名古屋駅直結の心療内科,精神科,メンタルクリニックが【PTSD/適応障害/急性ストレス障害】ICD-10の重度ストレス反応および適応障害の診断基準について解説

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【PTSD/適応障害/急性ストレス障害】ICD-10の重度ストレス反応および適応障害の診断基準

2024.05.102024.06.11

適応障害、PTSD

急性ストレス障害、PTSDや適応障害について

1995年の阪神・淡路大震災では、心的外傷後ストレス障害(以下、PTSD)がマスコミで大きく取り上げられました。

自然災害や新型コロナウィルスなどの現在の日本の状況を考えると、おそらくは今もPTSDの患者さんは多いと考えられます。この記事では、ICD-10をベースにして重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]および適応障害の診断基準を説明します。

F43重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]および適応障害の概要

ストレスがきっかけとなる

重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]および適応障害の一番の特徴は、「ストレスが疾患発症の決定的な原因となる」ことです。

ストレス以外の要因も関わる時には、別の精神疾患も

例えば、うつ病性障害の発症にもストレスは関わりますが、本人の性格や対処スキルの脆弱性などの他の要因も多く関わってきます。そのため、他の精神疾患ではストレスが主な発症要因とは言えません。

F43重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]および適応障害の各診断基準

重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]および適応障害の主なものには、急性ストレス反応とPTSD、適応障害があります。

F43.0急性ストレス反応の診断基準

◆極度な精神的または身体的ストレスに暴露されていること

◆著しく強いストレスと疾患の発症との間に時間的関連がある(ストレスを受けてから一時間以内に症状が見られる)

◆ストレスから離れた場合は8時間以内に症状が沈静化する。 ストレスから離れられない場合でも、3日経つ頃には症状が軽くなっている

◆症状には以下の2つの特徴が見られる

(a)動悸や心拍数の上昇・発汗・震え・口渇などの自律神経症状が現れる。その他に、胸部や腹部・めまいなどの精神状態などに関する症状が現れる。

(b)困惑(頭が真っ白な状態。失見当識(今がいつか・ここがどこか分からない)も伴う)が見られる。その後、抑うつや不安、激怒、絶望、過活動、引きこもりなど色々なタイプの症状が変動しながら現れる

急性ストレス反応を一言で表すと、普通の人が著しく強いストレスに遭遇した結果、一時的に精神的ショックを受けた状態と言えます。

なお、既にうつ病などを抱えている場合は、そちらが主疾患となります。

急性ストレス反応の、原因ストレスについて

原因となるストレスは、自然災害や事故のように命の安全に対する脅威や、家族の死別が重なることや自宅の火災のように社会的立場や人間関係が一変してしまうほどの脅威などのように、人生を左右するほど破局的なものです。

診断基準には含まれませんが、以下の症状もよく見られます。

◆初期◆
意識野の狭窄(もうろうとなること)や注意の狭小化、刺激(言われたことなど)を理解できない

◆その後◆
引きこもり(解離性昏迷(ショックのあまり、意識はあるのに受け答えなど反応できなくなること)レベルのこともある)、激越、過活動、不安による自律神経症状(発汗、紅潮、頻脈など)

◆出来事の部分的あるいは完全な健忘(思い出せないこと)◆

F43.1心的外傷後ストレス障害の診断基準

心的外傷後ストレス障害の診断基準について

◆並外れた著しく強いストレスで、ほとんどの人にとって広範な苦痛をもたらすと考えられるようなものであること

※症状が心的外傷後ストレス障害に典型的なものである必要がある

◆回想や白昼夢、夢などで、自分の意思とは関係なくストレスとなる出来事が何度も繰り返し思い出される(いわゆるフラッシュバック)

◆ストレス因との類似及び関係する状況からの回避行動・回避症状

※無感覚、情動的分離や感情の鈍麻(いずれも感情が麻痺すること)、他者から孤立、周囲への鈍感さ、アンヘドニア(ポジティブ感情や意欲の低下)、トラウマとなる場所や刺激の回避

◆想起不能あるいは過覚醒・心理的感受性の上昇

※強い驚愕反応(小さい音にも過敏に反応してしまう)と警戒、焦燥感または怒りの爆発、不眠・集中困難など

のちに不安や抑うつにも繋がりやすい

なお、ストレスから数十年を経て「自分は無力で、何もできない」、「どこに行っても危険で、安全なところはない」などのパーソナリティの変化、性格化という形で症状が見られることもあります。この場合は、F62.0破局的体験後の持続的パーソナリティ変化との関連も検討されます。

メディアでも良く取り上げられるPTSD

マスコミでPTSDと言われている疾患の正式名称が、心的外傷後ストレス障害です。

急性ストレス反応を経てからPTSDとなることもありますが、急性ストレス反応なしでPTSDを発症することもあります。急性ストレス反応と同様、PTSDの発症原因も人生を左右するほど破局的なストレスです。

F43.2適応障害の診断基準

適応障害とは、ある状況・環境が自分には耐えがたいストレスとなるため、心身や行動に何らかの症状が出て、日常生活に支障を来している状態です。適応障害の例に5月病がよく挙げられるように、仕事や学校、家庭など日常生活の中のストレスが原因となることが多いです。

とはいえ、適応障害の診断を行ううえで一番重要なのはストレスとなる出来事です。

適応障害では1カ月以内の心理社会的ストレス因が重要

その出来事がなければ適応障害を発症しなかったという証拠が診断では必要となります。特に適応障害では症状発症前の1か月以内に、心理社会的ストレス因の体験と確認が大切にはなります。

もしストレスがあまり強くない場合や、出来事から3ヶ月以上経っていて時間的につながりがない場合は、症状に応じて他の診断を下されるべきでもあります。

診断にも重要な視点とは

適応障害は、以下の3項目の関連から診断されます。

(a)症状の内容や重症度
(b)これまでの病歴と人格
(c)ストレスとなる出来事

適応障害の症状は多岐に渡ります。抑うつや不安、心配、自分では対処できないという不全感といった気分の問題がよく見られますが、うつ病や不安障害などの診断基準を満たすほど重症ではありません。

また、小児の場合は夜尿症(おねしょ)や指しゃぶりなどの退行的な行動が、青年期の場合は攻撃的行動や非社会的行動が見られることもあります。

また、急性ストレス反応やPTSDと比べると適応障害では人格や対処能力などの個人的素質が発症と関わるため、人格も確認されます。

急性ストレス反応とPTSD、適応障害以外について

ほか、「F43.8他の重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]」や「F43.9重度ストレス反応[重度ストレスへの反応]、特定不能のもの」があります。

さいごに

今回は、ICD-10のF43に関して、急性ストレス反応、そしてPTSD、適応障害について記載をしました。診断する上で原因となるストレス因がハッキリしていることや症状との関連が重要である疾患であります。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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