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適応障害
適応障害
公開日: 2022.04.21 更新日:2024.10.01
[ Index ]
適応障害とは
適応障害は身近なイベントでも起きうるのです
適応障害は、比較的日常的な出来事で起きうる疾患です。仕事上での地位の変化や異動など、決して並外れたことではないにも関わらず、そしてこれまでは乗り越えられていたものも、不安や抑うつ症状などの感情や行動面が強く出て順応できなくなってしまうのです。
適応障害は、以前は「心因反応」「抑うつ反応」「軽症のうつ病」などと表現されていることもありました。
ここでは適応障害に関する特徴について解説を行っております。
適応障害って何だろう?
実は日々の生活で起きえるのです
適応障害って実は多くの方が聞いたことあるのではないでしょうか?
しかし、具体的にはどのようなことを指しているのか分かりづらい部分が多いかもしれません。
適応障害は、会社の昇進や異動・業務内容の変化や増加、更には引越や結婚等、比較的日常的な状況下で起きうるのです。
また、これまでの昇進や引越では問題なかったのに、「今回の昇進では体調を崩してしまった」、「今回の引越がきっかけで参ってしまった」という事もあり得ます。
適応障害のストレス因って?
体調や時期に応じてストレスの感じ方は違う
適応障害でいうストレス因とは、日常生活の中にある会社の昇進や異動、業務の変化、引越などの、比較的日常的なストレス要因であります。
しかし、そのようなストレス要因も、時には頑張ろうと思って乗り越えられたりする一方で、不安や嫌だなといった落ち込みが継続してしまい上手く適応できない時もあるかと思います。
このようなストレス要因は、その時の体調や周囲の環境によって感じ方が異なるものです。特に疲れや人間関係での変化というのは、時としてストレスに対する脆弱性を生み出してしまいます。
適応障害の特徴とは?
症状の悪化のきっかけやストレス因の特定が重要です
適応障害は、心理社会的ストレス因の存在が大切です。
その心理社会的ストレス因が、壊滅的なエピソードである必要は決してなく、昇進や業務の変化等、これまでの生活の中での変化を主体としたエピソードで構いません。
症状の変化がストレス因に関係していることも大切です
つまり症状の出現・悪化などの形態が、そのストレス因にさらされることによって変化を遂げるなども特徴です。
その結果、計画が遂行できず、社会・日常生活に支障を来してしまうという点は適応障害の診断にも重要です。
適応障害の注意点とは?
日常生活の中で現れやすいサイン
- 不安などいてもたってもいられない感情が職場で出てしまう
- 昇進に伴い、会社での抑うつ気分が強い
- ある上司の前だとドキドキしたり吐き気が出てしまう場面がある
症状について
精神面の症状
- 不安感
- 抑うつ・うつ状態
- 無気力
- 緊張
- 怒り
- 苦悩
- 攻撃的になる
- イライラ
身体面の症状
- 眠れない
- 吐き気がある
- 震える
- 頭痛
- 涙がふとした瞬間に出てしまう
上記のような症状が
長引くと…
-
1 . 会社などの場面で、抑うつなどの不調が出てしまう
昇進や業務量の変化や業務量の内容の変化がきっかけで、不安や抑うつ症状が強くなってしまい。会社での仕事が計画的にこなせなくなってしまったり、会社に通えなくなってしまう -
2 . ストレスに弱いと感じて自分を責めすぎてしまう事も
生活や会社での業務に支障が出るほど心理面・体調面の症状が出てしまうので、「自分には向いていないんじゃないか?」「そのような器ではないのではないか?」等自分の自己評価として結び付けがちになってしまいます。しかし、多くの場合はストレス要因の背景にある疲労や人間関係などの修飾要因が大きいという事には注意が必要です。 -
3 . 人間関係が不安定になって自分を取り囲む環境がぎすぎすしてしまう事も
不安や抑うつ感情だけではなく、イライラや怒りや苦悩など感情的になってしまったり感情が強く出てしまうために適切な対応ができないことも。その結果、人間関係を大きく損なってしまう事もあるのです。
適応障害について
適応障害とは比較的日常的なストレスがきっかけで起きてしまいます
適応障害はストレスやストレス性の生活上の出来事がきっかけで起きてしまいます。
ストレス性な予定が控えていたり、そのようなストレスに対応しようとすると、通常は”嫌だなぁ”・”やりたくないなぁ”・”しんどいなぁ”といった気持ちを持つことはとても多い事かもしれません。
そのようなネガティブな気持ちを抱えながらも、”それでもやらなくては”・”何とかしないとなぁ”といったように少しづつ順応するための切り替えや取り組みへと向かっていることもあるのではないでしょうか?
