特徴もあるために、抗うつ薬との併用開始後は、抗うつ薬の治療効果をみながら、適切な抗不安薬の減量が大切となります。
治療法3 : 精神療法
パニック症や不安症にかかってしまうと、不安という感情について過敏に対処や心配をしてしまいやすくなってしまいます。
- あの強いパニック発作がまた起きてしまうのではないか
- 発作が起きた場所に行くと再度発作が起きてしまうかもしれない
- 不安が高まりすぎないような生活を送ろう
- 不安が起きないような行動を選択しよう
- 不安を減らす生活そのものを求めようとしてしまう
上記に紹介しましたように、パニック発作とその恐怖が、更に不安をずっと大きく高めてしまう『負のサイクル』を生んでしまうのです。
また、日常生活への支障や、繰り返されるパニック発作や、強くなっていく不安感情のために、悩んだり落ち込みが強くなるだけではなく、自分に自信がなくなってしまう、自分を卑下したり自分を否定したりなどの心理的な影響も出てしまいます。
パニック症の治療や症状が回復し始めたタイミングで精神療法のような、極端な自己の考え方の見直しがあれば通院を通しながら見つめなおしたり、社会性やストレス適応力、生活への助言や働きかけを行うこともあります。
パニック症の症状や発作が出た時の対処法とは
パニック発作が起きた時
まずは落ち着けるよう、もし車道の真ん中など危険なところにいる時は少し離れたり車を止めて、ゆっくり呼吸を大きくするようにしましょう。
落ち着くための呼吸
特に動悸や息苦しさ、詰まる感じを感じた時、ゆっくり大きく。を意識して呼吸を整えましょう。少しづつ呼吸がゆっくり繰り返されることで、身体的な変化が落ち着く助けにもなります。
気を紛らわす、五感を利用した取り組み
不安や恐怖が高まる兆候を感じたら、思い切って、違うことをトライしてみたりすることも、気を紛らわす助けになります。
- 音楽を聴いたり
- 好きな写真や動画をみたり
- ゲームをしたり
- アロマをかいだり
- 温かい飲みものや冷たいペットボトルを握ったり
人間の五感の一つが、恐怖や不安とは異なる感覚を得られることで、症状の和らぎが得やすくなります。
親しい人からの声を聞くことも
強い症状であるほど、「ダメかもしれない」「本当に怖い!!」と恐怖と不安が強くなってしまいます。その時には、周囲からの「大丈夫だよ」「傍にいるよ」という語りかけは、辛い症状の軽減に繋がります。
自分を客観的に見つめてみることも
パニック発作の特徴としては数分から10分程度で症状のピークが落ち着くことも多く、自らを客観的に観察しながら、落ち着けるように仕向けることも軽減させるための手法にはなります。
例えば、自分で「大丈夫。大丈夫だよ。」と語りかけたり、「今はつらくてももう少しだから、大丈夫だよ。落ち着いて。」「ほら。少しづつ落ち着いてきたね。もう少しだよ」というように、自らを客観的に観察しながら、自分自身に語りかけることで、症状を少しづつコントロールし、次第に強い発作の頻度も下がり、結果として克服されていく方もいらっしゃいます。
パニック症かもと思った時は
パニック症の特徴であるパニック発作は、突如として発症し、「経験したことのない苦痛の伴う症状であること」や「とてもびっくりして恐ろしかった」と戸惑い、クリニックへご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
また、発作が繰り返されることで、より不安や恐怖が強くなり、パニック症も悪化してしまうことがあるので、お早めに心療内科,精神科,メンタルクリニックなどの医療機関へご相談されることをお勧めします。
周囲の方々の対応の仕方について
パニック症でつらいとき。周囲の方の、寄り添いが安心感に
パニック症にかかってしまった時、パニック発作が出てしまった時には、突然のあまり本人が焦ったり、驚いて怖くなってしまう、否定してネガティブに考えすぎてしまったりなどの状況があるかもしれません。
また治療と言えども、ゆっくりと休むことに対して強く抵抗を感じてしまう方も少なくなく、 周囲から、しっかりと治療をすることの大切さや、今はしっかりと休んで体調を整えることの必要性などのアドバイスは、本人にとって、より落ち着ついて治療に取り組むことができる安心感にも繋がります。
野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など