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大人のためのメンタルクリニック
診療案内
Hidamari Kokoro Clinic
強迫性障害・強迫症
強迫性障害
強迫症
公開日: 2022.06.04 更新日:2024.10.01
[ Index ]
「キョウハク」のイメージとは
「キョウハク」と聞くとどのようなイメージを持っているでしょうか?
相手を脅し威嚇してしまう行為である「脅迫:キョウハク」をイメージしてしまうかもしれませんが、
強迫性障害における「強迫:キョウハク」とは、自分の意思に反して何度も行動を繰り返してしまう、繰り返さざるを得ない状況を指しています。
強迫性障害・強迫症とは
「強迫性障害」とは、まさに自分自身が何かにとらわれたかのように、行動を止められなくなるという状況を指しているのです。
そして、強迫性障害や強迫症では、その繰り返しの行動のために、日常生活に支障が出たり、他者との関係を大きく阻害をしてしまうことを指しています。
強迫性障害には強迫観念と強迫行為が生じてしまう
強迫観念とは
強迫観念とは、反復的で自分で制御できない、思考の中に進行してくる精神的な事象です。
具体的な例としては
- 手が汚れている
- 火やガスの元栓を閉め忘れたのではないか
- 鍵を閉め忘れたのではないか
- 何か体に悪い毒素を取り入れてしまっているのではないか
- 何か自分が忘れてしまい、ミスに繋がってしまうのではないか
- 誰かを傷つけてしまったのではないか
等、様々です
強迫行為とは
強迫行為とは、上記のような強迫観念や不安を少しでも減らしたり、拭い去るために、行う繰り返しの行為の事を指します。
- (手が汚れていると心配になり)何度もくり返し手を洗ってしまう
- (火の元やガスの元栓を閉め忘れたかもしれないと心配で)何度も火が消されているかガスの元栓を繰り返してしまう
- (鍵を閉め忘れたのではないかと心配で)何度も鍵をかけたかどうか確認してしまう
- (何か悪い毒素を取り入れてしまっているのではないかと心配で)何度も拭いたり消毒を繰り返したりしてしまう
- (何か忘れ物や、重大なミスに繋がってしまうかもしれないと心配で)メモを何度も繰り返したり、書面の確認・見直しを繰り返したりしてしまう
- (誰かを傷つけてしまったのではないかと心配で)歩いてきた道・通ってきた場所を何度も往復してしまう
強迫性障害・強迫症の患者様は、強迫行為あるいは強迫行動のどちらか、あるいは両方の症状を持っています。
強迫性障害の頻度とは
強迫性障害の頻度は、生涯有病率は2~3%とも報告があり、多くの方が10代~20代の若年に多いと考えられています。
そして、精神科外来ではおおよそ10%の方が、その病気を抱えているともされているのです。
どのように発症するのか
強迫性障害や強迫症の発症は半数の方は突然の発症です。ストレスに関連して強迫症を発症する方は半分程度と考えられています。
強迫性障害は、どうして繰り返してしまうのでしょうか?
強迫性障害の繰り返しの行動は、手洗い・確認行為などが中心です。
しかし、何度も繰り返すことは「不必要である」「バカバカしいことだ」と本人ですら感じてしまっている、つまりは「自分では望んでいないにも関わらず、おこなってしまう行動である」という点が特徴なのです。
なぜ行動を止められないのでしょうか?
しかし、なぜ自分では不適切と分かっていても強迫行動を止めることができないのでしょうか?
その理由の一つとして、ひとたび手洗いや確認行為を≪止める≫ことにより、”何か悪いことが起きるかもしれない”・”心配される事が起きるかもしれない(汚れている・火事になってしまうかもしれない・鍵が開いているかもしれない、等)”といった不安が急激に高まり、その不安を払しょくするために、繰り返しの行動が止められないのです。
強迫性障害では、どのような経緯で受診することが多いですか?
強迫行為そのものは、本人ですら「何度も繰り返すことは無駄である」「繰り返すことはバカバカしい」と自覚していることが多いために、なかなか周囲の人に相談できずにいる場合もあります。
しかし、確認行為が繰り返される、手洗い行為が繰り返されることで、朝早く起きても会社に遅刻してしまったり、手洗い行為のために皮膚がひどく荒れてしまったり、社会的な活動や習慣に支障が生じてしまうことで、心療内科・精神科・メンタルクリニックなどの医療機関に受診をされることもあります。
もちろん、最近はWEBやネットの体験談も数多く掲載されている為、自分の症状と一致するエピソードを見つけ、”もしかしたら・・・強迫性障害や強迫症かもしれない”と感じて受診される方も非常に増えてきました。
【注意】自覚症状のない強迫症・強迫性障害もある
自分では、”不必要だ”・”過剰だ”と感じていても繰り返してしまう行動を、強迫性障害の主な特徴として解説をしてまいりました。
しかし、注意すべき点は、その繰り返しの確認行為を”不適切である”と感じるよりも、むしろ”適切である”と感じて、繰り返しの行動に駆り立てられている方も多くはありませんがいらっしゃいます。
その場合は、手洗い行動や錠前の確認、火元の確認よりも、幸運や不幸などの数字への思考、数字を繰り返し数えたり・対称性に関する考え、タブーとされる思考に対する行動が比較的多いように感じます。
”多い”・”少ない”というのはあくまでも印象という点ではありますが、自覚症状のない強迫症や強迫性障害が認められるという点には注意が必要です。
強迫性障害の症状について
強迫観念について
- 汚れているかもしれない
- 虫や菌がついてしまうかもしれない
- 火を消し忘れてしまったかもしれない
- 鍵を締め忘れてしまったかもしれない
- 誰かにケガを負わせてしまったかもしれない
- 正確(左右の対称性などの正確さ)に配置・整頓できていないかもしれない