しかし、適応障害にかかってしまうと、このようなストレス性の生活上の出来事を、上手く順応して乗り越えていくだけの、心身のバランスが保てなくなってしまい、乗り越えるだけの順応ができなくなってしまうのです。
具体的には、イベントが近づくと抑うつや不安が急に強くなってしまい、計画的に生活や活動が行えなくなってしまうのです。
ストレス性のイベントがない時には、比較的安定をしていることも多く、うつ病やパニック障害・不安症の診断を満たさないことが適応障害では非常に重要なのです。
【ICD-10の診断基準】適応障害
国際的な疾患分類基準であるICD-10の診断基準にあるF43.2適応障害の項を、簡単に要約しました
【診断基準A】
症状発症前の1か月以内で、心理社会的ストレス因を体験していたと確認される。
【診断基準B】
適応障害の症状はうつ病や不安症・パニック症・双極性障害などのその他の気分障害の症状を部分的に満たすものの、うつ病や双極性障害・パニック症・不安症などの診断基準を満たすほどではない。つまり、気分障害・感情障害などで説明できないが、症状の一部を提起していると考えられる。
【診断基準C】
ストレス因の停止、または停止の結果の後6か月以上、症状が持続しないこと。しかし、6か月以上経過してからのみ診断できない訳ではなく、この期間は予測的に診断可能である。※ただし以下に述べる、2年以下の継続を示唆するF43.21の適応障害の病像を除く
F43.2の第5桁の数字について
診断基準Bにもあるように、部分的な気分障害様症状に応じて、F43.2から更に第5桁の数字を用いてその状態の特徴を表すことがあります。
F43.20 短期抑うつ反応
1か月を超えない、一過性の軽度抑うつ状態を伴った適応障害
F43.21 遷延性抑うつ反応
ストレスの強い状況に長期にわたってさらされた反応として出現する軽度抑うつ状態であり、持続期間は2年を超えない。【診断基準C】にあるようにF43.21は持続期間の特例とされている
F43.22 混合性不安抑うつ反応
不安症状と抑うつ症状のいずれかが優勢であるが、混合性不安抑うつ障害(F41.2:他の不安障害)や他の混合性不安障害(F41.3:他の不安障害)に該当するほど重度ではない
F43.23 主として他の情緒の傷害を伴うもの
主症状は、通常不安・抑うつ・心配・緊張・怒りなどといった様々なタイプの情動から成る。不安と抑うつの症状は、混合性不安抑うつ障害(F41.2)や、他の混合性不安障害(F41.3)の基準んを満たすこともありうるが、他の更に特定したうつ病性障害や不安障害と診断されるほどに優勢ではない。夜尿や指しゃぶりなどといった対抗した行動を示す小児の反応にも、このカテゴリーが用いられるべきである。
F43.24 主として行為の傷害を伴うもの
主たる障害は、例えば攻撃的行動または反社会的行動に至る青年期の悲哀反応のような行為を含む
F43.25 情緒及び行為の混合性の傷害を伴うもの
情動面の症状と高おい障害の両者が優勢な病像である
F43.28 他の特定の症状が優勢なもの
ICD-10精神および行動の障害「DCR研究用診断基準」参照
【DSM-5の診断基準】適応障害
DSM-5という米国の精神診療圏における臨床での診断基準もまとめさせていただきました。
【診断基準A】
確認できるストレス因に対応して、そのストレス因の始まりから3か月以内に、心理・身体的症状が出現している
【診断基準B】
このような症状や行動により(1)あるいは(2)の支障がある
(1)文化的背景や周辺的な環境や影響面を考慮しても、ストレス因に不釣り合いな程度の強い苦痛がある
(2)職業や生活といった、社会・職業的等の支障がある
【診断基準C】
その他の精神疾患の基準は満たしておらず、また精神疾患の症状の悪化などでは説明できない
【診断基準D】
通常の死別反応とは異なる
【診断基準E】
ストレス因が終結した時、その症状が更に6か月以上は継続しない
ICD-10 とDSM-5の診断基準との違いについて
ICD-10ではストレス因の始まりから1か月以内に適応障害の症状が出現しているとされているが、DSM-5では3か月以内としている。
この違いについては明確な理由がないとされており、症状の遷延に関してはストレス因の終結後6か月内である事を明示している点は、ICD-10もDSM-5も共通しています。
適応障害の疫学
適応障害は比較的女性に多いと言われており、男性の2倍女性に多いとも報告されています。また海外では有病率は5%前後であるとも報告されており、決して珍しい病気ではないと言えると思います。
適応障害のストレス因子とは
適応障害のストレス因子には、学校や転居、新たな環境での生活や就業、更には離婚や親との関係の変化などがあります。また入院などの状況下でも起きると考えられています。
いずれのストレス因子も年代だけではなく、周辺の環境や人間関係、更には文化的な特徴や価値観、更には疲労といった身体面が大きく関わってストレスが大きく影響していくと考えられています。
また、より性格面や内面に関しては、幼少期の家族関係や養育者との関係も大きいとされています。
年度替わりでの配置転換や転職、自分の立場は変わらずとも周囲の人間関係の変化がきっかけで不調に陥る、5月病なども適応障害の一種であると考えられています。
適応障害の経過について
適応障害は、適切な治療と共に軽快する可能性が高いとされています。ただし、一部の人には適応障害の経過の後、気分障害などを呈してしまう人もいます。また、非定型うつ病との関連も最近は注目をされています。
治療について
適応障害の治療について
適応障害は明確なストレス因子をきっかけとして発症しているために、
ストレス因に対する適応や、適応障害の症状への治療などの目的として、精神療法や薬物療法などが組み合わされます
治療法1 : 薬物療法
適応障害での薬物療法は、抑うつや不安の症状の程度に応じて、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬・SSRIやベンゾジアゼピン系薬剤が選択されます。 しかし、適応障害の特徴上、長期投与ではなくまた特定の症状に焦点を置いて治療を計画することも非常に多いです。 また、ストレス因の周囲環境に応じて症状が軽快・憎悪することも多い為、微調整も比較的多くなります。 そのため減薬期間も含め、自己判断ではなく医師との相談は大変重要なのです。
治療法2 : 精神療法
ストレス因をきっかけとした適応障害では精神療法も有効です。 ストレス因子に対する意味を、いくつかの面から評価しなおしてみたりするなど、体調不良としてのストレス因だけではない特徴に注目してみることも大切です。 ストレスを取り除くことにも検討をするだけではなく、解決が困難なストレス因子に対しては適応や緩和を助けていける方法はないかという視点も大きな効果があります。 そして注意すべきは、あくまでも患者個々の特性に応じての場面上ではありますが、本人が適応障害の疾患や症状をストレスのせいにして正当化しすぎてしまう事により今後将来あらゆるストレス因に対する順応・適応の機会が損なわれてしまう可能性もあるのです。そうなってしまうと適応障害の症状がより身近で強固なものになってしまったり、自己評価の低下が強固になってしまう等などの影響もあります。 そのような点では、時と場合により適応障害の場合は「うつ病」とは違って、成熟を促すような働きかけが必要な場合が時にあるのです。
対応の仕方
適応障害でつらい人へ、どう対応したらよいのでしょうか?
適応障害で困っている人には、状態に応じた柔軟な対応が大切です。 もちろん厳しく接する必要はありませんが、「適応障害症状の危機的状況」の程度に応じた環境への配慮、本人への面会や聞き取りの回数を症状の程度に応じて増減させるという取り組みは大切です。 そのような柔軟な対応が、本人がストレス因の持つ意味や自己との関わりに対して探求し適応を促していく機会になったり、本人だけではなく周囲もストレスとのバランスのとり方を上手に探ることが可能になります。 もちろん、危機的状況の時には休息や安心できる環境を得ることができるように、しっかりと介入して整えることも大事です。 大切な事は、適応障害症状に応じて過度に介入しすぎない時も必要ですし、患者の支えとなるような見守りや働きかけを、本人の症状見て柔軟に対応することが適応障害の時にはとても大切なのです。