強迫行為について
- 手を繰り返し洗ってしまう
- 消毒や洗浄を何度も繰り返してしまう
- 家から出られず、外出できなくなってしまう
- 外出しても確認するために家に何度も戻ってしまう
- 他者にケガをさせたかもしれないと気になり、状況の確認を繰り返してしまう
- 正確さや対称性が気になり、何度も微調整をして時間をかけてしまう
- 幸運を呼ぶ数字や不幸に関連した数字が気になり、数字を何度も数えてしまう
症状が出てしまった結果・・・
上記のような症状が
長引くと…
-
1 . ひどい手荒れを生じてしまっても、手洗いを止められない
何度も繰り替えし手を洗うことにより、手が荒れてしまうなどがあります。そのような手の状態であっても手洗いの回数を控えることができないために、出血などの症状を呈してしまう -
2 . 確認行為のために、出社が遅れてしまったり、会社に遅刻してしまう
鍵を締めたかどうかや火を消したかどうかの確認に時間がかかってしまい、相当朝早く起きたりしないといけなくなったり、会社に遅刻してしまうことも -
3 . 外出先で道や数を何度も確認してしまうために非常に疲れる
外出に行くたびに数字や元来た道の確認行為が止まらなくなり、外出するのが苦痛に感じて家から出られなくなってしまう
強迫性障害・強迫症の診断基準について
強迫性障害・強迫症のDSM-5における診断基準について解説をいたします。
基本的には、以下のA~Dの項目を満たす必要がありますが、状況など個人差がございますのでご注意くださいませ。
A:強迫観念または強迫行為、あるいはその両方が存在している
強迫行為とは
(1)繰り返される持続的な思考や衝動またはイメージが不適切に継続されており、強い不安や苦痛の原因となっている
(2)思考や衝動やイメージを無視したり、抑え込もうとしたり、何か他の思考や行動によって中和しようとしてしまう。
強迫行為とは
(1)(手を洗う・確認をするなどの)繰り返しの行動、または(数えるなどの)繰り返しの行為を厳密に適用しないといけないと駆り立てられている、あるいはそのように感じる
(2)心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としています。(またその行為そのものは一般的に不安や苦痛を取り除く行為としては過剰、あるいは繋がりを持っていません。)
B:強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上)、あるいは社会的に支障や苦痛を引き起こしている
十分に時間の余裕を持っても、朝出社しようと家を出ても、鍵をかけ忘れていないか不安で何度も確認を行ってしまう、少し歩きだしても気になって自宅に戻らざるを得ないなどを繰り返して、結局遅刻や早朝に起きざるを得ないなども当てはまります。
つまり確認行為や、止められない繰り返し行為や、その行為を行うように駆り立てるように感じるために、社会生活で苦痛や支障を生じてしまうことを指しているのです。
C:その行為や支障は、薬物の乱用など、そのほかの副作用による生理的作用ではない
薬物依存など、離脱症状や依存症状に伴う繰り返し行動や焦燥などではないという点が重要です。
D:その他の精神疾患ではない
強迫観念・恐怖と考えられる症状が、他の精神疾患の場合を指しています。
強迫性障害・強迫症の治療について
薬物療法
強迫性障害・強迫症の薬物治療としては、抗うつ薬などで投与される、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効とされています。
うつ病の治療と同様の用量で治療を行うことができ、強迫性障害における治療への反応性も50割以上も上昇させたと報告があります。
薬物治療の効果について
通常は治療を開始して、4~6週間で症状への変化が見られ、8~16週間で薬物療法の効果が最大となります。しかし、薬をすぐに減量してしまうことによる再発は無視できず、お薬治療だけではなく、次に記載する通院による精神療法などを併用することは重要です
精神療法
一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上 を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法を指しています。
特に強迫性障害・強迫症では、薬物治療を含めた治療計画はもとより、その症状の経過に応じた働きかけは大変重要です。
支持的精神療法
精神療法は手法等が一般化されるものではなく、お一人お一人の症状や状態に応じて大変流動的ではありますが、特に、社会生活に支障が出てしまう強迫性障害や強迫症では、定期的な通院や共感的な医師とのやり取りや、時には勇気づけるような支持的精神療法にも効果があるとされています。
しかし、あくまでも診察の流れで体調や状況に応じて選択されるべきで、どんな時でも支持的精神療法であるべきだという訳ではありません。
まずは強迫性障害の特徴である強迫観念や強迫行為をしっかりと理解しつつ、通院治療を継続することが大切なのです。
ご家族・周りの方の接し方とは
強迫性障害や強迫症は、過剰に繰り返してしまう強迫行為や、自分には理解できない強迫観念として、しばしば人間関係ですれ違いやぎくしゃくのきっかけとなりやすいことも特徴です。
そして、本人の不安を取り除くために、家族や周りの親しい人たちが、”代わりに確認を代行したり”などの面もあるかもしれません。
その”代行でする確認行為”が、本人の不安感情や恐怖感情を逆に強固なものにしてしまうことになりかねないときもあります。
そして、不安に対する考えや取り組みを変えようとすることは、逆に本人は否定されたと感じてしまうこともあるかもしれません。本人が通院治療を継続しやすいように身近な人の立場として支えてあげることも大切なのです。